第13話 歓迎の宴

ダイニングルームに向かうと長いテーブルの上には所狭しと豪華な料理が並んでいた。

どうやら宴のために奮発したらしい。

まあ、昨日は私室で食べたしね。


この世界では1日2食がメインで、昼食をとることは珍しいらしいのだとか。

今日はいち早く俺との顔合わせを優先し昼食にしたそうだ。


もっともグースワースにいる皆は魔改造の結果数年何も摂取しなくても、問題はないそうだけど。


「それでは我らが主、光喜様、ぜひご金言を賜りたく存じます」


幾分気持ちを持ち直したであろうネルが音頭を取り、12人集まったテーブルでは皆がそれぞれ飲み物を掲げていた。

かつての俺の方針らしく「食べるなら全員でだ。異論は認めん」とか言って、仕事や用事があるときでも、食事の時には転移の術式を強制していたらしい。


うん、もう何も言うまい。


「ああ。昨日戻ったばかりだが、200年前から待っていてくれた皆に、まずは感謝を。そして今の俺はこの状況を徐々に受けとめ始めている。まだノアーナとは名乗れないが、光喜だ。よろしく頼む。では乾杯!」


もっとたくさん語るべきなのだろうが、なんとなくこれでいいような気がした。

懐かしく心が落ち着き、安心感があふれ出した。


ミナト達の作ってくれた数々の料理や飲み物は、人間をしていた37年間には経験したほどがないほど美味で、俺は目から汗をかきながら皆との楽しい時間を過ごした。


※※※※※


宴も中盤に差し掛かったころ。


対面の端の席で大きな肉にかぶりついていた二人のドラゴンの双子の美姫が、恐る恐るといった感じで俺に話しかけてきた。


「えっと…ノアーナさま?…光喜様?…おかえり…なさい」


そう言い、駆け寄ってきた。


ロロンとコロンは熱量のこもった瞳で見つめ、すっと俺の両腕に立派すぎる胸部を押し付けるように抱き着いてきた。


えっ?スッゴイ良い匂いがするんですけど!?

つか、めちゃくちゃ柔らかい?!

アワアワする俺にかまわず、さらにその状態で二人は俺の膝に乗ってきた。


あああっ、両膝が幸せという名の柔らかさであふれているううう。


彼女たちは非常に美しい。


肩口で切りそろえた、さらりと煌めく美しい銀髪。

やや小柄だが引き締まった体躯に自己主張の激しい胸部。

愛くるしいが神秘的な、はかなげな印象を受ける可愛らしく小さな顔。

おそろいの水色のブラウスに、膝上までの濃紺のスカートを履いて、胸元には可愛らしいネックレスが煌めいている。

見た目は15歳くらいの少女に見えるため、とてもドラゴンだとは思えないほどだ。

ほぼ同じ顔が両側から、じいーっと音が聞こえるほど見つめてきている。


ネルとはタイプが異なるが、絶世の美少女だ。

ロロンは朱の混じった銀眼、コロンは青を基調とした金色の瞳をしている。


「光喜っさま!食べたらお部屋に行っても良い?200年ぶりに甘えたいの♡」

「またぎゅーってして♡頭をなでなでしてもらったり、ちゅっちゅしてもらいたいの♡」

「…また…〇×〇…して♡」


…なんかとんでもないことを言い出したぞ?!


何やってるんですかね!!以前の俺は!!!

刹那、ふっと、二人は少し離れたところに仲良く並んで立っていた。


んんんん!?


背筋に冷や汗が噴き出す!!


「コホン…ロロン、コロン。光喜様は帰還されて間もないのです。まだ混乱されているのですから、しばらくは『わたくしが付きっきりで』対応します。ですので貴方たちは森の魔物でも狩っていなさいな?」

(わたくしもまだ甘えていませんのに!そんなことさせません!!!それに光喜様?わたくしというものが居ながら、何をデレデレされておられるのでしょうか?!)


絶対零度のオーラをまとったネルが、ロロンとコロンを見据えながら同時に俺をにらむといった離れ技を披露した。


…よかった…失禁しなくて…


因みにロロン・コロンのふたりは、ドラゴンの里で最強になり、当時頂点だった俺に戦いを挑んできたらしい。


まあ結果はお察し、今ではかわいいペット枠に収まっているようだ。


…ペットとはいかがわしいことしないと思うんですけどね!?

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