第74話 妹の過去と制服


◆◆◆


 2年前の春、深夜――。

 人気のない森を抜ける道路の脇に停められた黒いワンボックス車の車内にて。


 ゴロウの妹、当時18歳の愛莉は大学の新歓コンパの帰り道、不良グループに車で拉致された。


 居酒屋で愛莉を見掛け、あの女犯したいとゲラゲラ笑いながら盛り上がった不良グループに跡を付けられて攫われたのだ。


「おらッ!早く服脱げよ」


 愛莉服を乱暴に引っ張る金髪の男。


「えっぐ……嫌ぁああっ!うぅ……やめて!」


 不良男5人、女1人ではとても抵抗できない。それでも愛莉は震えながら渾身の勇気を振り絞って逆らった。その顔は涙で滅茶苦茶になっている。


「いちいち抵抗すんなよ。面倒くせーな」

「ぬーげ、ぬーげ、ぬーげw」

「ぬーげ、ぬーげ、ギャハハハハ、まじウケるわぁ〜」

「朝まで犯しまくるぞーwまた俺等のガキ孕ませてーw」


 パシッ!――怯える愛莉の頬を男がひっぱたいた。


「殴られたくなかったら大人しくしてろよ?」


 男達の恐さに愛莉は心が折れて抵抗を諦めた。

 男達が力尽くで服を剥ぎ取り愛莉は下着姿になる。


「この乳たまんねーなw」

「誰が一番にやるか決めよーぜ」

「つか、今回は俺が一番じゃね?」

「はぁ?俺だろ!」


 不良共がそんなやり取りをしていると――。


 ガッゴンッッ!! ――ワンボックス車のドアが吹き飛ぶ。

 そして中学生くらいの少年が車内を覗いた。少年は華奢でサンダルにハーフパンツ、Tシャツ姿、寝間着のような格好だ。


「すっげー音したな!ビビったわ!」

「つか、なんだこのガキッ!」

「俺の車のドアがぶっ壊れたんだが!?」


 少年が涙で顔を濡らした愛莉を見た瞬間、不良5人の姿がこつ然と消る。

 2人だけになった車内は静寂になる。


「お兄ちゃん……お兄ちゃん!!ゴロウぅぅうあぁああああ!!」


 泣き叫ぶ愛莉をゴロウは優しく抱きしめた。


「帰り遅いから心配して……、来て良かった。よしよし……何があっても俺が愛莉を守るから……」


◆◆◆


 現在――。


 笛や太鼓の音楽を流し、ヨーヨー釣りや射的も用意した。ゴロウズ達が店番する屋台で皆好きな物を貰ってベンチで食べている。

 祭りっぽい雰囲気になったな。


 俺がウィスタシアやシャルロットとベンチに座って話していると愛莉が旅館から出てきた。


『お疲れ様、ありがとう』


 ウィスタシアを一瞬睨んだ愛莉は俺の隣に座る。

 

『お兄ちゃんってさ。その子と付き合ってるの?』


 と機嫌悪そうに言ってくる。この前、ウィスタシアに実家の農地を見せたくて、日本に連れて行った。その時に手を繋いでいるところを愛莉に見られたんだよな。


『付き合ってないよ。でも、奴隷以上、嫁未満って感じかな』


『何よ、その関係!?意味わからない!セフレってこと?』


『いや、まだそういうことはやってないって。この子達を引き取った理由は以前話しただろう』


 愛莉や実家には身寄りのない奴隷を引き取って、将来関係を築けたら嫁にするかも、と事実を伝えた。

 愛莉からは「キモい」だの「変態」だの罵られたが、こうでもしなきゃ出会いがないのだからしょうがない。


『まぁ、お兄ちゃんは頭文字Dだもんねぇー♪』


『おまっ……、何故知っている……?どうしてバレたんだ……!!』


 そう、俺はD、つまり童貞だ……!そんな恥ずい話、妹に言ったことないのに!!


『いや、カマかけただけだけど……』


『……は、嵌められた!つか、愛莉だって今年21になるのに処女だろ』


『あたしは別にいいの!興味ないから!へぇー、Dなんだねぇー。ふーん、かわいそ。あはははは』


 Dって言うな!

 日本語だから何を話しているかわからないウィスタシアは俺達を見て微笑む。


「仲の良い兄妹なんだな。私とシャルは食べ物を貰ってくるよ」


「ああ、俺と愛莉の分も貰ってきてくれないか?焼きそばで」


「ふふっ、わかった」


 そう言って立ち去るウィスタシアの後ろ姿を愛莉は睨んだ。

 何故かウィスタシアに対して態度が悪いんだよな。


『ウィスタシアは将来、愛莉の義姉になるから仲良くしてくれよ』


『むうぅ、……嫌っ!無理!』


 俺は彼女の態度に溜息を吐いた。

 他の奴隷とは仲良くしてくれてるんだけどな……。


 愛莉は結構可愛い。彼女曰く大学で言い寄ってくる男はかなり多いらしい。このルックスで巨乳だから嘘ではないだろう。


 しかし、彼女は男嫌いだ。


 というのも、大学に入学してすぐ暴漢未遂事件に遭ったのだ。


 相手は不良グループで、大学とは関係ない連中だった。俺が助けに行き全員ギリギリ死なない程度まで痛め付けた。犯行に使った車も木っ端微塵した。


 未遂に終わったけど、その時余程恐い思いをしたのか男嫌いになってしまった。


 こっちの世界の妹、マリアの件もあって、それ以来愛莉にできるだけ優しくしている。



 ウィスタシアが立ち去ると愛莉はそっぽを向いて意味不明なことを言う。


『生物的に妹じゃないのに実妹って最強だと思うんだよね……。合法的に結婚できるし、それから……』


『まぁ妹好きにはたまらないシュチュエーションかもな』


 俺はシスコンではないが。


『じゃ、じゃぁさっ、あ、あたしで卒業しちゃえば?あたし、お兄ちゃんなら嫌じゃないし……』


『えっ?はぁ?お前、何言っての?』


 愛莉は振り返って俺を睨んでくる!張り出したGカップが浴衣帯の上に乗っていて物凄い存在感だ!


『ビビってる?それとも本当はロリコンで変態なのかな?』


『変態かもしれないけど、ロリコンではないからな!つか、ビビってるとかじゃなくて、普通に無理に決まってるだろ』


『あたしは知らない人とするくらいならお兄ちゃんがいいけどなぁー。それで男性恐怖が治るかもしれないし……。まぁお兄ちゃんチキンだから無理だと思うけどぉ〜。ニヤニヤw』


 血は繋がってないから兄妹じゃないけど、俺からしたら妹だ。前世では7つ歳が離れていて俺が現在と同じ17歳のときに愛莉は10歳だった……。

 いや、まてよ……、今フォンが10歳で俺が17。

 例えば10年後、俺は二十歳のフォンを抱けるのか?無理な気がする。妹とか娘みたいな感じになってしまって……。


 そういう意味で、愛莉とやっておけば経験というか練習になるかも。それに俺は経験がないから実際にどんなものか知りたいってのもある。

 それで愛莉の男性恐怖症が治るなら、お互いWinWin、一石二鳥じゃん……!?


『わかった。じゃあセックスしよう!』


『えっ!?嘘?はぁ?や、ヤバ……!ま、まじなの……!?』


『ああ本気だよ。俺も愛莉とやってみたいし』


『て、かさ、じょじょじょ冗談に決まってるじゃんっ!!本気にした?あたしのこと襲ったらお母さんに言うからね?』


 んだよそれ!からかっただけか!


『べ、別に、愛莉がしたいならオナホ代わりに使おうと思っただけだしぃ?』


『はぁ?なにそれ!キッモ!超ムカつく!!やっぱりお母さんに言うから!』


『それだけは、ほんとにやめて!』


 まぁ愛莉ももう大学3年だ。いつか彼氏ができて結婚するだろう。兄とやったことあるとか黒歴史過ぎて将来の旦那が可哀想だよ……!


『ところでさ、タマちゃんとフォンちゃんが服のことで喧嘩したんでしょ?さっき浴衣に着替えさせてる時に聞いたんだけど……』


『ああ、そうなんだよ』


『皆まだ若いし制服作るのはどうかな?』


『制服か……いいかもな。服のことで喧嘩もなくなるだろうし』


『お兄ちゃんはブレザーとセーラー服どっちがいい?』


『どっちもいいなぁー!迷う!』


 つか、皆に制服着せたら絶対に可愛いよ……!

 あ、俺ロリコンじゃないからね!


『じゃぁさ、あたしがデザイン選んで注文してあげようか?もちろん注文する前に確認してもらうけど』


『就活とか忙しいだろ?大丈夫か?』


『うーん、就活の準備はしてるよ。でもまだ決められなくて……、できれば、お兄ちゃんと異世界ビジネスやりたいなぁーとか、ちょっと考えてるんだよね……』


 と遠慮気味に語る愛莉。実は今現在も異世界で作った無添加シャンプーなんかを愛莉が作ったサイトで売っている。全然売れていないけど。

 因みに同じウェブサイトで親父の玄米も直販しているけど、これもまた売れていない。


『例えばどんなビジネス?』


『【何でも治せる魔法治療院マジカルクリニック】ってお店を出して、あたしが接客してゴロウズを置いて回復魔法で治すとか……』


 因みに俺は精神的な病気以外はどんな病気も治せる。


『それ、流行りそうだけど、うまくいったらめっちゃ世間から注目されそうだよな……』


『やっぱりそうだよね……』


『まぁでも、俺はブラック企業で働いて病気になって早死したし。無理に就職しろとは言わないよ。それに愛莉が挑戦したいことがあるなら協力するから、なんでも相談してくれよ』


 そう言って微笑むと愛莉も笑う。


『うん、ありがとう……お兄ちゃん』


 ウィスタシア達が戻ってきた。

 すると愛莉は俺の腕に抱き着く。


「ふふっ、やはり仲の良い兄妹だな」


 カオスな状況のような気がするが、まぁいいか……!


 数日後、愛莉から制服のサンプル画像が届き、俺はセーラー服を作ることにした。


 



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