第89話 奴隷と拳銃
夜、いつものように寝ようとすると、枕を持ったアストレナ、レモニカ、ヒルデビアが俺達の寝室に入ってきた。
「今日からわたくし達も床をご一緒させてもらっても良いでしょうか?」
今までこのトリオとヒオリ、ティアニーペアーはそれぞれ最初に決めた部屋で寝ていたのに……。まぁこの部屋はかなり広いからスペースは十分にある。
「うん!いいよ!じゃぁアッチは今日はモモと一緒に寝る!」
「ココノんもモモと寝るの!」
「ニャーはシャルと一緒に寝て見たいな……」
「やったぁー♡タマちゃん一緒に寝よ♡」
寝るときは、俺の上にフォン、左ココノ、右タマという定位置があってキッズが眠った後、ウィスタシアに呼ばれたら、ウィスタシアとモモの間で寝るという流れだった。
「あのぉーわたくし達は何処で寝たら良いでしょうか?」
するとタマが仕切る。
「一番軽いアストレナがゴロウの上で、左右にレモニカとヒルデかな……」
「うん!それがいいね!」
「ココノんも良いと思うの!」
いや良くないだろ!
俺の心の声が届く筈もなく、フォンがアストレナの手を引いて仰向けで横になる俺の所に連れて来た。
「アストレナ、ゴロウの上で寝てみて!」
「えっと……それは流石に……重いですし」
だよな!つか、お姫様なんだから俺の上じゃ寝ないだろう。そう思っていたのに。
「ゴロウの運動神経は無限だから重くないの」
「アッチはいつもゴロウの上で寝てるよ!大丈夫だよ!にひひひっ」
フォンは特に寝相が悪くて朝起きると全く違う場所にいる。酷い時は廊下で寝ていたりする。
「そ、そうですか……で、では、やってみます!」
と俺の上にうつ伏せに寝転がるアストレナ。
俺の胸で顔を上げて不安気な表情で俺に言う。
「あの……ゴロウ様……わたくし、本当にここで寝ても良いのですか?」
「いや、いいんだけども、そこじゃ寝難いだろう?布団を敷いてだな……」
「いえ!眠れます!むしろここで寝てみたいです!」
ま、マジかよ!?
更にココノがレモニカとヒルデビアを連れてきた。
「二人はゴロウの隣で寝るの」
「かしこまりました。では、失礼致します」
「ふふふ不束者ですが、よ、宜しくお願いしますぅ〜」
二人は俺にぴったりくっ付く感じで横になった。
「ボク、もう眠いよぉー。電気消すね♪」
「ゴロウ……チン……ねる?」
「はいはい……、おやすみ」
ラウラが照明を消して部屋が暗くなる。消灯する前、ウィスタシアと目が合った。怒っているかと思いきや、彼女は何故か誇らしげに親指を立てグッドサインを送ってきた。
今日の夕飯のときに、マグロを食べながら今まで皆知らなかったアストレナ達の悲惨な生い立ちが話題になり、アストレナに同情したのかもしれない。
暗い部屋でアストレナは俺の胸で呟く。
「ゴロウ様、明日はよろしくお願いいたします」
「ああ、任せろ」
俺はアストレナの頭を撫でた。
両隣にはレモニカとヒルデビア。
女の子のクッソ甘い香りが鼻をくすぐる。
こんなの寝れねー!と、思ったのだが、結構すぐ眠れた。
なぜなら俺は子供には1ミリも興奮しないからだ。
◇
翌日、朝食の後、あくびをするアストレナ、ヒルデビアと一緒に俺はグラウンドに出た。
そういえば、レモニカも眠そうだったな……。
20メートル先にある木箱には波紋模様の紙が貼ってある。射撃の的だ。
俺は異次元倉庫からハンドガンを出して二人に見せた。中国人の友達から紹介してもらったマフィアルートで入手した代物だ。
「ヒルデビア、これからはコイツでお前がアストレナとレモニカを守るんだ」
ハンドガンをヒルデビアに渡し使い方を説明する。
「よし、あの的の中心を狙って撃ってみろ」
「はい」
ヒルデビアは的に狙いを定め、撃つ!
バキュン!
しかし弾丸は的を大きく外れ、どこかへ飛んでいった。発射の反動で腕を痛めたのかヒルデビアは手首を抑えている。
「難しいですね……」
「手首、大丈夫か?」
「はい。問題ありません」
「次はこんなふうに構えてみろ」
俺は海外の射撃動画を参考にヒルデビアに銃の構えを教える。
「そのまま、的を狙ってストップな」
「はい!」
俺は銃を構えるヒルデビアの前髪を掻き上げ隠れていた右目を露出させた。
今まで見せていた左目はアズダール人らしい紫色の瞳だが、隠れていた右目は金眼。左右色の違うオッドアイだ。
「右目でリアサイトとフロントサイトの照準を合わせてみろ」
「右目は物がブレて見えるのですが……、それに瞳の色が違いますので恥ずかしくて隠していました。……ああ、ですが……右目で見るとしっくりしますね」
「撃ってみろ」
「はい」
バキュン!
次は的の中心から少しズレた場所に当たった。
「上手いぞ!」
「ヒルデ、凄いですわ!」
「何故当たったのでしょう?」
「お前の右目は魔眼だ。汎ゆる誤差を修正する校正の瞳。
「この目、幼い頃からコンプレックスだったのですよ……。そうですか……それが姫様のお役に立てるのならば、喜ばしい限りでございます」
「弾丸と替えの銃はたくさんある。これから毎日、射撃練習をしてもらうがそれでいいか?」
「はい!私が姫様やレモニカを守れるのなら是非そうしたいです!」
以後、ヒルデビアは銃のスペシャリストになっていく。
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