第48話 奴隷の子供プレス
潮干狩りが終わったら全員集合して転移魔法で旅館の女湯に瞬間移動。
皆、海水と砂で体中汚れているから、風呂場で服を脱いでそのまま体を洗わせる。
「俺は男湯に行くな。今夜はハマグリフルコースだ。楽しみにしとけよ」
今夜食べる分のハマグリは海水の入ったクーラーボックスに入れておいた。2時間くらいで砂抜きできるから夕飯に間に合う。
◇
夜はハマグリの焼物、味噌汁、酒蒸しなどなどが出て、皆自分で取った食材だから楽しそうに食べている。
「あっ!これ、ラウラちゃんがとったヤツじゃない?貝にハートの柄があるよ!」
「ほんとだぁ。ボクが取った貝だね。シャルにあげるよ♪」
「わぁー嬉しいぃ〜♡シャルこの貝殻大切にするね♡」
「結構美味しいわね……」
「だから言ったでしょう……クチャクチャ……、某など、いくられでも食べれますよ!はむはむガツガツ!」
「アストレナ様、お口に貝のお汁が……」
アストレナの口をハンカチで拭くヒルデビア。
「このハマグリ、とても美味しくて夢中になって食べてしまいますわ」
「ここの料理は城で振る舞われる豪華な食事よりはるかに美味しですね……。調味料や香辛料を使う料理技術が秀悦です」
「いいいいつも凄く美味しくて、わわわわたし、太っちゃいますぅぅう〜〜!!」
俺も味噌汁に口を付けた。
……なんて濃厚な貝の味。味の暴力だ!美味すぎる!
「ゴロウ、アッチ明日も潮干狩りに行きたい!」
「ココノんも行くの!」
「あたしも行きたいな。潮干狩り凄く楽しかった」
「ニャーも行く!」
とお子様達が俺に言っている。
「明日は行くところがあるからダメだ」
「「「「 ええぇーー! 」」」」
滅茶苦茶がっかりしてるな。
「また今度連れて行ってあげるから」
そう言うと彼女達の顔は明るくなる。単純でわかりやすい。
潮干狩りくらいでこんなに喜ぶなら授業が始まっても週二日は休みにして、色々と遊びに連れて行ってあげた方が良さそうだ。
◇
そして寝る時間がやってきた。
そろそろ奴等が来る頃だ……。
そう思っていると枕を持った兎娘のココノと猫娘のタマが俺の部屋へ入ってきた。
どこかで合流して一緒に来たのか、続けてウィスタシアも入ってくる。
やはり今日も4人で寝るのか……、と思っていたら。
続けて狐娘のフォンが恥ずかしそうに入ってきて……、更に――、犬娘のモモまで連れてきている!
「あたし……邪魔じゃないかな?」
「大丈夫なの!」
大丈夫なのん!?
てことは6人で寝るのか……?俺のベッドはダブルサイズで流石に狭い。
なんて心配をしていると……。
「へー、ここがゴロウさんの部屋かぁ~。見たことない物がたぁーくさん」
「ボク、やっぱり自分の部屋で寝ようかな……」
「ラウラちゃん大丈夫だよぉ~。ゴロウさん、誰とでも一緒に寝るってモモちゃんに言ってたんだって♡」
そんなようなことは言ったけども……!?
ココノ、タマ、ウィスタシア、フォン、モモ、シャルロット、ラウラ……、俺ッ!!
8人で寝るってことかッ!?そんなバカな……?
「皆、俺と一緒に寝るのか?」
「「「「「 うん! 」」」」」
どうやら8人で寝るらしい……!!
「この部屋だと狭いから、今日は大部屋で寝よう」
ということで、この旅館で一番広い和室30畳の部屋へ移動した。
布団8枚を横4列、上下にくっつけて敷いて寝床の完成である。
「じゃぁゴロウがここに寝て!」
「わかった」
タマに言われた布団に横になる。
「ココノん、左でねるの!」
ココノが俺の左側で横になった。
「ニャーは右ね」
タマも横になる。
「私は上だな」
最後にウィスタシアが堂々と俺の上に寝転がる。
つかこの子、一人だけ大人なのに皆の前で恥ずかしくないのだろうか……!?
「お姉ちゃん大胆♡シャルはこっちで寝るね♡」
「ボクはこっちかな♪」
「あたしはここで寝るよ」
シャルロット、ラウラ、モモは空いている布団に入った。
「アッチも……、ゴロウと寝たい……」
と悲しそうにフォンが言う。
「もう場所決まってるから、ファンは空いてる布団で寝て」
「こらタマ、仲間外れはダメだぞ」
俺はタマを注意する。
ここはどう考えても子供優先だよな。
「ウィスタシア、降りてくれ」
俺がそう言うとウィスタシアは俺の胸に顔を埋めて返事をしない。
おーい、ウィスタシアさーん!
だ、ダメだ……、この子譲る気ないぞ!
俺は第四位階、精神魔法〈念話〉を発動させウィスタシアの頭に直接話し掛けることにした。
【ウィスタシア聞こえるか】
「っ!?」
【魔法で君にだけ聞こえるように話している。親のいない子供が、大人に甘えられるように俺が一緒に寝るわけで……、だからフォンに譲ってあげてくれよ】
【……わかっているよ】
なんだ、わかっているのか。良かった。
【お前は小さい子が好きなんだろう】
全然わかってないじゃないか!?
【冗談だ。子供を優先してあげてくれ】
【ああ、わかってくれたならいいんだ……】
なんかめっちゃ嫌そうだな!そんなに俺と一緒に寝たいのか……?
まぁウィスタシアも家族と離れて4年間、孤独に生きてきたからな。誰かに甘えたいのかもしれない。
【みんなが寝たらウィスタシアも抱っこしてあげるから】
【っ!ふーん。そうか……】
「フォン、退くからここで寝ていいぞ」
「うんっ!ウィスタシアありがとう!にひひひひっ」
フォンが俺の上に寝転がる。この子は9歳で身長は130センチないくらい。奴隷商会にいたときにバボナ赤熱病で食事をしていなかったから、まだ体はガリガリで上に乗られても全く重さを感じない。
「寝難くないか?」
「アッチ、何処でも寝れるから平気だよ!」
「そっか……。よし、電気消すぞ」
暗い部屋の中で、ココノ、タマは俺の脇に抱き着き顔を押し当てている。フォンは仰向けで寝る俺の胸に抱き着いている。
三方向からの子供プレス。せ、狭いって!
これ夏場はエアコン必須だな……。
俺はそんな子供達の頭や背中を撫でてやる。
5分後……全員寝た。
昨日は気を使ってこのまま寝たが、ココノとタマは滅茶苦茶寝相が悪くて、朝起きたらココノは逆向きになっていたし、タマは俺の股間に顔を突っ込んで寝ていた。
寝相が悪すぎて寝ながらどこかへ行ってしまうのだ。朝まで一緒に寝る意味はないだろう。
たまに夜中起きて布団だけ掛けてやるか……風邪でも引かれたらかなわないらな。
【ウィスタシア、起きている?】
【……起きているよ】
【一緒に寝るか?】
【…………うん】
念話なのにその返事には湯気が出るような熱い吐息を感じる。
俺はフォンをグラビティで浮かせ、抜け出すと子供三人を並べて寝かせた。三人とも気持ち良さそうに寝ている。
さて、ウィスタシアを抱っこしに行くか……っ!
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