ずっとずっと、大切だった
真佐美の祖母である百合子は
喜寿を迎えた今でもパートで働いている。
普段は快活で元気なのだが、今日は暗い顔をして帰ってきた。
何があったか聞くと、
「信じてくれる?」と弱々しく言った。
先週、二十歳の新人のパートが入社した。
百合子は彼女を見るなり度肝をぬかれた。
百合子には幼少期から仲が良かった初子という親友がいたのだが、彼女は二十歳になって突然姿を消した。
新人はその初子と瓜二つであった。
生きていれば自分と同じ七十代のはずで、そんなことはあり得ないのだが、
顔と姿が全く同じなその女は、百合子を見るなりはっとして目をそらした。
ただ、彼女は名前をミユと名乗る。
他人のそら似だろうと三日、四日と黙っていたが、仕草も声も同じ彼女にたまらなくなり、百合子は二人きりの時にとうとう声をかけてしまった。
「初子?」
新人はその言葉を聞くと、一筋涙を流して、静かに頷くとそのまま立ち去って、とうとう出社しなくなった。
そして、今日彼女が突然仕事を辞めたことを上司に言われ、原因は百合子ではないかと詰められたらしい。
ここまで話を聞いた真佐美は、不老不死なんてあり得るのかと困惑し、言葉に詰まった。
何とか言葉を捻りだし
「思い込みで責められて辛かったね。」と言うと百合子は首をふった。
「そんなのは、辛くないの。」
では何が辛いのか聞くと、震える声で静かに言った。
「あの子、ずっとひとりぼっちだったんだろうなって…。
寂しかっただろうなって。
私が声をかけなければ、会社が新しい居場所になったのに。」
真佐美は、子供のように泣く百合子の肩を擦ることしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます