最終章 アナザーモーニング
新学期がやってきた。もちろん全て2時限目以降の講義にした。朝はゆっくりしたいからだ。
しかし、なぜ僕は火曜日の朝、いつもの時間に、いつもの喫茶店で、いつものモーニングセットを頼んでいるのだろう。
物思いに耽っていると、いつの間にかコーヒーも冷めてしまっていた。僕はトーストを囓り、冷めたコーヒーを啜った。
「やっぱり、キミはモーニングが好きなんだねぇ。」
彼女の声がした、ああそうか、幻聴が聞こえるほど、僕は彼女に会いたかったのか…。いや、そんなわけ無いだろう、名前もはっきり覚えてないのに…。
「久しぶり、だね。」
彼女はいつものように僕の正面に座った。幻聴じゃなかった。
「1年間続けてたから、急になくなると、なんか寂しくて…。」
彼女か話し始めた。
「講義は午後からなんだけど、なんとなく来てみたら、キミが居たんだ。」
僕も講義は昼からだが、なぜかここに来てしまった。
「今日はワタシも頼もうかな、モーニングセット、もちろんミルクティーで。」
そういえば、彼女が食べ物を頼むのを見たことがない、そんなことを思った。
「すいませ〜ん、モーニングセット、ミルクティーでお願いします。」
彼女は注文したあと、楽しそうに笑いながら言った。
「もう一つモーニング頼んだから、そっちはアナザーモーニング、でいいのかな?」
僕は絶対に違うと思ったが、ツッコミが出てこなかった。なぜ、彼女に話しかけることにこんなに緊張しているのか、これまでこんな感覚はなかったのに、声を出すことに緊張していた。
彼女は僕の気持ちを知っているのか、全く知らないのか、僕には分からなかったが、笑顔で僕を見ていた。
あれ、こんなにいい笑顔だったかな?
僕は見とれてしまっていた。
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