第150話 作戦決定!

「フラン。"剣"と話せるだろうか?」

「あぁ、呼んでみる」

フランが剣を撫でると、相変わらずクソ真面目な声音が耳に聞こえて来た。


『呼んだか、ヴェルト?』

「あぁ。お前、転生説明神様とオアに生み出された剣だったんだな」

『そうなのか?』

つい、この前見て来た余計な知識をひけらかしてしまったが、どうやら"剣"は認識していないようだった。

覚えてないだけかもしれないが。

なにせ10万年前だ。


「神の力で異世界の10万年前の世界に行ってきたんだけど、そこでお前の誕生に立ち会ったんだ」

『ほう……それでお前に親近感を感じたのだろうか? 執着に近い感覚もあったのだが』

いや、そんなことはないんじゃないか?

そんなことになるようなエピソードはなかったはずだ。

せいぜいオアに絡まれたのと、説明神様には感謝しかない。


この"剣"を振っていたのは説明神様とファナだし、俺、関係なくないか?


「俺は見ていただけで、実際使ってないからそれは違うんじゃないか? まぁ、意見は出したが」

『ふむ……』

「それで、お前、今どれくらい魔力を貯めてるんだ? 過去ではお前を使って神とデバウラーを分断したんだが」

説明神様曰く、あれよりも強力になっているはずだということだが。


『それほどの力があるのだろうか? 確かに、かなり前だが、他の聖具の力を移されて強化されたことがあった。あれは確か、世界を滅ぼしかけた隕石型のモンスターを斬り倒すためだったはずだ』

「はっ?」

それはそれは偉い体験をしていたんだな。

なんだそれ?

直接的な世界崩壊危機じゃねーか。

やばっ。


しかし、かなりのヒントだな。

そうか、聖具を集めて力を移すなんてことができるのか。


「その力を移す方法はわかるか?」

『確か杯に一度魔力を集めて映していたはずだ』

なるほど。それならわかるかもしれない。


「お父さん。杯は喋れないけど、頭に話しかけてくるので今から伝えますね」

「あぁ、ありがとう」

「普段モンスター相手にやってるのと同じように、杯に魔力を込めて"剣"に渡すことができます。これは魔族が研究の末に生み出した方法です。聖具だけではなく、高位のモンスターなどの魔力も一緒に移せます、だって」

「おぉ」

素晴らしいな。

それなら迷宮神のもとに辿り着いたやつら全員で魔力を集めることができるかもしれない。


「出番だぞ、レファ」


「へっ? なんで?」

突然話しかけたら、ハトが豆鉄砲喰らったような顔になった。


面白いな。


「干からびるまで魔力を吸い出そうかと……」

「このくそリッチ! 鬼!」

師匠せんせい……」

「いや、冗談だから」

さすがに夢乃もちょっと呆れている。

おかしいな。滑ったらしい。


「すまんすまん。でも、レファの出番なのは本当だ」

「どうして?」

きょとんとした表情をしているが、記憶がなければ仕方ないよな。


「異世界で、他の聖具を探すのね?」

そこにロゼリアが答えを出す。


「そういうことだ」

「なんで私?」

それでも理解できないらしい。

はてなマークを浮かべるメスガキってもっとかわいいもんじゃないだろうか?


「なにか失礼なこと考えてるわね……」

するどいな……。


「お前は元魔王だからな。異世界に行って、イルデグラスに協力を仰いで欲しいんだ。"鎧"、"棒"、"輪"とか、まだ聖具があるはずだから。あと、決戦の場に高位魔族を引っ張り出したい。魔力はいくらあってもいいからな」

「わかったけど、私だけで大丈夫かな?」

「当然俺も行く。行くけど、向こうのやつらはお前に従順だから」

「なるほど。わかったわ」

いきなり偉そうになるレファ。

まぁいっか。


イルデグラスのほか、何人かの魔族は戦力になるだろう。

結局ダンジョン攻略は進んでなさそうだから一般の人間や魔族だと意味はないだろうが。

なんだったら五神を引っ張ってきて生贄に捧げたいくらいだがな。


「それからフラン」

「あぁ」

フランにはちゃんと話しておかないといけない。この作戦のネックは間違いなくフランと夢乃だから。

夢乃には今言ったように、"杯"で魔力を集めて"剣"を強化してもらうとして、フランにはその"剣"を使って迷宮神とデバウラーを切り離してもらわないといけない。


もしそれをやる場合、最も危険に晒されることになる。それに、失敗した場合、迷宮神の怒りに触れる可能性だってある。

迷宮神の意識がどうなってるかわからないからな。


そんなことを説明した。


「わかった」

「いいのか?」

「いいもなにも、私はやる。そもそもあのジュラーディスとかいうじじいが私を弄ったのもそのためだろうしな。あのジジイの計画に乗るのは癪だが、それでみんなを助けられるなら私の命なんか惜しくない」

「フラン……」

思いのほか固まっている覚悟に夢乃が申し訳なさそうな顔になる。


「なにか見たのか?」

「あぁ……リッチがあのジジイを倒した後にな。何度も夢を見た。同じ夢。あのジジイが出て来て私に戦えと言うんだ。そのために過去を弄ったと。私のもともと持っていたスキルを封じ、戦う力を植え付けたって」

「そうだったのか」

それは気持ち悪い夢だな。

あのジジイ、死んだあとにもそんなことを言いにフランの夢に出てたのか。


「でも、あるとき夢は消えた。それがきっとリッチが言った、説明神様とやらがあのジジイを消したからなんだろうな」

「そうだと思う」

「なら、私はやるだけだ。あれで私の力は戻った。なぜ消されていたのか分からないけど、"神白なる刃"なんて言うスキルが生えている。これがきっと迷宮神とそのデバウラーとか言うやつらを切り裂くためのスキルなんだろう。あのジジイは過去に失敗してから白い力を消していたらしいから」

あのジジイは何をやってたんだ?

迷宮神を直接的に倒せるかもしれないスキルを封じて、自分の思う方法で倒そうとしていたってことか?


過去の失敗とはなんだ?

気にはなるが……。


今悩んでいる余裕はない。

もうこの方法しかないんだから。


「フラン、頼む。そして他の探索者には、フランが全力で迷宮神を斬れるように、その場まで護衛して欲しいんだ」

「「「わかったわ」」」

夢乃が力強く頷く。詩織も、早紀もだ。


「高位探索者はこちらでも連れて行く。全員に軍団系スキルをかけて、支援してもらう」

皇ちゃんも来てくれるみたいだ。

気がかりなのは皇ちゃん自身がくっそ弱いことだが、まぁ死なないようにだけ気を付けてくれ。

もし死んだら誰も早紀さんを止められないからそれは勘弁してほしい。


こうして作戦が決まったから、俺たちはそれぞれの準備に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る