当たりスキルと優遇職で無双します!

インスタント脳味噌汁

プロローグ

「最近の『外れスキル』と呼ばれるもの、大抵当たりのような気がするのじゃが」

「分かる。分かります。というかなろう小説なら『右手からウンコを出す能力』でも農業で活躍したり守城戦とかで大活躍します」

「無から有を出す能力が強すぎるんじゃよなぁ……。『オナラの音が2倍になる能力』ぐらい外れにしないとどうあっても活躍してしまう」

「うんうん……え、いやですよ『オナラの音が2倍になる能力』とか」

「何度も言うておるが儂はそんな嫌らしい神ではないぞ」


真っ白な空間にちゃぶ台を挟んで神を名乗る爺さんとお決まりの対談をしていたら爺さんがなろう小説の外れスキル系小説に真っ向から喧嘩を売っていた。どうやら最近の『外れスキルを駆使して大活躍する系』テンプレに飽き飽きしているらしいが、それで当たりスキルを与えるってもう一周回っているような気がするな?


「当たりスキル、要らんのか?」

「欲しいです。スキルを作るスキル辺りでお願いします」

「与えられるスキルは1個までじゃし、その数を増やすようなスキルは駄目じゃ。だからその万物創造系のチートスキルも無理じゃ」


そして神様は、本人の望むスキルを与えればそれは『当たりスキル』みたいな持論を展開している。遥か昔、何でも3個願いを叶えて貰える系転生じゃん。『魔力SSS』『鍛えれば鍛えるだけ成長するチート』『王家の財宝』の転生3種の神器を望める奴じゃん。マジで一周回ってるじゃん。


ただ、残念ながら3個もスキルは与えられないようで1個だけと制限を受ける。いやそれでも十分にありがたい話だけど。これ、何を望もう?


「うーん……確認ですけどスキルの細かい調整は可能ですか?例えば火を出せる能力を望んだとして、後からその火の温度は○○℃とか自分は触っても熱くないとかパーティーメンバーは燃えないとか」

「その辺の融通はするが、それでスキルの性質が大きく変わるものは駄目じゃ」

「……転生する先の世界は現代日本に近い世界ですか?中世ヨーロッパ風の世界ですか?名状しがたき何かが蠢いている世界ですか?そこら辺が分からないと『当たりスキル』を決めるの難しいです」

「まあ現代日本に近いなら『豪運』とかが最適解になりそうじゃし伝えておくとするか。

中世ヨーロッパ風の世界じゃ。レベルの存在やステータスの概念があり、冒険者ギルドや奴隷制度もある極めて一般的なナーロッパ世界じゃ」

「……知的財産権の概念はありますか?」

「特許制度が存在しているぞ」


神様に転生先の世界について説明を受けるが、かなり都合の良さそうな世界なので最悪スキルを貰えなくても何とかなりそうな気すらする。


「レベル概念があって上限がないなら経験値9999グーゴルプレックスプレックスプレックス倍とか当たりスキルっぽいですよ」

「レベル上限はないが、流石に神の概念すらすぐに超えそうなのはNGじゃ。というかよくそんなにポンポンとえげつないスキルの案を出せるの」

「……じゃあ純粋に時間停止でお願いします。使用制限なし、時間停止中の寿命減少なし、任意で時間停止にならない範囲を決めれるタイプの時間停止で」

「うむ。時間停止ほど分かりやすいチートはないの。間違いなく『当たりスキル』じゃ」

「あと時間停止を使った瞬間空気も停止して呼吸できなくなるとか、光も静止しているから暗闇になって何も見えなくなるとか、時間停止の際に起こり得る不都合なことは全て取り除いて下さい」

「……うむ。そこまで神を疑わなくても良い。時間停止中に動いただけで衝撃波が発生するようなことも起きぬから安心しろ」


必死に考えた末に辿り着いたのは、時間停止だった。いやまあこれ以上のチートはそんなにないでしょ。スキルを作るスキルや創造系のチートは駄目と言われら、大半は時間停止か豪運辺りに辿り着くと思う。


貰えるスキルを決めたので、早速転生かと思ったら神様が「次じゃ」と言って今度は職業を選ばせようとしてくる。どうやら転生先の世界は神様が職業を決められるそうなので、ここで決めてしまおうということだろう。


「最近の『不遇職』と呼ばれるもの、大抵当たりのような気がするのじゃが」

「再放送になってません?というか職業まで選ばせてくれるのってマジですか。錬金術師とかありますか?」

「一応存在しておるが、金は作れない上にステータスが上がりにくく戦闘では弱いので不遇職じゃ。魔力消費も激しいのでの」

「うーん、それなら微妙?あ、そう言えば幼少期の魔力トレーニングって効果あります?」

「あるにはあるが、魔力が無限大に増えて行くほどではない。筋トレと似たようなものじゃな」

「そっかー……。

……どんな職業があるのか見せて貰えますか?」


神様に職業リスト一覧を要求すると、色んな職業のステータスや獲得スキルについてが書かれた紙束を受け取る。ここが天界なのか天国なのか分からないけど、まだペーパレス化してないんですね……。


「あの……こういうのって時間がないからさっさと転生!みたいな流れにはならないんですか?」

「神に時間の概念があるわけなかろう。大事な職業選択だし、数十年数百年と悩んで良いぞ」

「そこまで慎重になれる性格でもないので……じゃあ、この剣聖にします。ステータス的には魔法攻撃以外最強ですよね?スキルも何か強いことしか書いてないし」

「万能型なら勇者一択じゃが、近接戦闘なら剣聖一択じゃの。それでは転生させるが、家族環境の希望はあるか?」

「転生じゃなくて転移っていうのは駄目ですか?それと…………」

「うむ。その程度の調整は容易い。遠慮がないのは良きことじゃ」


希望条件が整うと、光に包まれていく感覚を味わう。……ずっと裏がないか警戒していたけど、よく考えたらあの神にその考えは筒抜けだったわけで、それでも嫌な顔せず対応してくれたのは感謝しかない。


いやでも、まだ落とされる可能性はあるから警戒はし続けるけど。昨今のオタクは上げては落とされる展開を嫌というほど見ているので、極力期待という行為をせずに、心の傷を増やさないよう生きる生き物なのだ。

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