ダンジョン裁判!法治国家の規律と秩序を守る為、今日も私の拳は血に染まる。

山親爺大将

第1話 その乱闘意義あり

 世はまさにダンジョン時代、隆盛を極め探索者が時代を謳歌していた。

 そんな時代の流行語大賞にこんな言葉が選ばれた。

『探索者には探索者の流儀があるんだよ』


 一般的な法律では犯罪行為であっても、ダンジョン内の探索者同士では問題にすらならない。

 そんな事が社会現象になっていくなかで、有識者から疑問の声が上がった。

 司法の手が及ばない案件がある事は法治国家としてどうなのかと、先進国としてどなのかと。


 政治家に言わせれば、個人で軍に匹敵するほどの武力を持った奴らを刺激して暴動でも起こされては政権運営に支障が出てしまう。

 これが原因で政権交代なんて冗談じゃない。


 そんな玉虫色の会議の結果、施行されたのが『ダンジョン迷惑防止条例』。


 通称『ダンジョン法』である!


 ー札幌第4『手稲区』ダンジョン受付センター ー


「あのう、探索者登録したいんですが」

 オーバーオールにハンティング風の帽子、小柄で大きなメガネをかけた少年がダンジョンの受付を行う。


「年齢確認よろしいですか?」

「コレで良いですか?」

 受付にマイナンバーカードを渡す。


「マイナンバーカードでしたらこのまま探索者登録出来ますが行いますか?」

「はい、お願いします」


「適正ではテイマーがSSSになっておりますが、テイマーでよろしいですか?」

「はい、お願いします」


「……適正検査時に説明を受けていると思いますが、テイマーでよろしいですか?」

「はい、お…」


「おいおいおい、テイマーなんてなるもんじゃねぇぞ、悪い事は言わねぇ他のにしておきな」

 厳つい体格が良く、ガラの悪いオッサンが口を出してきた。

 赤ら顔で酒臭い。


「いえ、テイマーになりたいんです」

 まだ声変わりもしてないような声で必死に主張する。


「お前もわかんねー奴だなぁ、いいから俺の言う事聞いて他の職業にしろって言ってんだろうが!」

 酔いもあるせいか、どんどん語気が強くなる。


「いや、でも…」


「てめぇ!人が親切に教えてやってるのに何だその態度わぁぁ!」

「ヒィッ」

 酔っ払いは今にも殴りかかりそうな態度を取った。


「待ちたまえ!」

 高らかに声をかけたのは、真っ白なスーツの上下に黒いシャツ、白いボルサリーノの帽子を被った高身長な超絶二枚目の男だった。


 座っていた椅子から颯爽と立ち上がり二人に近づいた。


「君の行動はダンジョン迷惑防止条例に抵触す…あ、ちょっと待ちたまえ」

 そういうと自身にスマホで何かを検索する。


「失礼、ダンジョン迷惑防止条例は特殊でね、各条項をダンジョン毎に好きな範囲で選んで適用出来るんだ。

 その為非常に煩雑でね、うん、このダンジョンでは口論では条例に違反しないね。

 存分に言い争いしてくれたまえ」


 そういうと颯爽と元の椅子まで戻り座ってにこやかに二人を見ていた。


「えぇぇぇ!今に流れって助けてくれる流れじゃ無いんですか!」

 少年が驚きの声をあげた。


「君が救助依頼を出してくれるなら、ダンジョン迷惑防止条例における緊急的措置で助けることも可能では有るけど、依頼料をいただくよ?」

「えええ!お金取るんですか!」


「もちろんだとも!」

 彼は爽やかな笑みでハッキリとお金を請求して来た。


「わかりました!払いますんで助けてください!」

「ダンジョン弁護人成神法一、その依頼承りました」

 とても綺麗な所作でまるで執事のような礼をした。


「おいおいおい、なに勝手に人の話に割り込んできやがってんだぁ?あぁ!」

「おーこれはすまない、私は彼の弁護人を引き受けた、成神法一というものだ以後お見知り置きを」

 そう言ってにこやかに手を出す。


「なんだ、この手は?」

「もちろん握手するためさ」

 涼しげな表情でニコリと笑う。


「てめぇ、舐めてるなら痛い目見るぞ」

 そう言った瞬間、法一の顔面に殴りかかった。


 その拳をニコニコしながら掌で受け止めた。


「そうか、君はこういう握手をするタイプか、実にいい」

 そのまま拳を掌で包み込むように握る。


「ヒィ、ヒィ」

 掴まれた拳を必死に離そうとしてもがき出す。


「話し合いなんて野蛮な手段より、暴力で穏便に解決する姿勢はとても共感できるな」

「やめろ、やめてくれ!悪かった!やめてくれぇぇぇ!」


 ゴキッと鈍い音がする。


「おおっとすまない、少々行きすぎた。

 これで勘弁してくれたまえ」


 拳を抑えてうずくまっている男に回復魔法をかける。


「職業的なものではなく、市販の魔法スキルなので効果は低くて申し訳ないが、それくらいの怪我なら充分なはずなので問題はないと思うんだがどうかな?」


「すまねぇ、許してくれぇ、すまねぇぇ」

「穏便にすませてもらえるかな?」

 小刻みに震えているような速さで男は頷く。


「示談という事でよろしいかな?」

「……」

「よろしいかな?」

「は、はいぃぃぃ」


「ふむ、無事示談出来たので、これで依頼完了ということでよろしいか?」

「え!あ、はい」


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 長編も書いているので良ければ見てください!

 https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826


 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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2024年12月3日 00:01
2024年12月5日 00:01
2024年12月7日 00:01

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