第6話 魔族少女を買う



 次に訪れたのは女魔族が収容されている檻。俺は買いたい奴隷を指さしておっちゃん伝える。


「あの子です」


「はいよ」


 1時間ほど前、奴隷を選んでいる時に彼女を見付けた。

 その時俺は檻の隅に座るこの少女に一瞬時が止まったかのように見惚れてしまった。


 コピー用紙の様な毒々しい真っ白な肌は浮世離れしていて、妖怪の類ではないかと見紛う程。

 腰まで伸びた桜色の長い髪が、幼いくせに胸のある妖艶な体に張り付いている。


「ほら、立てるか?」


「うん」


 おっちゃんが少女を連れてきた。

 両目が潰れ半開きになったまぶたからは茶色い膿が出ている。


「こいつは両目以外は健康体でいい買い物だと思やすぜ」


 亜人は人族から人種差別を受けている。

 まぁ、そんな選民思想があるから人族は他の種族から嫌われているわけだが。


 特に人族は魔族を忌み嫌っている。故に奴隷とはいえ魔族を近くに置いておく者は少なく魔族奴隷は割安で売らる。


 それでも、この子は状態が良いから50万グランだった。今回買う奴隷の中で一番高い。


 俺は少女に木板を当てて奴隷紋に魔力を流し込んだ。

 そして話し掛ける。


「俺はゴロウ、今日からお前の主になった。お前、名前は?」


 両目の無い少女はにっこり笑って答える。


「ボクはラウラ・ステルビィア。よろしくね」


「ああ、よろしく。その目治してやるよ」


 購入を終えた俺は少女に第四位階の回復魔法を掛けた。

 購入前に治すと難癖付けられて値段を釣り上げられそうだが、購入が終わってしまえば俺の所有になるからこの子をどうするかは俺の自由だ。


「あれ?見える。ボク……どうして?目が治ったの?」


「ああ、治ったよ。綺麗な瞳だ……珍しいな」


 澄んだ空のような水色の瞳。

 ラウラはその瞳を宝石の様に輝かせて俺を見つめる。


「それ精霊眼だろ」


「精霊眼?」


 彼女はきょとんとした顔で首をコテッと横に倒した。凄い瞳なのに知らないのか?


「ボクの目、治してくれてありがとう……あ、あるじ様!」


「俺のことはゴロウでいいよ。治って良かったな、ラウラ」


「うん……諦めてたから……ボク、今凄く嬉しいよ。本当にありがとう、ゴロウ」


 とても美しい瞳だ。しかし問題はこの瞳に宿る魔力量。なんと禍々しい。


 この世界には四種類の特殊な瞳がある。魔眼、妖精眼、精霊眼、神眼である。

 後者になればなる程、宿る魔力量が多く特別な物が見える。

 ラウラの瞳の途轍もない魔力規模は勇者や魔王と同じ、つまり精霊眼だ。


 俺は鑑定魔法で彼女の瞳を鑑定した。

【天空眼:未来を見る予知の力】


 なるほど……ヤバい能力だ。


「お客さん、この目、精霊眼ってほんとなんですか?」


 ちっ、余計なことを言っちまったな。


「……さぁ?俺そんこと言ったかな?聞き流してください」


「うちでも魔眼を持つ奴隷は扱ってますが、最低5000万からですぜ。妖精眼は過去に一度入荷して2億で売れたって話です。精霊眼だったら国宝級ですよ」


 未来視の能力をこの国の国王……、ヤツが所有したら計画的に侵略戦争するだろうな。

 こうしたら負けるとか、ここを改善すれば勝てるといった感じで未来を見ながら戦争計画を立てられる。

 確かにこの瞳は国宝級だ。


「ははは……、じゃ、次の奴隷のところにいきましょう。ラウラも付いて来て」


「うん♪」


「ちょっと、お客さん待ってくださいよ」


 俺はラウラを連れて次の奴隷の所へ向かった。

 さっき買った狐少女とエルフは店に預けているが、ラウラは健康だし連れて行く。

 つか、店に預けたら間違いなく良からぬことをするだろう。



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