第16話 ラーメン戦争 ④

成分リストを手に入れた香織と涼介は、事務所に戻り、解析を始めることにした。彼らの探偵事務所には簡易なラボが設置されており、ここで様々な成分を調べることができる。


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「まずは、この特製胡椒にどんな成分が含まれているのかを調べてみよう」と涼介が言い、分析機器を準備し始めた。


香織は成分リストを見ながら、「このリストに記載されている成分の中で、どれがアレルゲンになり得るのかを確認しましょう」と言った。


「さて、これが映画のクライマックスのような緊張感を持つ場面にならなければいいけど」

と涼介が冗談を飛ばしながら、胡椒の粉末を分析機器にかけた。


「涼介、あまり映画の見過ぎは良くないわよ」

と香織は微笑んで答えた。


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数時間後、分析の結果が出た。


「見て、ここに異常な成分があるわ」と香織が指差した。「この成分、リストには記載されていないわ。」


「確かに。これは…グルタチオン?普通の胡椒には含まれていないはずだ」と涼介が驚いた声で言った。


「それが問題の成分ね。これがアレルゲンとして作用した可能性が高いわ」と香織は言った。


涼介は考え込み、

「このグルタチオンがどうして胡椒に含まれているのか、さらに調べる必要があるね。それに、この成分がどうやって混入したのかも気になる。」


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その夜、香織と涼介は「太平洋ラーメン」に戻り、橘義太郎に分析結果を報告した。


「橘さん、この特製胡椒に通常ではあり得ない成分が含まれていました。これはアレルゲンとして作用した可能性が高いです」と香織が説明した。


「それが本当なら…一体どうしてそんなことが?」橘は困惑した表情を浮かべた。


「おそらく、誰かが意図的にその成分を混入させたんでしょう」と涼介が推測した。

「その人物が、藤原理香さんのアレルギーを知っていた可能性があります。」


「つまり、これは事故ではなく、計画された犯行だということか?」橘は驚きと恐怖を交えた声で言った。


「その可能性が高いですね。次は、この成分がどのようにして胡椒に混入されたのかを調べる必要があります」と香織が答えた。


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その時、店の扉が開き、見知らぬ男が入ってきた。男は帽子を深く被り、サングラスで顔を隠していた。


「おい、君たち。ここで何をしているんだ?」と男が不機嫌そうに言った。


「失礼ですが、あなたはどなたですか?」と香織が尋ねた。


「私はラーメン国士無双の堀井達也だ。君たちが何を調べているのか興味があってね」と男は答えた。


香織と涼介は互いに視線を交わし、警戒心を強めた。

「堀井さん、何故ここに?」と涼介が尋ねた。


「私の店のことを嗅ぎ回っていると聞いたからだよ。特製胡椒のことも知っている。だが、君たちには関係ないことだ」と堀井は冷たく言った。


「それはどうでしょうか。我々は真実を追求する探偵ですから」と香織は毅然とした態度で答えた。


「ふん、好きにするがいい。ただし、私の邪魔をするなよ」と堀井は一言残して立ち去った。


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堀井の出現により、事態はさらに複雑になった。香織と涼介は、次の手がかりを掴むため、さらに深い調査を続けることを決意した。果たして、この謎の真相はどこにあるのか?


「涼介、次はどこに向かう?」と香織が尋ねた。


「まずは堀井の店を調べる必要があるね。彼が何を隠しているのか、しっかりと確認しよう」と涼介は答えた。


こうして、二人は新たな手がかりを元に動き出した。次なる章では、ラーメン国士無双を巡る調査が展開される。果たして、その先にはどんな真実が待ち受けているのだろうか。

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