第24話 消えたレシピの謎 ③
厨房での調査が一段落した後、涼介は思案顔でシーフード・ハーバーのメニューを眺めていた。彼の鋭い味覚と料理の知識が事件解決のカギになると信じている香織は、そんな涼介の様子を見守りながら言った。
「涼介、シェフの田中さんの料理をもう一度試してみるべきじゃないかしら?彼のスタイルや特徴から、レシピの手がかりを探ることができるかもしれないわ」
涼介はうなずき、田中に依頼した。「シェフ、シーフードパエリア以外の代表的な料理をいくつか作っていただけますか?レシピを探る手助けになるかもしれません」
田中は少し驚いた様子だったが、快く引き受けた。「わかりました。すぐに準備します」
厨房は再び忙しさを取り戻し、田中が手早く料理を作り始めると、涼介はその手元に目を凝らした。しばらくして、数品の料理がテーブルに並べられた。涼介は一口ずつ慎重に味わいながら、香織にも説明を始めた。
「まずはこの『エビのグリル』。シェフは新鮮なエビを使い、シンプルながらも絶妙な火加減でグリルしている。そして、特別なスパイスミックスが使われているね。このスパイスミックスが彼の料理の核になっている可能性が高い」
次に、涼介は『ホタテのカルパッチョ』に箸を伸ばした。「このカルパッチョには、シトラス風味のドレッシングが使われている。これはシェフが独自に開発したものだろう。爽やかさと深い旨味が見事に調和している」
涼介は料理を一つ一つ味わいながら、田中の料理スタイルを読み解いていった。「シェフの特徴は、新鮮な素材を活かし、シンプルな調理法でその旨味を最大限に引き出すこと。そして、隠し味として特製のスパイスやドレッシングを使う点だ」
そして、いよいよ『シーフードリゾット』を試食すると、涼介の目が輝いた。「このリゾットには、特別な魚介の出汁が使われている。これはシーフードパエリアのレシピにも共通する要素かもしれない。隠し味として、少量の白ワインとレモンジュースも使われているようだ」
香織は涼介の説明を聞きながら、メモを取っていた。「つまり、盗まれたレシピにも同じような要素が含まれている可能性が高いということね」
涼介はうなずきながら、最後の一口を楽しんだ。「そうだね。特に、特製スパイスミックスと魚介の出汁、そして白ワインとレモンジュース。この3つの要素が重要な手がかりになると思う」
その時、厨房の扉が開き、北村遼太郎が再び現れた。「どうやら進展があったようですね、香織さん、涼介さん」
涼介はにやりと笑い、北村に向かって言った。「はい、シェフの料理からいくつかの手がかりを得ました。これで、盗まれたレシピの内容を推測することができます」
北村は満足そうにうなずき、「それは良いニュースです。では、その手がかりを基にして、さらに調査を進めましょう」と提案した。
香織は涼介の肩を叩きながら言った。「さすが、涼介。これで一歩前進ね。次は藤井さんと直接話をする必要があるわ」
涼介は決意を新たにし、香織と共に次のステップへと進む準備を整えた。シーフードパエリアのレシピの謎を解くため、二人は一層の努力を惜しまなかった。
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