第7話 転職

この世界の転職はわりと一般的で、コロコロ職を変える人もいるそうだけど、転職した後に再度転職をしようとすると、インターバルに半年前後という時間が必要らしい。インターバルが必要ないパターンは、50レべ以上までレベリングをした時だけだね。だからまあ、慎重に選択する必要もあるんだけど……とりあえずフィルスちゃんは遊び人。職業一覧を見た時から決めてました。


転職の方法は、神殿で神様に祈りを捧げ、会話しながら決めるらしい。この時に現れる神様は人によって違うそうで、自分が祈ったら異世界に送ってくれたあの爺さんが現れそう。


「こちらが儀式の間です」


案内されて入った空間は、神殿の奥で神様っぽい像が幾つかあるけど老若男女様々だ。というか神様の像多いね!?あと自分が会った爺さんは居なかったから、祈ってあの爺さんが現れるかは微妙。……最終的に転職しない選択肢も取れるみたいだし、自分も祈ってみるか。


片膝付いて祈るのかと思ったら、椅子を用意されてそこに座る自分とフィルスちゃん。座りながら祈るのがこの世界の文化かあと思いながら、後は神父っぽい人の指示に従い両手を顔の前で組み合わせて祈ると、ふっと意識が遠くなる。


そして目の前には、例の爺さんがいた。おお、こんなに簡単に会えるんだ。ちゃぶ台もそのままあるし、爺さん暇そうに漫画読んでるよ。


「……剣聖はめちゃくちゃ優遇職なのじゃが転職したくなったのかの?」

「いやこの世界の仕組みを知るために一度試しただけです。転職しないことも出来るんですよね?あと現状転職出来る職に何があるか教えてください」

「剣聖に辿り着くには剣士、剣客、剣豪をレベル100にしないといけないのじゃがおぬしの場合は全部レベル1のまま剣聖になっておる。

一応村人も選択できるのじゃが、剣聖に再度転職するには必要条件を満たさぬと無理じゃぞ」

「ああ……じゃあ転職はしないです」


自分が転職する場合は、基本となる村人と剣士、剣客、剣豪を選択できるらしい。一応、少しだけ転職前のステータスというのは引き継がれるから転職しまくるのがこの世界の正解っぽいけど、剣聖に戻る労力を考えたら転職しない方が良さげだね。


「ちなみに、神様の名前って何ですか?」

「……おぬしが熱心に祈り続けていれば、いずれ信仰がスキルに追加される。その時に神の名前も表示されるからそこで分かるじゃろ。あと転職しないと決めたのじゃから帰れ」

「うわ!?」


神様との会話を続けようとしたら、神様の手がピカッと光って思わず目を閉じると、単に目を閉じているだけという感覚に戻る。


そのまま目を開けると、元の神殿の奥の部屋に戻っていた。フィルスちゃんの転職も終わったみたいで、ステータスが大分変っている。


【ステータス】

名前:フィルス

職業:遊び人

レベル:1

HP:16/16(3)

MP:4/4(1)

攻撃力:5(3)+1

防御力:5(2)+1

魔法攻撃力:5(1)

魔法回復力:5(1)

魔法防御力:5(1)

命中:5(2)+10

回避:5(3)+10

技力:5(2)

敏捷:5(3)

フリーポイント:3

スキル:『病弱』『信仰(タナトス)』『タナトスの加護(極小)』


まず村人で上昇したステータスの上昇値分が1/10なってるから、これが転職時の引き継ぎって奴かな。積み重ねれば結構なステータスになりそう。フリーポイントは全部HPに突っ込ませていたはずなんだけど、還元されて1/10になってるね。


遊び人の上昇値は、結構低いというか村人を除けばほぼ最下位クラス。これで隠しステータスであるという幸運が伸びないなら戦うのはまだまだ苦労しそうだ。


……そんでもって、信仰と加護のスキルが追加されてるね。自分には何もないのに何でフィルスちゃんはあるんだろう?あとタナトスって名前だけは何か見た事ある気がするんだけど、何の神様だっけ?


当のフィルスちゃんに聞いてみると、思い出したくないのかめっちゃガクガク震えていたので怖い神様だったのかな。ただ命中と回避に+10があるので、これが加護の効果っぽい。極小でも何かしら与えてくれるのは良い神様だ。


フィルスちゃんの転職が終わったので、神殿の奥の部屋から出ようとすると1人部屋に入ってくる。この人も転職するのかな?って思ったら自分を指差すなり「みいつけた!」と言って来たから転移者or転生者かな?背は自分と同じぐらいで、顔立ちは中性的だけど胸が結構あるから女性だね。


「いやあ、やっぱり僕は運が良いね。まさか神殿で会えるとは思わなかったよ」

「……どちらさん?」

「君と同郷だよ。新しく異世界人が来たと聞いて、探してたんだ。しかも女性の転移者はかなり珍しいから、お友達になれないかなって。

……待って、時止めって何?あとステータス強すぎない?」


人のステータスを勝手に見るには、スキルに鑑定がある人か鑑定士しか出来ないはずだからこの女性はそのどちらかかな?何というか、自分の手札が全部見られるのは非常に嫌だね。


向こうは拳銃を持っているから、それがメインウェポンかな?とりあえずその拳銃を時止めで奪って、観察してみる。ふむ、弾倉は8発か。銃の名前とかはよく分からないけど、西部劇とかで出てきそうな拳銃だ。

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