第114話 ロゼリアと
そして全員帰宅し、俺はロゼリアとその場に残った。
ジュラーディスが本当に消えたんだとしても、あの狭間の空間に帰るのは今は気まずい……というか嫌だ。
だからロゼリアがどこからともなく用意したベッドに入って一緒に寝た。
幼かった聖女がこんなに立派になって……。
昔のように無言で抱き着いてきたロゼリアを抱きしめてやる。
あの時は腰のあたりに纏わりついて来る感じだったんだけどな……。
「あなたがお兄ちゃんだったとはね……わからなかったわ」
そうみたいだな。俺もまさかお前がユリアだったとはわからなかった。
「ふふ……びっくりした?」
びっくりというより、後悔……いや、罪悪感があるな。
「罪悪感?どうして?」
ん?あぁ。いや……あの日追い返したお前を抱いてたなんてな……と思って。
「なるほどね。もう抱いてくれないの?」
いや、気にしないけど。
「どういうことなのよ?」
それはそれ、これはこれだな。お前が嫌だって言うならやめるけど。
「そんなことはないわ」
とりあえず再会を祝さないとな。うん。ということで時を飛ばそう。
12時間後……
「王女様たちのこと、なにもわかってなかったわ。だけどさすがにおかしいと思って逃げ出したの」
あいつらアホだったもんな。
「王女様と結婚して国王になったはずのラーゲンから襲われそうになったから」
ちゃんと蹴り上げたか?
「うん。渾身の一撃をね。それで出て行ったの。残念ながら"杖"や"剣"は持ち出せなくて」
それで"杖"は残ってたのか。
昔あったことを語るロゼリア。特に思い入れは無いようで淡々とした口調だ。ちなみにラーゲンってのは今のラガリアスだけど、相変わらず最低だなアイツ。
「それでお兄ちゃんを追いかけようと思ったの」
なんでだ?
「だって……1人で飛び出した私には知り合いも頼る人もいなかったから。思い浮かぶのはお兄ちゃんだけだったのよ」
そうだったのか
「それで噂を頼りに大陸中を彷徨って、海に出て、別の国に行って」
めっちゃアクティブだな。もしかして魔王領にも?
「さすがにそれは無理よ。聖女が魔王城になんか行けなかったわ」
そうか……。
「結婚したって聞いたし、そのだいぶ後になって魔王城にいることも聞いたの。でもさすがにそこには行けないと思って躊躇してる間にあなたは亡くなってた」
あぁ。魔王城で死んだな
「あの時は荒れたわ」
荒れたのか?
「初恋をこじらせてたのよ」
そう言うロゼリアの顔は幼さが見え隠れするものになっていた。
何十年抱えてたんだよ
「50年以上よね。でも忘れられなかったのよ。唯一優しかったあなたが」
そうか……。
「で、死んだの。私も。老衰で」
こいつの前世は二度と俺とは交わらなかった。
こいつは望んでいたんだろうが、俺は知りもしなかったから。改めて聞くと申し訳ない気持ちもあるが、前世では無理だ。そもそも追いかけてきていることも知らなかったんだから。
それがまさかこんな関係になってるとはな。
「全部じじいのせいね」
そうだったのか。
ようやく感情を見せたと思ったら怒り心頭だった。どことは言わないけど怒られないのをいいことに触り続けていた俺の手がびくっとした。
「ジジイ曰く、死んで漂っていた私の魂を見つけてロゼリアに入れたらしいわ」
ほう……まるで神様みたいなことしてるな。
「実際そんな感じよ。思うがままに操られる気色悪さと言ったら言葉に表せないわ」
今度は虫を怖がる少女のように気持ち悪そうに肩を抱いている。
「そのおかげでお兄ちゃんと会えて、しかも一緒にベッドインしてるなんて不思議よ。その一点だけはジジイに感謝してもいいわ」
恋のキューピットのジジイ……。
「その例えはやめて欲しいわ」
自分で言っておいてなんだが激しく同意だ。
相当気持ち悪かったらしく、震えるロゼリアをもう一度抱き寄せて……(以下略)
それにしても、正真正銘の生真面目勇者だったはずなのに、なぜかハーレムなんだが。
「へー」
そんな遠い目をするなよ。
「えーと、詩織、レファ、私ね。清楚系美少女、小悪魔系美少女、美女、文句ないじゃない」
いいのかよ。
「特に文句なんかないわ。別にあと何人か増えたってね」
ないだろ。真面目なフランと娘たちだぞ?
「幼女がいなかったかしら?」
凛ちゃんは犯罪だろ?あとは人妻の早紀くらいだぞ?
「略奪愛ね。燃えるわ」
ねぇ~よ。皇ちゃんに殺される。
「今の魔王様とか」
ないない。あんなじゃじゃ馬、勘弁してくれ。
「抜け殻のリッチとか」
なんだそれ?
「あなたがいない間にあなたを動かしていたものよ」
あぁ。なんで動いてたんだろうな?
「わからないけど、嫌な感じはなかったわ。それこそあなたに近いように思ったわ」
わからん。思い当たる人がいない。
もう一度転生説明神に会えれば聞いてみるけども。
「まぁ、あなたは好きにすればいいと思うわ」
迷宮神を倒すのが最優先課題だしな。それ以外は後回しだ。
ということで、起きた俺たちはかつての力を思い出しながら魔力をぶつけ合い、訓練したのだった。
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