第13話 夜道の涙。

 

 それから家に車を置くと、スーパーに行って一緒に買い物して。一つの大きな袋の持ち手を2人で一つずつ持って帰る。


 帰り道、歩きながらまひるが言う。


 「ね。わたしたちって、みんなからどういう風に見えるのかなぁ?」


 「さぁね。夫婦かカップルか。お前、おにいちゃんって言うから、兄妹かもね。つか、2人で袋持って歩いてたら、恋人に見えない方がおかしいよね」


 すると、まひるは口を尖らせて、頬をぷーっとする。


 「ばか。おにいちゃんのバカ!!」


 ほんと、口の悪い奴隷だな。


 「あ、そういえばさ。女子大生って、普通にパパ活とかしてるの? まひるもエッチなれてるし、そういうのしてるとか?」


 ちょっとした不信感で聞いてしまったのだけれど、直後に後悔することになった。



 まひるは急に立ち止まると、うつむいて肩を震わせた。そして、手を拳のように握りしめ、ポロポロと涙を流して泣き出したのだ。


 おれは、まひるがこんなことで泣いてしまうなんて思ってなくて、どうしていいか分からなくなってしまう。


 「いや、ごめん。あの、変なこと聞いちゃって」


 「いいもん。ああいうところで知り合ったから、そう思われても仕方ないもんね。でも、わたしもそう思われてたのかと思うと、悲しくて……」


 誰だよ。

 復讐とかいってた馬鹿は。


 まひるの涙をみたら、胸が押しつぶされそうに苦しくて、頭の中は後悔でいっぱいになって、泣きたくなってきた。


 「いや、そういう意味じゃなくてだな」


 まひるの声が大きくなる。


 「あのね。信じてもらえないかも知れないけれど、わたし、あなたに会う前に、1人しか経験なかったよ。今だって、他の人としてないし、したくない。中にたくさん欲しいのだって、あなたのだからだよ。あなたといると楽しいしホッとするの。わたしはここに居ていいんだって」


 その口元は少し震えているようだった。

 まひるは一呼吸おくと、トーンを落として言葉を続けた。


 「わたし、ナギくんとしかしないもん……」


 直後、まひるが口を押さえて言い直す。


 「あっ、ウナギくんのことね。おにいちゃんが変なニックネーム使うから、名前間違えちゃったじゃん」


 こいつ、幼馴染だって気づいてるのか?

 それで、俺にこんなに優しいのか?


 ……いや、そんなわけない。


 こいつは裏切り者で、中学生の俺をどん底に落としたひどい女なんだ。


 キモい俺とセックスなんてしないだろう。

 だから、そんなハズはない。


 まひるは、不安そうに手を腰のあたりで組み合わせて、所在なさげに何度も握り合わせると、見上げるように俺の顔をのぞく。


 「わたしのこと、遊んでる子で不潔に思う? イヤになっちゃった?」


 俺は大袈裟に眉をあげ、努めておちゃらけてみせる。


 「いやぁ、信じるよ。まひる、初対面のとき色スポーツブラだったし。最近はセクシーな下着も増えてきたみたいだけどな」


 すると、まひるは顔を真っ赤にする。

 怒ってるのか、恥ずかしいのか。はっきりしてほしい。


 まひるは口をぷくーって膨らませて。

 俺の肩のあたりを猫のようにポカポカと叩いた。


 そして、可愛らしい声で俺を非難した。


 「ばかっ」


 


 


 

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