第72話 止まらないもの
第1433世界の4人組との戦闘も無事終わり、少しばかり反省会を開く。
「……何というかお前の時間停止って相手のスキル発動防げないのか?」
「オートというか、パッシブなら無理だね。
というか前にシュヴァルツさんと一緒に検証したと思うんだけど?」
「何をだ?」
「エレベーターの謎の膜。
あれ時間停止しても通り抜けようとする人を弾いていたから、時間停止が通用しない範囲というのはあれで確実にあると思ったよ」
そこで触れられた、時間停止にならない範囲について。シュヴァルツさんと会ったばかりの頃、90階に行こうとして時間停止だけでは謎のシールドに弾かれていたんだけど、その存在のお陰で時間停止に干渉してくる存在がいるとは思っていた。
そしてとうとう、第1433世界には合計で3人。時間停止中でもスキルを発動してくる存在が現れた。ここから考えられるのは、時間停止中でもスキルの発動は可能ということ。特に固有スキルは防げないんだろうね。
これは個人的な考えなんだけど、時間停止の際に起こり得る不都合なことを取り除いた影響じゃないかな。もしステータスやスキルがシステム的なもので動いているのであれば、そのシステム自体が時間停止によって止まってしまう。そうなると自分もスキルを使えなくなるから、システム自体は動かすしかない。
とすると、オートで発動するタイプのスキルは時間停止中でも本人の意思とは関係なく動くって感じかな。これで気を付けないといけないのは、自動でダメージを反射するタイプのスキルや自動で反撃するタイプのスキル。
……何というか、この世界がいよいよゲームの中だと実感してしまえるね。
「自動で反射や反撃をするスキルはありそうで嫌だな。
まあお前のところに偽装を破って鑑定出来る存在がいるから大丈夫だとは思うが」
「エレーナさん、最初は不憫だと思ったらいつの間にか必須の存在になってたからね。最近は年齢が見えるようになったから本当に便利」
情報共有ができたところで、初代皇帝様から連絡が入るけど第1425世界が第1433世界へ侵攻して来ていたのは事実のようで、既に第1425世界が400階に辿り着いているのは真実だった。そういえばこの世界、嘘発見器があるんだった。嘘から真実を見抜くことも出来るだろうし、無言は肯定と見なすとか色々と条件を付けて質問を繰り返せば、嘘発見器のお陰で欲しい情報は集まるだろうね。
……500階で第1425世界が壊滅的打撃を受けたことも事実のようで、下手したら500階の相対世界がヤバい可能性も出て来た。順当に行けば32n+1の第1409世界が相手なんだけど、500階は複数の世界と繋がるという情報もあるので順当に行くかは分からないかな。
『第1433世界は最初の2人と次の4人の計6人が侵攻役でしばらくはおかわりがないことは確認したよ』
『じゃあ250階辺りまでは進めて良いか?通知での連絡は219階まで入らないようになったし押し上げて良いだろ?
あと第1438世界は洗脳や魅了持ちっていないのか?』
『魅了はいるけどこの高レベル冒険者を魅了は無理だね。
……しかもそいつ、男だから女性しか誘惑出来ない』
タブレットで、初代皇帝様とシュヴァルツさんがやり取りしているけど離れた場所で会話ができるのは本当に便利。前線はこの後で250階まで押し上げるようだけど、それ以降の探索はかなり神経使わないといけなさそうだね。
『カリンは今日宿戻って良いけどその前に220階寄ってくれる?』
しばらく侵攻がないと判明したので、宿で寝て良いよという初代皇帝様だけど、帰る際に220階へ寄るよう呼び出しを食らう。そして220階へ行くと、初代皇帝様が時間停止を使うようにハンドサインを出したので時間停止。
「この情報は記録が残ると嫌だから確実に盗聴がない方法で伝えておくよ。
……第1433世界から第1436世界に時間停止を使えるような存在はいないってさ」
「……ということは、敵なし?」
「主力級は300レべから300レべを少し超えた辺りのようだから、単独で戦うのはオススメしないけど1対1で負ける存在はいないはずだよ」
どうやら、時間停止に対抗できる面子というのはそんなにいないらしい。第1433世界の主力級で判明しているのはレベルが下の相手からのダメージを1/10にする『超人』の人と、新しく判明した『触手』の2人。……なんかどんどん情報を得られるのは良いんだけどどうやって情報収集しているのかは気になる。拷問してるにしても、痛みとかこの世界ないよね?
……あ、快感ならあるんだ。ということは、最初に捕らえられた人が情報吐き出しマシンになったの、快楽に負けたの?なんというか、尋問は任せてくれと言った時、自信に満ち溢れた顔になっていた理由が今になってわかった気がする。なんというか、拷問用のテントには近づきたくなくなったね。
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