第157話 デバウラーの猛攻

「くっ……全員固まって防げ。防御を厚くするんだ! 俺は黒い塊を撃ち落とす!」

「はい!」

「やってるわよ!!!」


デバウラーが攻撃を開始すると、凄まじい数の黒い塊と魔法が間断なく飛んでくる。

黒い塊はきっとデバウラーだ。それは俺の"断罪"やフランが"剣"で叩き落とす。


やっかいなのは魔法で、どれも素直に真っすぐは飛んでこない。野球の変化球みたいに上下左右にそれぞれ動くし、速度も違う。属性もばらばらで厄介なことこの上ない。


しかも軍団系スキル維持のために皇ちゃんと夢乃を守る必要がある。

その合間を縫ってたまに魔法を撃ち込んでみるが、散発では効果がない。



「ふふふ。神の子の力なんか効かないよ? 僕を倒した蹴れば神を連れてこい。なぁ、そうだろ?」

誰に話しかけてる?


:これやばいな……

:竜司が強いとか、これフェイクなんじゃね?

:それはないだろ

:むかつくなあの笑顔。吐き気しかしない。


「ほらほら。これはどう?」

突然巨大な魔法の球体を出してきた。本当はそっちに注目すべきなんだろうが、竜司の姿で目を見開いてうっとりとした表情で喋ってるせいで気持ち悪さで集中しづらい。


しかしその攻撃を食らったらまずい。むしろこの島ごと消し去りそうな魔力を込めるんじゃない。

避けることもできず、両手に魔力を纏わせ、なんとかバレーボールのレシーブのような形で海に逸らした。


:リッチ様ないす!

:でも、リッチ様の腕が!?

:まじかよ。あれそんな攻撃力なんか

:とんでもない水しぶき上がってんだけど、やばぁ……

:くそっ、なにかできないか……なにか

:リッチ様で勝てないとか、他に勝てる奴いないだろ?

:崩れ落ちる前の最後のランキングボードで世界一位だったんだぞ?

:リッチ様ファイト!!!

:ここぞとばかりにアンチ湧きそうだけど、アンチくん出て来なくなったな

:通報しました

:グッジョブ!


くそっ、あの魔法で両腕持っていかれた。反転魔法も応用して手に纏わせていたのに貫かれた。

軽く放った魔法なのになんて威力だ。


「デーモンヒール!」

「サンキュー、レファ」

しかし、そんな傷もレファが一瞬で治してくれた。

さすが元魔王さまなだけあって、異世界に行った間に『お前本当に人間なのか?』ってくらいの魔族専用とか対魔物系の魔法を覚えた。助かる。


「なるほど。これが人間の戦い方ね。群れられるとやっかいだね」

「普段群れまくってるやつがなに言ってるんだよ。かゆくなるぞ?」

「?」

:リッチ様。きっと通じてなくて草

:ほらみんな、笑うとこだよ?

:?

:群れると蒸れるをかけたんだよ。リッチ様蒸れたりしないだろうに

:なるほど。みんな笑え! 笑うんだ!

:せーのっ!

:あっはっはっはっは


うるせえよ!!!!!!


「僕らにとってはエネルギーは餌だからね。どこまで抗えるかやってみるといいよ」

くっ、そういうことか。


魔力を喰らってくる外殻……そんな感じの怪しい光に包まれた魔法はとても対処しづらい。

思い返せば、アンノウンがまとってた殲滅の光はこれに近い原理なんだろうな。

っていうか、アンノウン自体が増殖機能がないデバウラーみたいだな……。どうでもいいけど。


あの光を消すのに"断罪"が必要だけど、包まれてる魔法の対処も同時にしなければならないとか、なかなか厳しい。


「対応速度も速い……すごいね、君。さすが、迷宮神に挑もうと思うだけのことはある」

:偉そうに……誰だと思ってんだ!?

:リッチ様だぞ!!!?

:なんでお前らが偉そうなんだよ

:負けるなリッチ様!!!


「ふふふ。ただ、これくらいで限界っぽいね」

「!?」

やつの周囲に無数の球体が展開される。何個あるんだよ。やべぇな……あの数同時に対処するのは無理だ。


「散々貯め込んだからエネルギーは有り余ってるんだよね。ほら、助けないとヤバいよ? 喰らえ!」

さっきから誰に向かって喋ってる。なんて突っ込む余裕もない。後ろにいる皇ちゃんや早紀、戦女神に探索者たちのことを考えたら、俺に避ける選択肢はない。


「"断罪の壁"」

「"魔法障壁"」


とっさに周囲にみんなを守るように"断罪"を加工して障壁を作り、障壁を貼る。

早紀や詩織も魔法障壁は張ってくれたようだが、突っ込んできたデバウラーの魔法でどんどん食い破られて行く。


くそっ……。


「"魔断空壁"」

白いお守と自分の左腕を生贄に捧げて切り札の一枚をきる。切り札と言っても敵を倒すためのじゃなくて、意表を突いたりするためだけのものだが……。


その魔法で攻撃を止めたものの、威力を殺しきれずにダメージを受けた。なんとかその程度で済ませた。


「空間を断って防いだのか。それでも威力は殺しきれなかったみたいだけど、まぁ無駄だよ。次々に行くからね」

「くっ」

:やべぇ……

:竜司のくせになんなんだよ

:いや、絶対に竜司じゃないだろ。Sランクとかそんなレベルじゃないぞ?

:まずいまずいまずいまずい


そして断った空間を乗り越えて次が飛んで来る。

さらにその次を準備しているのも見える。

くそっ……





しかしその攻撃がこちらに届くことはなかった。

白いお守が輝いた気がした……。





「間に合ったようじゃの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る