第21話 今後の治療について2

 涙をこらえ、僕は先生へ「ペースメーカー以外で治療は出来ないのですか?」と聞いた。


 即効性の治療法なら、やはりペースメーカーである。徐脈を補うのに適している。ただ、精密機器である。


 欠点はある、警告(電気風呂、低周波治療器、電気自動車の急速充電など)注意(CT、X線、スマホ、スマートキー、IH製品など)問題なし(PC、WiHi、Bluetoothなど)であり、植え込みした方の肩に負荷をかけることは勿論ダメである。


「磁気ガードも良くなっているから、普段の生活に問題はないと思って良い」と言われても、左鎖骨下に埋めたとしてスマホは、右耳で受けて、胸ポケットに入れるのはダメ出し、入室管理カードも注意で、空港の金属感知もダメときたもんだ。


「いやいや、仕事にならんし、不便極まりないです。」


 そう言って、何とかならないか、お願いしてみると、

「効果が、あるとは言えないが試しても良いかも知れないお薬はあります。ただ、本来の効果ではなく、副作用に当たる部分で少し症状の緩和が出来るかも知れないというだけです。これは血管拡張作用があり、頻脈などの副作用がありますので、完治が出来ると思わないでくださいね。」


 藁にも縋る思いで、お願いすると

「では、先ずは1日2回の服薬から始めてみましょう。ただし、思った効果が見込めない場合は、ペースメーカーを使います。」となり、瞳は、あまり納得してないようだが、僕の言い分を組んでくれたようだ。


「先生、僕の病名はわからないままですか。」


「治療をするうえで、何もない訳にはいかないので、現状は徐脈頻脈症候群としておきましょう。」


 心房細動がどうとか言っていたが、確定診断に至らないようだったので、症状から近い物を選択されたのだろう。



 病室へ戻り、瞳へは改めて今後の事を話す

「今の仕事上、ペースメーカーは逆に危険だし、家でも家電のIHなんて普通にあるし、普通に子供と遊んだり肩車したりしたい。」


 瞳は、「それよりも、薬が効かなかったら?いつまで治療しないといけないの?急に心臓が止まったら?仕事なんて、他に探せばいいじゃない。家電が問題なら、IHじゃないものでいいし、飛行機や電車も危ないなら、バスで帰ればいい。車なんて、古いのでいいじゃないの。康弘がいなくなる事が怖い。私達をおいてなんて、許さない。」

 矢継ぎ早に、吐き出される言葉に、

「分かっている・・・つもりだけど、何処までやれるか諦めたくないんだ。」


「私、知ってるのよ。

 康弘が、倒れたことも全部。

 病院から、連絡も合ったわ。

 ここに来るときは、様子はどうだったか聞いて知ってるのよ。」


「そうだったんだね。

 何か、そんな気はしてたよ。

 でも、良かったと思ってるよ。

 よく分からない、病気が僕で。」


 お互いの手をしっかりと握りしめ合いながら、話は続いたが平行線のまま時間が過ぎていった。


 最終的に、1年以内と猶予を貰えた。


 完治は無くとも、倒れない様になれば薬で治療を続ける、次に危ない判断がされたら手術を受ける事が条件だった。


 取り敢えず、やってみよう。


 少しでも良くなるなら、瞳も安心してくれるだろう。


 期待を胸に、希望を抱いて日は過ぎていく。


 早速、夕食後から始まるようだ。


 噛まなくていい口の中で、簡単に溶けて行くようだ。

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