第42話 奴隷と牧場で遊ぶ




 自室の戻るとウィスタシアとココノはまだ起きていてベッドで俺の帰りを待っていた。

 もっと早く終わると思ったけど30分くらい待たせてしまった。


 そしてこの日は俺を挟んで3人で寝ることに……。

 ココノは抱っこしてあげると直ぐに眠ってくれたが、ウィスタシアは俺の腕に抱き着いて匂いを嗅いだり、もぞもぞしたりしていて、なかなか寝付けないようだった。

 寝不足だった俺の方が先に意識を失い朝を迎えた。



 

 朝食――、今日は米、豚汁、魚の塩焼き、トマトサラダ、漬物。

 この子達は好き嫌いが無いようで今のところ何を出しても「美味しい」を連呼して喜んで食べてくれる。

 因みにヒオリは大食いで皆の三倍は食べる。

 それを横目にティアニーがぼやいても、ヒオリはティアニーのそんなところも好ましく思っているようで、二人は楽しそうにやっている。


 モモ、フォン、タマ、ココノはちゃんとフォークで食べてるな。フォンとタマは元気そうだし今日は皆で出掛けるか。

 ラウラはいつもと変わらず涼し気な雰囲気。

 ウィスタシアは眠そうでシャルに心配されている。

 アストレナ、ヒルデビア、レモニカは穏やかな感じだ。


 俺は朝食を食べながらココノがこの家に残る旨を皆に話した。


「今日は皆で出掛ける。食事が終わったら着替えてくれ。服は各自の部屋に用意してある」


「「「「「 はーい! 」」」」」


 食事の後、皆が着替えている間、昨日賊のアジトから回収した金品を確認した。


 賊から回収した資産は返す宛がないから有難く頂戴することにした。


 空部屋に広げてざっくり見積もる。


 装飾品や宝石の価格は不明だけど、これらは日本に持って行って売った方が良さそうだ。

 金貨、銀貨等の現金はだいたい3億グラン程ある。

 このカネは将来皆が独立する時に色々と用立てることもあると思うから異次元倉庫に貯金しておこう。




 旅館の横にある車庫に皆が集合する。


 車庫には車が3台とバイクが1台停まっている。車は濃い緑のクロスカントリー車と白の2トン平ボディ車、それとこの旅館で使っていた送迎用の小型バスだ。


「今日はこれに乗って出かける」


 俺は小型バスの前で皆に言う。


「ゴロウ様、これは何でしょうか?」


 と首を傾げるアストレナ。

 ティアニーは興味深そうに車体を触り、フォンとタマは2トン平ボディ車の荷台に登っている。


「これは車といって、馬車のように皆を乗せて走る乗り物だ。では皆後ろに乗ってくれ。あっ、一人俺と一緒に前に乗れるけど誰か乗りたい子はいるか?」


 するとラウラが直ぐに手を挙げた。


「ボク、前がいいな」


「じゃぁラウラが前な」


 幼稚園児を送迎するような小さなバスだが、客席は16席あるから十分。


 皆が乗ったところで俺はエンジンを掛けた。


「おお!振動してますぞ」ヒオリ

「なによ、この音?……危なくないわよね?」ティアニー

「この椅子も素晴らしいですわね」アストレナ

「ふふふふかふかです!」レモニカ

「こらぁ、タマぁー!ゴロウさんに座ってろって言われただろ!」モモ


 何やら後ろが騒がしいが俺はバスを発進させた。


「う、動きましたね……本当に不思議です……」ヒルデビア

「凄いですわね。ゴロウ様には驚かされてばかりです」アストレナ

「馬も無しに動くのか……、本当に凄いな」ウィスタシア

「お姉ちゃん!何でゴロウの隣がいいって言わなかったの!」シャルロット

「だ、だって……恥ずかしいだろ……」ウィスタシア

「ヘタレ!シャルがっかりだよ!」シャルロット

「動くのこわい。ニャー座る」タマ

「ココノんの隣座るの」ココノ

「にひひひ!どこに行くのか楽しみだね!」フォン


 皆、楽しそうだからまぁいいか。


「すごーい!どんどん進んでいく。ねぇ、ゴロウ、どうして転移魔法で移動しないの?」


 助手席のラウラに聞かれた。


「大した距離じゃないし、直ぐに移動したら味気ないだろ」


 俺の家がある第一ランド島は北海道程の広さなのだが、開拓し使用している土地はほんの僅か一部。それでもかなり広大な敷地なのだが、車だとのんびり走っても20分あれば端から端へ移動できる。


「ふーん。ボクこの車って乗り物好きかも。揺れないから馬車より全然乗り心地いいし、早く走るからどんどん景色が変わって楽しい♪」


「俺も一人だと乗る機会がないからこうして皆と出掛けるのは楽しいな」


「ゴロウが楽しいとボクも嬉しいな♪」


 そう言って彼女は楽しそうに微笑む。

 俺は運転しながら何気なく尋ねた。


「ラウラはなんで俺の隣が良かったんだ?」


「ボク、人付き合いが苦手なんだけど、何故かゴロウは話し易いんだよね」


「じゃぁ俺達、気が合うのかもな」


「ふふっ、そうかもね♪」


 思えば全員を購入した時、性格はラウラが一番まともに感じた。

 俺も話し易いしラウラとは本当に気が合うのかもしれない。



 やって来たのは〈ゴロウズ牧場〉。

 ここでは主に牛、豚、鶏を飼育している。他にも数頭だがヤギや羊、ポニーなんかもいる。


 バスを降りて俺の前に集まった皆に言う


「今日はここで一日遊ぶぞ」


「「「「「 はーい! 」」」」」


 ということで皆で牧場を堪能した。

 牛の搾乳をして、殺菌した牛乳を飲んだり。

 鶏舎で生みたて卵を回収したり。

 ヒヨコを触ったり。

 豚に餌をあげたり。

 放牧場で牛と一緒に散歩したり。

 ポニーに乗馬したりと皆楽しそうに遊んでくれた。


 昼飯は外でBBQ。

 鶏肉やソーセージ、黒毛和牛の焼肉を食べた。

 これも大好評で皆「美味しい」を連呼してモリモリ食べていた。

 俺も焼肉が美味過ぎてつい食べまくってしまった。


 食後は木陰にシートを敷いて眠い子は昼寝させた。


 日も傾きかけた頃、俺は皆を集める。


「そろそろ帰るからバスに乗ってくれ」


「えぇー!アッチもっと遊びたいッ!」

「ココノんも、もっと遊びたいの」

「ニャーは疲れたから早く帰る」


「フォン、ココノまた連れて来るから。それと皆が搾った牛乳で家に帰ったらアイスクリームを作る。明日にはできるとから楽しみにしていろ。凄く美味いぞ」


「そ、某、早く食べたいです!」

「あんたはそればっかりじゃない」


 なんだかんだ皆楽しんでくれたようで良かった。



 家に帰って皆風呂に入り、夕飯を食べて寝る時間になった。


 俺が自室で調べものをしていると、枕を持ったココノが部屋に入ってきた。


 今日も一緒に寝るんだな……。

 ココノがもう少し大きくなるまでは毎晩一緒に寝てあげよう。


 ココノが部屋に入ると続けて猫娘のタマも部屋に入ってきた。

 ん?タマも一緒に寝るのか?と思っていたら、更に続いてウィスタシアも入ってくる。


 ふえ?


「ニャーはゴロウの左で寝るねっ」


「左はココノん、寝るの」


「んー、じゃぁニャーは右ね」


「私は何処で寝ればいいんだ?」


「「うーん……」」


 なんか三人で相談しているぞ……!?

 するとココノが俺のところに来て手を引く。


「ゴロウ、横になるの」


「ん?ああ……」


 俺がベッドに仰向けになると左にココノが横になり、右にタマが転がった。


「私はどうしたら……?」

 とウィスタシア。


「ウィスタシアはゴロウの上で寝るの!」

「あ!それいいね!」

 と、ココノとタマ。


「こうか?」

 仰向けで寝る俺の上にウィスタシアはうつ伏せで寝転がる。


「完璧なの。今日はこれで寝るの」

「ニャーもいいと思う!」

「そ、そうだな。うん。私もこれで良いと思うぞ」


 いや、これじゃ俺が寝れないんだが?



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