~TUTORIAL~(『夢時代』より)

天川裕司

~TUTORIAL~(『夢時代』より)

~TUTORIAL~

 「織り成す言葉」と題してこんなものを書いた。

 俺は訳が解らないで居る。訳が解らない儘で生きて居る。

 しかし「生きる」という事は〝選ばせて〟はくれぬものである。

 別に世の中と接しないでも、俺は「俺」が居れば物を書けるのだ。

 …それが「女」とは悲しいものだ。最近になって、俺には女と付き合う事は無理ではないか、と本気で思い始めて居るのだ。「神様ぁ…」から始まり。

 太宰の文章は確かに上手だ。難しいものだろうが、簡単なものだろうが、その内の巧みには変わり無い。俺の文章は俺の文章として、誰にも書く事の出来ないものとして在ればよい、と以前に思って居たが、果して、難しい言葉を延々書き連ねて行く事は自分にとって至難と成るのか否かについて分らない。困ったものだ。惨(まい)ったものだ。太宰が、『もの思う葦』の内の「井伏鱒二」について描いて居た内容に於いて、その井伏の文豪の質を筆から起し、呟いて居るのを見た時、中々俺は自分の目指すべき果てが見えず、思案に明け暮れて居た。

 或る特異な瞬間を垣間見せる文章が俺の知る「黄金風景」を見せて呉れればそれでよい。後は、無情で温かい〝結末〟が唯、自分を包容してくれるだろうから。俺の、達ての願いである。君の文芸に一言。〝内容が変わり無ければそれで良し〟。これは君がもうずっと以前の旧い大学生の頃に呟いて居た言葉である。

 削がれて行く、ああ、削がれて行く…。

 女の苦労は、男知らず。

 何故、俺に苛立たしさを与えに来るのだ。苛立たなければ俺は、ずっと善人で居られるのに。

 この世で一番長い長編を書きたい。この世で一番短い短編を書きたい。その間の距離を内容に含めた中編を、コンスタントに、近々、書いて行きたい。

 又、「見えぬ線」と副題を採り、以下を書いた。

 この世の生物には〝見えぬ線〟という存在が課せられる。手を宙の内で左から右へ動かす、幾数に重なる様にして在る一線ずつを越えてその手は動かされて居るのであり、その手の主の命が尽きれば、それ迄難無く一線を越えて居たその手は唯一線を越える事が出来ないで、例えばその一線が、その主の生きた歴史を表す軸上の一線に成るのだ。私は何処か無知である。

 又、「子供」と副題を採り、以下を書いた。

 子供は或る次元を潜り抜けて、現実と好きな空間とを行き来出来るらしい。大人は良くその一連の事象を、空想の成せる業、と呼ぶ。又、その「好きな空間」が現実の内に在る事を誰も追究しないで居るようだ。

 又、「聖書」と副題を採り、以下を書いた。

 或る晩、何時もの様に物を書き、詩作に耽って居る時、下敷きにしたり肘を突いたりして、自分のその際の腰掛け台として使用して居るオレンジ色したクリアファイルのプラスチックの下に、ずっと以前に、きっと何等かの偶然で偶々高さを調節する為に詰められていた小さい新約聖書が、その鼠色の表紙と、その表紙に施された金色の文字を俺に見せていた。新しく土台の固さを調節して、心機一転、新風を刺激に変えて自分の良い糧を得させようと、俺は以前読んで〝良い糧を得た〟と信じ込まされた「中国古典名言集」という比較的新しい本が一寸手を伸ばした所に在るのを見付け、自身のストレッチも兼ねて頑張ってその名言集を取り寄せ、それ迄ずっと見えない土台として敷いていた新約聖書と交換した。しかし、今迄の私だけに分る習慣(くせ)がそうさせたのか、見える位置にその鼠色の聖書が置かれて在ると、従来の調子が出ず、良いと思うものが書けなかった。そうして又、新約聖書と名言集とを入れ替えて置いたのだ。クリスチャンである自分が良くその聖書の存在を見る事が出来るように、と。

 又、「芸術観念」と副題を採り、以下を書いた。

 教育に対する観念の無さが芸術を生むのであろうか?

 江戸川乱歩の『人間椅子』には一つ良い所がある。〝人を独りにする文章〟を呈しながら読者に推理という形を以て想像させ、その欲望の果てに独りの空間を具えている処である。文学作品とは、先ず人を独りにさせて、その後で人と神との絆を想わせなければ成らない。

 この様な言葉を以て戯れる、妖精達が成した夢を以下に記す。

 俺の元職場は介護施設であり、七割方の相性が合わない女と、五割方の相性が合わない男とで埋め尽くされて居た。しかし俺は、そこで住んで居る利用者は好きであって、共に働く職員達共、何とか目的へ向けた姿勢を一致させてパラダイスで働くように不要な悩みは削ぎ落として、楽しく死太く仕事が出来るように、と祈って居た。俺が働いて居た部署には甲本、河田、という二人の男と、時田、中山、増山、という三人の女が居て、あと氷川という上司が時折、仕事が順調に進んでいるかどうか確認しに、二階の部署から下りて来て偵察、確認して居た。俺達の部署は、何時(いつ)でも外へ出掛けて行ける一階に在った。しかし空気の様に、知らず内に独りの少年少女がその俺達の部署で働く職員の内に紛れ込んで居た様子であり、誰もその侵入には気付かずに〝一緒に働く同志〟として対応して居た様で、やや新人職員の体裁と内実とをその少年少女が醸して居た為か、皆、少し位の横着やミスには目を瞑(つむ)ろうと、優しく接して居た。俺は、少し時間が経った後で、その少年少女と自転車の小旅行へ出掛けて居た。〝少年少女〟と言う理由は、その子は俺とのその小旅行をして居る内で、少年と少女の何方(どちら)にも姿を変えた為である。出掛けた頃合いは大体夕方から夜であり、昼の白さは外に無かった。

 忙しいのか忙しくないのか一場面ずつしか状況を掴めないその一場面毎のタームの内で俺は、棒立ちで他の同志がする会話を良く聞いて居り、如何でも好いと直ぐに思えて仕舞える様な仕事上の計画をまるで皆俺抜きで話し進めて居た様で、俺は、新しく入って来たその少年少女の〝実習生の体裁〟にも少々虐められる前兆が見せる恐怖を覚えて居り、その様な環境を構えながらも、密かに若い力で老いた力を牽引する様な強かな活気を両者の熱気(オーラ)に見て居た。この若者は絶えず皆から或る程度の距離を隔てフロアを闊歩して居た様子で、窓から差し込む西日や人工の光という自然に注目させない程の吸収力を保っていた。そんな時に二階から又氷川が下りて来て、何時もの様に実践する事に花を持たせる様に他の者にこの新人の監督を任せず、自分が付き、どの程度仕事が出来るか、を確認して居た様だった。既に、その部署で目指すべき一つの目標が仕事の上で決まっていた様であり、氷川はその目標の為に皆から〝してくれ〟と言われた事をし終えて又還って来て居た様子が在って、その辺りの事情を独り静かに黙認して居た俺は、「あ、帰って来た。結構、早いな…」等と頭では思いながらその早く帰って来た為にこの仲間内での仕事をする為の緊張感が途切れなかった事をこの上司の手柄だとして収め、「流石…」とも呟き感心して居た。俺は以前からこの上司と波長が合う、として、この上司が好きだった為に、その部署で何か一つの仕事を小さな者がしてもその都度、その上司の氷川との比較に持ち込んで自ず氷川に軍配を上げ、小さな仕事でも見逃さずに、その小さなグループに居る者達を偏見の刃を向けた上で見下げて居た。この仕事上の目標の為にしなければ成らなかった一つの項目が「小旅行」であり、その旅行をする内で何か〝仕事の糧に成るもの〟を何処かで拾って来なくては成らなかったらしく、その糧とは大小問わず、又、有形無形を問わず、何でもよい、とされて居たらしく、酷く曖昧だったがそれ故に拾い易いものとも成るので、俺はその処で少々遣りたくは無かったが気を楽にして、その少年少女との小旅行に小さく地味な愉しみを期待する事にして居た。その氷川が還った後、次は如何いう訳か俺の番だったらしくて、行かなければ成らなく、そう思いながら覇気を蓄えて居た矢先に俺はそこでの常勤職を辞めて一年間のパート職に従事して居た頃の体裁と内実に成って居り、他の常勤として働くメンバーよりも少々格下げに遭い立場が弱く成って仕舞った自分を憐みながら、勝手に他のメンバーの一人一人を揺るがずに聳え立つ絶壁である様に見て居た。

 氷川が戻って来る前に俺達は確か申し送り事項が書かれたCPの前で申し送りを全員でして居り、その内で、増山がこれ迄に見た事も無い位の偉そうな態度を以て皆に申し送って居た。何を申し送って居たのかは、その声が自然に溶け込む様に無音で在った為、俺には分らなかったが、取り敢えず他の者達はその言葉一つを憎音で在っても大切にきちんと受け取って居た様だった。それは夜勤帯からの申し送りであったようで長く、又、何時(いつ)夜が明けて、何故夜勤者の増山がその日の夕方近く迄職場に残って居るのか知れなかったが、一晩の利用者の様子と、その日の行事への意欲を燃やす様な姿勢を同時に採って程好く間を取りながら喋って居た。上司である甲本、同僚には勿論、為口(ためぐち)で喋り、俺の方に直接向いて喋らなかったが、俺にとっては無性に〝腹立たしい女〟と成って居た。しかし皆はその増山の態度を当然の様に受容し、収めて居た。きっと俺が知らない間に、そこでの増山の在り方がその様に落ち着いたのだろう、と俺は思って居た。俺はこの職場に、随分離れてから戻って来て居た所為か、その増山に対しても、他の者に対しても、気遣うだけで、強く主張する事が出来なかった。それが終って、次の瞬間には少年少女の武者修行が始まって居た。俺は氷川と同様にその少年少女と自転車に二人乗りして、その子に予め課せられていたのであろう相応の実習課程に二人で就いた。〝まぁ、氷川君同様にして、直ぐに還って来れるだろう〟と高を括って早くも帰路に就く気で俺は居り、俺達は出て行った。

 しかし行く内に、〝予め決められた課程〟は姿を変え、その子は自分が乗せたその人のタイプにより行き先を変えて居たらしいのだ。その子は自分で俺にそう言ったが、少々疲れて居た俺はその子の真意を疑って居た。その子は、自分が乗せた相手が〝文系〟か〝理系〟かを見極めた上で行くべき課程を決める、と言って居た。俺は無論〝文系〟だった為に、〝文系〟の者が行くべきコースを採らされて行った訳である。その〝文系〟の行くべき道とは、緩く長い坂道から可なり勾配の急な坂道迄を通り、その繰り返しが散々に在り、「氷川は〝理系〟だったのか、確か俺には〝文系〟だと以前に言ってたくせに…」等と物草言いつつ、〝文系の道とは行って帰って来るのに、相当の時間と労力が掛かるもんなんだなぁ…〟等と立ち漕ぎ、座って漕ぎ、をしながら俺は遂に口に出して呟いて居て、確か氷川の往復に掛かった時間よりも一時間位オーバーした事を記憶して居る。

 「これは文系の人を乗せた時の道程(みちのり)ですから、色々な柵と場所とを通らねば成りません」、そう言ったその子の髪はセミロングに成り出してその子は少女に成っていった。俺が懸命に坂道を足を踏ん張って上り疲れ過ぎて居た為にその様に成ったのかも知れなかったが、その子は宙を見た儘無表情を続けて居た様子で、俺はその黒髪が自分の左手に触れ、風が相応に靡いて少女の感触と匂いとが身の内に運ばれて来るのを目の当たりにした為又気が遠く成るように少女の甘さに心酔させられて自己陶酔し、意識の内でその子と変わり番子に自転車を漕いで居る戯れに協力の二文字が瞼を押さえ、少女の汗臭い体臭を一人部屋でずっと楽しむ自分の姿を象った。

 その課程の途中で、その子が本来行かねば成らない、或いは、何かしらの許可を得た上で目前へ抜け出して来た様な一つのコミュニティが用意されて在り、そのコミュニティはその課程の内で俺達に、二人が共有出来得る修学旅行の風景と情景とを覗かせていた。そのコミュニティとは、その実習生として居る少女の為に集まった物の様子で、その少女の同年代の者達が構築して居り、俺は、可なり年下の活きの良い連中の集まりを見て憶えその為体裁悪く感じてか、そのコミュニティを敬遠する様にして嫌ったが、確か中学生程の年頃の集まりの様だった彼等が作るコミュニティにはその彼等が宿泊して居たのか旅館が在り、その旅館の内を少し覗き見ると直ぐに一階の座敷の内が見え、その座敷に備え付けられていたテーブルの上には微かに灰皿が置いて在るのが見えたので俺は自分の取り付く島を探し当てた様にその所へ吸い寄せられ、一緒に散々長く走って来て疲れただろう彼に配慮をして、「よぅ、一寸休んで行こうや」と軽く声を掛け、その気にさせようと試みて居た。恐らく、灰皿を見付けた瞬間からさっき迄の少女は少年へと変わって居た。休もうとした理由には〝これ迄往復に時間が掛かり過ぎていては早さを好む彼等から拍手を頂けない〟という錆びた打算も込められて在り、諦観に据えられた狡い俺が在る。その子が中々自分の所まで来ない為俺が独りで煙草を吸って居ると、座敷から出た直ぐの所に敷かれた廊下を越えた屋外の辺りががやがやと騒がしく成り出し今にも自分が居座って居るこの座敷へその騒音共に入って来そうに思えたので、〝そろそろ行くか…〟と気を取り直し、煙草を温く成ったコーラ水の内に入れ、じゅっと言わせてから立ち上がってその子の事情も聴かずに手を引っ張る様にして独り、又俺は外へ出た。その子は〝仕方が無い〟と言った正直を見せずに俺の真似をする様にして付いて来たのを、俺は気配で分って居た。しかし俺の真似をしたのはその一場面だけの様で、その子が煙草を吸う姿は何処でも俺は見なかった。

 俺達が出掛けようと少々の支度をして居る処へわいわいがやがやと学生が入って来て、その学生に紛れて二、三人の先生の様な大人達も入って来、俺がその場に残して居たコーラの中に煙草が入っているのを見付けると、直ぐさま会議に掛けるかの様にして徐々に問題とし始めて居た。不味い事に成る前に退散しようと俺達は又自転車の旅へ出る為に、彼等がわいわいと入って来た廊下側ではなく百八十度逆の方向に備え付けられて在った窓から気付かれまいと少々強引に体(からだ)を乗り出させて出て行った。気付かれずに上手く抜け出せた、と思った俺は知らず内に又その座敷の内に逆戻って居り、その際に、「あんまり悪の道に生徒達を誘わないでね」と先生の様な大人達が口々に俺に向かって言って来たが、どれも尾を引かずに、軽いものだった。如何やら煙草を吸って居たのは俺一人だと思われて居たらしい。

 さて、それから帰路へ就く内に空はすっかり暗く成り、俺達の空間はすっぽり真っ暗闇の内に落ちたらしい。時計は二十一時半過ぎを指していた様だ。場末の長屋(平屋)がそれでも疎らに建ち並んだ路地裏の様な路(みち)を俺達は走って居り、所々の家の窓に黄色い明りが灯っていて、それが又妙に大阪に住んで居た頃に俺が見て居た〝淋しさ〟の様な冷遇を讃えて居り、その冷遇の内に人の温みを知りたがって居た俺は無理矢理その街並を懐かしがった。そこへ辿り着く迄に何処で知り合ったか知れない俺の知り合いが、その明りの点いた民家の内からがらっと戸を開けて出て来て俺達の傍らに立ち、「きちっ、きちっ、って言って跳び撥ねて来る何か黄色い、丸ぽい奴が出る頃は余り出歩くなよ」とか言って居た。俺はそれを聞いて、〝ああ、あのファミコンゲームの魔界村に居た奴の事だな〟と咄嗟に思い付き、けれど頷くだけで黙って居た。

 俺達が働く部署へ還ったと思ったら俺は又時間を戻された様に職場であるその施設の外に居て、少年少女の姿は、俺より先に職場へ入ったのか、無かった。夜の闇に奇麗に浮ぶナイターのライトを見せた向うの光に誘われる様に俺はわいわいしながら歩を進ませ、その光の所に皆が居る事を知って居た様子が在る。その職場は、俺の家から最寄りの小学校横に据え付けられた、バッティングセンターやゴルフの打ちっ放し場を囲むあの緑色のネットで取り敢えず囲まれた空地へと大きく場所を移して居り、俺は幼少の頃からその辺りで遊んで居た為幼少の頃に憶えた結束力を腕力に変え、その為か、皆が黙認の内で敵として居た目標が遂に明るみに出た様に形を明確にさせて敵として姿を採り皆の前に現れて居て、皆は夢中でその怪物の姿をした敵と闘って居た。その怪物と俺の仲間は、一対六で闘って居たようで、俺がその仲間に加わって味方は七人と成った。この時彼等が憶えた「夢中」とは何時もの仕事をして居る時に携える夢中であり、「敵」とは矢張り仕事の様でもあった。「あちゃ~やっぱりもう終わってたかぁ」等と言いながら俺は、半ば怪物が大人しく成って闘いの音が余りしなくなった静けさを聴きながら友人達に先を越された様な口惜(くや)しさを密かに思って居て、もう直ぐ何事も無く何時も通りにこの怪物も皆によって倒されて行くのだろうと予測出来た事から一歩も新しい環境に出る事の出来ない退屈を憶えて、その闘いその物を詰らなくして、友人達も詰らない者達と決め付けた。俺は皆と同じその場所に立ちながら中々その班の内に解け込む事が出来ず、漸くその班の一つの戦力として闘える様に成った丁度その時に、皆は最後の敵をも倒して仕舞った。故に、俺には何一つする事が残されなかった。「くっそぉ~ラスボスぐらいは倒したかったわー」等と項垂れる様にして俺は静かに喚き、自分もその班員の一人で在る事を死太くアピールしようとして居たが、何時も通りに皆はこれに対して何も言わなかった。体裁が整う様に意地蹴(いじけ)て見せれば好かったのだろうが、生来の気性に寄り又俺は正直を隠し、不要の気遣いをして、その少年少女の二人旅に於いて得た自慢話を代わりにし始めて居た。案の定、増山が俺に呪いの言葉と態度とを言って見せた様だが、その子だけに就いての話をすると増山は落ち着いた。又、不思議と時田も中山も群れる俺に食って掛かる事をしなかった。その小旅行に依り知らず内に身が鍛えられていた様であり、ドラゴンボールという漫画に登場する悟空の様に、俺には超かめはめ波を打てる程の実力が具わって居た様子が在ったが、俺はその実力を皆に知られないように秘密にして居て、唯、何時(いつ)何が起きてもその強さの故に心に余裕を持つ事が出来る自分の姿に密かに又陶酔して居た事は憶えて居る。

 目標を追い、枷を手足に付けられながらも俺は、久し振りに会った利用者の内の二人の老婆の内に安心を思い出し、更に強く成った気がして、この夢から醒めた後も、もう一度この二人に取り敢えず会う事が出来る喜びを刻む様にして感謝して居た。

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