第18話 黒い企み?

□阿蘇山ダンジョンの管理室


「本当にあの子が帰ってきたらもうやめてくれるのね?」

「くどいな。本当だっつってんだろ?というか多分やる意味なくなったしな」

「なっ。だったら早くあの子を」

2人の大人がいて言い争っている。

1人は妙齢の女で1人は若い男だ。

 

「入っちまったんだからボスを倒してくるか、1人でここへ戻ってくるかだろ?それともお前が助けに行くか?」

「くっ……」

「力もねぇのに喚くなよ!」

「あぁっ……」

男は女を蹴り飛ばす。


「何だよその目はよぉ。お前、自分の立場がわかってんのか?これで借金チャラにしてやるっつってんだから喜んで働け!」

「うぅ……ごめん……凛……」

女は泣き崩れる。


「ったく、うぜ~な。なんだってこんな場所に飛ばされた俺がこんなことしなきゃなんね~んだよ」


リンリンリンリンリン

 

そこに管理室の電話が鳴り響く。男が表示を見ると1Fのダンジョン協会からだ。


「なんだよ」

男は気だるそうに受話器を取る。

 

『まずいことになった。すぐに女を隠せ』

「は?」

しかし電話の相手の様子は緊迫していた。

 

ヤバい相手にバレた。男は即座にそう判断し、女の頭を掴む。


「きゃぁっ」

「うるせぇ、こっちにこい!」


 

『ほう……管理室の職員が一般人をそこに連れ込んだ上、乱暴しようとしている現場ということでいいだろうか?』

そこに割り込んできた声。

そして起動したモニターに映るダンジョン協会会長……。


「なっ……」

男は唖然としながら女の頭を放した。


『沈黙は肯定と受け取るぜ?ここで何やってた?』

「くそっ」

男は皇一の問いかけを無視して1Fを目指して走ろうとする。

しかし……


「□☆△○◆★◇▽」

「ひぃっ」

俺が立ちはだかった。

初めて入ったな……。というか管理室ここってモンスターは入れないんじゃなかったか?……召喚されてるから入れたのか?

もしかしてこのままダンジョンの外に出れたりするのか……?

 

『いや、めちゃくちゃカッコいいというか、恐怖の登場なのに、なに言ってるかわかんないから』


「お母さん!」

「あぁ、凛!凛、ごめんね」

俺の後ろから顔を出した凛が、女に駆け寄り、女は凛を抱きしめる。


『感動の再会のところ申し訳ないが、状況の説明をお願いできないだろうか?少し落ち着いてからで構わないから』

「はい。私は大丈夫です。凛が無事なら」

女は凛を抱きしめたまま、皇一の映るモニターに向かって話し始める。


女の名前は湯野ゆの麻沙美。

結婚はせず、一人で凛を産み、一人で育ててきたらしいが、凛は国の検査で探索者の素質があることが分かった。

それで、凛を探索者学校に入れてやるために麻沙美は整った容姿を活かした稼ぎのいい仕事ということでお酒を出すお店で働きながら育てていたらしい。


「お母さん。わたしは探索者学校に行く話は断ったよ!」

「でも……」

ただ、凛の方は状況もちゃんと理解していて、母親に無理させてまで自分がそんなところに通うとは考えていなかったようだ。

 

「ごめんなさい、凛。それでもお母さんは、あなたの選択肢を潰したくなかったのよ……」

『それで凛ちゃんをダンジョンへ入れていては、元も子もないのでは?』

「はい……」


塔ちゃん:ちょっと変われ皇ちゃん。画面にスマホ映せ。


『わかったわ、塔弥君。どいて。え~と、これでいいかしら』


横から首根っこ掴まれた会長がポイされてかわりに画面に一瞬早紀が映ったと思ったら、スマホ画面をアップにして表示してくれた。

 

:会長の扱いwwwwwww

:さすが早紀様。

詩織:みんなちょっと黙って聞こう。ねっ。

塔ちゃん:詩織ありがとう。えぇと、混乱するかもしれないが、俺は今君たちの横にいるリッチだ。


「はっ?」

「うん。わかってるよ。お母さん、このリッチさん超強いんだよ?」

当然ながら混乱する女に、凛が興奮して話しかける。


塔ちゃん:麻沙美さんは自責と罪の意識があって話しづらいかもしれないが、キミたちは騙されたり追い込まれたりしただけだと思う。ちゃんと話してくれたら十分に情状酌量の余地があると思うから、辛いかもしれないが教えてほしい。

:ダンジョン協会法務部の酒井です。ご協力よろしくお願いいたします。

 

酒井?もしかして……。

 

「わかりました」


まぁいいか。今大事なのはヒアリングだ。

 

塔ちゃん:それで、その男はなぜ凛ちゃんをダンジョンに入れたのか?なにか言っていなかったか?


「えぇと、確か……このダンジョンの10層のボスに、その……あなたと同じリッチが出るんですが、それを倒せと言っていました」


塔ちゃん:ほう……リッチを?なぜ?なにかリッチを倒す意図を話していなかったか?


「はい。なんでもリッチは珍しいアイテムを落とす可能性があるからと……」


げっ……。


塔ちゃん:それは……。


『原因はあなたのようね、塔弥君。素直にお縄につきなさい』

「えっ?」

「○◆★□△◇☆▽」


:いやいやいやいや。早紀さん、お茶目さん発揮しなくていいからwwww

:レアアイテムドロップはあくまでもリッチ様限定だってことは誰だってわかるだろ?

:誰だよそんな曖昧な情報で凛ちゃんを探索させたのは。

:お母さんが混乱してるじゃないか。ちゃんと説明しよ?

:目の前のリッチはリッチ様と言って、いま日本で一番有名なモンスターとして新宿ダンジョン40層に君臨してるんだけど、このリッチ様を倒すと超レアアイテムが手に入るってことで少し前にお祭り騒ぎになったんだよ。なお、今はもうそのアイテムは落とさないと本人は主張している。

:完璧だ。


「はぁ……」


塔ちゃん:で、おそらくその男は俺限定という情報を持たずに、リッチなら誰でもレアアイテムをドロップする可能性があると考えて凛ちゃんをリッチ討伐に向かわせたのかなと思われる。


「そうだったのですか……」


塔ちゃん:それにしても、なんで凛なんだ?10層でリッチが出るなら、普通に探索すればいいのでは?



「失礼します。ダンジョン協会九州支部の緒方です。阿蘇山ダンジョンの協会の調査を完了しました。今回の件に関わっていたものは2名です。あとはそこの男を確保すれば、被疑者確保完了になります」

『ご苦労様』

「えっ、早紀様?お久しぶりです」

『本当に。10年ぶりかしら?立派になったのね。早急な仕事に感謝するわ』


協会の職員が入ってきた。

彼が来たなら俺の役目はここまでだろうな。

真相が分かればあとから皇ちゃんか早紀に聞こう。



***

ここまでお読みいただきありがとうございます!

キャラ紹介の第六弾です!

ついに真打が登場。えっ、まじで?作品ジャンル変わっちゃうけどいい?


名前:湊皇一<個人戦闘力が低すぎて誰にも認知されていないが軍神>

    皇ちゃん:作品ジャンル変わっちゃうけどじゃねー!

    塔ちゃん:確かに可愛い顔してるよな……

    皇ちゃん:うぉい!!!


外見:ナイスミドルに憧れるちょい悪おやじになりきれなかった人


役回り:日本のダンジョン協会会長の彼は今日もまじめに執務室でお茶を味わいながら適当だけどそれっぽい指示を出し続ける。早紀の尻に敷かれてる彼は押しも押されぬ椅子。

    塔ちゃん:せめて座布団にしてやれや!

    皇ちゃん:そういうことじゃないと思うんだ……。

    早紀:座ると触ってくるから嫌です!

    皇ちゃん:そういうことでもないと思うんだ……。


星に願いを:お金をください。ダンジョン協会会長変わってください。迷惑な探索者は全部ぶち殺してください。政府はいいから俺の話を聞きやがれください。


塔ちゃん:たまってんだな……

作者  :流れ星への願い事じゃねぇんだよ!!!

     多くの人に見てもらうための

     フォロー、星評価、コメント、応援のお願いなんだよ!?

皇ちゃん:はっ……失礼しました。


次回は第20話にて(笑)


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