呪いを唱われ、祝いと謳う。

恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界

呪いを唱われ、祝いと謳う

小父様へ

  私は忠犬です。私が幼い頃から、小父様と暮らしてきました。当時幼いがために病気がちだった私に、小父様は心を砕き大変お世話をしてくださいました。

 私が元気になったときには、遊んでくださりとても感謝しています。

 数年経ち、小父様が腰を痛めてから遊ぶ機会も減りました。私は、小父様にしていただいたように小父様が楽をできるように努めました。しかし、犬の体は不便で失敗を繰り返し、その度に迷惑をかけてしまいました。私が項垂れていると何やら声がしましたの、「人になりたいか。」と。私は「勿論」と応えました。すると目線がみるみる高くなり、私の体は少女になりました、と同時にこれが呪だとわかるのです、が関係ありません。それから私は小父様を介護しました。始めは驚いているようでしたが、今では私をかわいがってくださいます。

 段々と時が過ぎ、小父様が息をお引取りになられました。私は悲しくて酷く泣きました。それからは、色々なやる気が起きずに何もできませんでした。食べていないのに、眠りもしないのに私は小父様と同じ所へはいけませんでした。これは呪いなのですから。

 ふと、小父様のお孫さんに出会いました。私は一人の少女として接しました。お孫さんは私を慰め、ともに遊んでくださいました。遊んでいる最中、お孫さんは崖から落ちそうになりましたが、私が身代わりになり、お孫さんは助かりました。私は意識ははっきりとしていましたが、体が動きませんでした。一刻ほど経つとお孫さんとその家族が私を助けにやってまいりました。私が小父様の忠犬だと話すと、私を家族に迎い入れてくださいました。

 私はお家族の神社で働かせていただきました。

 多くの時間を重ね、お孫さんが孫を、玄孫を持つ歳になり、また私は玄孫を助けました。

 私はやがて御神体のようなモノとなり、小父様の子孫たちから敬われております。お子孫の大切なお子孫方々と共に居られる事は大変好ましいことです。

 

 私は、今でも小父様を慕っております。あなたとは共に逝くことはできませんでしたが、あなたの遺した者たちと共に生くことにします。私は何時までも貴方を想っております。

 

 小父様の忠犬より

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

呪いを唱われ、祝いと謳う。 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ