第3話 金
この世界のお金の単位が円だったことにはびっくりしたけど、そもそもよく考えたら喋っている言語が日本語じゃない。ということは勝手に翻訳されているのかなこれ。まあ神様みたいな存在に女の子にされたし、言語インストールされていてもおかしくはないというかこの言語インストールがなかったら異世界人と言葉のやりとりすら出来なかったから感謝しかない。
あの後は詰め所から解放され、ついでに冒険者ギルドの位置まで教えてもらった。……やっぱりあるよね冒険者ギルド。どうやら例の初代国王が作ったようだけど、まあ国が運営する日雇い型派遣事業だと考えれば納得できる。中抜き結構してそうだし、あれば便利な気がする冒険者ギルド。
その冒険者ギルドに熊さんを背負って入ると何だあいつみたいな顔をされるけど持ち運ぶ方法がこれしかなかったんだから仕方ないでしょ。とりあえず肉が売れるか聞いてみる。
「あのすいません、これの肉って売れますか?」
「売れますが……アイテムバッグはお持ちじゃないんですか?」
「持ってないです」
どうやらアイテムバッグなるものが普及しているみたいだから、こんな大荷物を背負って運ぶ必要はないのか。道理で道行く人々は小さなカバン1つしか持ってないわけだ。たぶん物理法則が助走つけてぶん殴ってくるレベルの摩訶不思議バッグがあるのだろう。しかも庶民が気軽に買える値段で。
あのあとで熊さんが全部諸々含めて5万円で売れたので手持ちは15万円となった。熊さん狩るの結構金策に良さそうだけど、熊肉って美味しいのかな。
「冒険者ギルドに登録する場合、異世界人であるカリン様はBCランクからスタートとなります」
「BC?」
「ビッグベアーの単独討伐が可能なことから、戦闘力のランクはBランク、異世界人は冒険者ギルドからの信頼度がCランクから始まりますので、BCランクというわけです」
「はえー。戦闘力とギルドからのランクが分かれてるんだ。まあそっちの方が効率的だよね」
そしていよいよ念願の冒険者ギルドへの登録が始まり、スタートはBCランクと言われるけど戦闘力と評価で分けて考えてるのかこの世界。まああの異世界人専用のマニュアル本すら作った初代国王が単調なランクシステムを作るとは思ってなかったけど、これかなり合理的じゃない?
戦闘が出来なくてもちゃんと依頼をこなしていけば信頼ランク自体は上がるみたいだし、戦闘力と切り離していることで登録したばかりの冒険者でも戦闘力は〇ランクと上位の依頼を受けられる。
あと異世界人が何で優遇されているか聞いたら「四則演算が可能で大半が高等教育を受けているから」だった。まあ自分も一応高校は卒業しているから、異世界人基準だと高等な教育を受けていることになるのかな。
思っていた以上に発展していた異世界。魔力で動く鉄道まであるみたいだから相当便利な生活は出来るそう。
「何か魔物を狩る依頼とかあります?」
「……ソロの人に依頼する内容ではないのですが、ビッグベアーを倒せるのであればウルフ狩りが効率良いと思います」
「あー、ビッグベアーの内臓あげた狼達?1匹殺したけど死体は放置しちゃってたや」
都合が良い依頼がないか受付のお姉さんに聞くと、ウルフ狩りが今は稼ぎが良いようで、1体倒す毎に報奨金を2万円ほど受け取れるらしい。死体は丸ごと持って帰れば8万円で買い取られるそうだから、合計で10万円。熊さんの2倍もお金を貰える。
だからといって、熊さんが弱いというわけじゃないんだよね。どちらかというと、人間視点でウルフが厄介&素材として優秀だから高く買い取られている感じかな。お肉はビッグベアーよりウルフの方が美味しいらしいし。自分は犬肉も熊肉も食べたことないけど。
ウルフ狩りなら依頼を受けてから討伐じゃなくて、討伐してから依頼達成報告で良いみたいなのでそのまま冒険者ギルドを出た後はアイテムバッグとやらを入手するために雑貨屋みたいなところを探す。冒険者ギルドで聞いてからの方が良かったかなと思いつつ、大通りを歩いていると明らかに冒険者用の道具を売っている店があったので突入。
「いらっしゃい。初めて見る顔だね。冒険者になりたてかい?」
「そんなところです。
アイテムバッグってありますか?」
「どれぐらいのサイズが良いんだい?」
「ウルフが10匹ぐらい入る奴でお願いします」
「……丸ごと10匹はちょっと値が張るよ」
おばさん店員が一人で切り盛りしている雰囲気のお店だったので、入店と同時に声をかけられてびっくりするけど結構親切そうなおばさんだ。アイテムバッグを買う意思を伝えると、アイテムバッグが並んでいるところに案内されるけど5万から10万円が一般的なのかな。
……これ物流どうなってるんだろ。間違いなくアイテムバッグを利用して大量に物の行き来はしているだろうし、街行く人々の様子を見てもかなり豊かに感じた。ウルフ10体分が入る大きさのアイテムバッグは10万円するそうだけど、安すぎるぐらいだ。
後は小さなナイフと魔物の解体方法が載っている本を入手して、アイテムバッグのように魔法がかかっている水筒も手に入れた。中に入っている物の温度が変わらないから、あったかいスープを入れればずっと温かいままだし、冷たい水を入れればずっと冷たいまま。
……この街はこの国で5番目に大きな街らしいけど、上下水道が完備されてるし先輩達内政し過ぎでしょ。まあストレスフリーに冒険者稼業が出来ると考えて、今は異世界を楽しもう。
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