第8話 胎動

(新星歴????年??月??日)


大理石のような黒光りする、明らかに人造物である鉱石を敷き詰められた、100m四方はありそうな広大な広間に、体の一部に紋様なモノが刻み込まれている異形な怪物たちが数多く佇んでいた。


四方の壁には幾何学的な文字らしきものや、抽象的な絵がびっしりと刻まれている。


神話などの伝承なのだろうか。


床や壁面が発光しているようだ。

光源のようなものが見当たらないが空間はほのかな明るさを保っていた。


入り口と思しき扉の横には、東洋の龍を連想させるような彫り物が5mはありそうな巨大な剣に巻き付いている。


入り口の反対側の奥の壁には、何やら人型のものが数体で何かを呼び出している様が、彫り込まれている。

中央には、周囲をきめ細かい精巧な彫り物で覆われた、1mほどの高さの段の上に祭壇のような場所があった。


そんな空間に、怪物たちはざっと見るに数百体はいるであろうか?


大きな顎の3mはありそうなワニのような怪物や、いわゆる『ドラゴン』みたいな圧倒的な怪物。

10mはありそうなストーンゴーレムのような怪物。

首がいくつもあるキメラのような怪物。

ゴブリンやコボルトといった雑魚のような怪物、等々。

怪物たちは息をひそめ、まるで祈るような格好で中央にある祭壇のような場所を見つめていた。


中央の祭壇のような場所の周りには司祭のような装いの、長い耳が特徴のおそらくエルフ種族の一団が、何やら言葉を紡いでいる。


祈りなのか呪いなのか、紡ぐ言葉が佳境に入ったのか、数名の司祭たちがバタバタと倒れ始めた。

と同時に中央の祭壇らしき台座に、まばゆい黒光りする光が顕現した。


「!!!っ!おさじpンwぐcmxp、@z@z「・dlwjv」


刹那、広大な広間は意味不明な絶叫に包まれた…


そして何者かが「ごとっ、がらっ、ごとっ」と何かを落とす音を立てながらのそりと這いずりだすと、ピタリと絶叫は消え、代わりに歌うような旋律が流れ始めた。

同時に、数多いた怪物たちはその場で倒れ始めた。


「あああ…我らの盟主がついに…ついに……」


倒れていたエルフの司祭の一人が、最後の力を振り絞るように異様にギラギラした眼光を覗かせながら、手に持った『過剰に装飾の施された杖』を掲げた。


 這いずり出てきたモノは、体に黒い鉱石な様なものを生やしていたが、人のような形をしていた。


 今広大な広間には、動くものは『ソレ』と杖を掲げた1名のエルフのみである。


『ソレ』はおもむろに倒れている先ほどまで怪物だったものをものすごい速さで咀嚼し始め、そして徐々にその姿は大きくなり存在値を増していった。


すべての怪物を咀嚼し終り、存在値をさらに大きくした『ソレ』は『見えないように見えているように見える』もやの様な物に包まれていき、数刻後にはまるで何もなかったかのように広大な空間は静寂に包まれていた。


 杖を片手に悍ましい憎しみをその顔に浮かべたエルフを残したまま。

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