【第28話】

翌朝7時半過ぎであった。


ところ変わって、家の食卓にて…


なおみは、怒った声で『朝ごはん食べたくない!!』と言うたあとバッグを持って家を飛び出した。


制服姿のさおりも、直家の頭を四角いカバンで頭を殴りつけたあと家から出て行った。


なおみとさおりからイカクされた直家は、コンワクした。


この時、りつよが食卓にやって来た。


りつよは、直家に対して怒鳴り声をあげた。


「おとーさん!!」

「どうしたんだね?」

「週が明けたら裁判所へ行きなさいよ!!」

「裁判所へ行けって…」

「人の家の金銭をあてにするのもいいかげんにしてよ!!」

「だから裁判所へ行けと言うのか?」

「そうよ!!信州で暮らしていた時の家を売却して得た大金を全部使ったけど、返済できたのは全体の3分の1よ!!分かっているの!?」

「分かってるよ〜」

「分かっているのだったら裁判所へ行ってよ!!残りの3分の2の金額は破産申請するより他はないのよ!!」

「ハサンシンセイしろだと!!」

「それしか方法はないのよ!!」

「ハサンシンセイをしたら親族たちにメーワクが及ぶのだぞ!!」

「親族たちがなにを言おうと裁判所へ行きなさいよ!!アタシ、もう限界が来たわよ!!」

「りつよ〜」

「おとーさんに大事なことを伝えておきます…近いうちに、ローケン施設の見学に行きますので…」

「ローケン施設…わしを施設にいれる気か!?」

「ええそのとおりよ!!うちは近いうちになおみとさおりを連れて姫路で暮らしている友人の家に行くから…おとーさんが裁判所に行かないと言うのであればうちが行くわよ!!」


直家を怒鳴り付けたりつよは、バッグを持って家から飛び出した。


直家は、ひどくおたついた様子であたりを見渡した。


あとになって、なおみが晩ごはんを食べずにお見合いの席に行ったことが原因でトラブルになった理由が分かった。


お見合いの日、なおみは売り子さんのバイトでパロマスタジアム(瑞穂区)へ行ってた。


なおみは、Jリーグの試合が後半の時に事務所へ行って売上金を届けたあと日当を受けとる手続きをしようとした。


その時、事務所の人が長電話に夢中になっていた。


事務所の人が長電話をしていたので、手続きを取る時間が大きく遅れた。


なおみは、売上金は事務所に届けたが日当はいらないと言うて事務所から出た。


この時、仲人さん夫婦が設定した時間の45分前になっていた。


なおみは、大急ぎで地下鉄を乗り継いで大須観音駅まで行った。


その後、駅から走ってカフェテリアへ行った。


空腹のままお見合いしたのでトラブルになった。


10月7日の夕方に発生したトラブルが原因で、なおみは生きる意欲をなくした。


あの時合格した名古屋の大学へ行きたい…


10月8日の昼過ぎであった。


この日、なおみはバンテリンドームナゴヤでビールの売り子のバイトをしていた。


この日も売上金を事務所に届けたが、前日と同様に日当の受け取りを拒否した。


両日とも日当は八千数百円だったので、なおみは『こんなはした金なんかいらないわよ!!』と言うて受け取りを拒否した。


働く意欲をなくしたなおみは『大学へ行きたい…』と思うようになった。


その日の夜10時半過ぎであった。


ところ変わって、直家一家が暮らしている借家(もとは叔父の家だが、リースバックされたので借家と表記します)にて…


家の居間には、疲れた表情を浮かべているりつよがいた。


直家は、夕方頃に『のみに行く…』と言うたあと家から出た。


そんな時であった。


なおみがものすごくイラついた表情で帰宅した。


りつよは、なおみに対して八つ当たりした。


「なおみ!!」

「なんなのよおかーさん!!」

「今なんじだと思っているのよ!?」

「おかーさん!!アタシはバンテリンドームで売り子さんのバイトをしていたのよ!!」

「売り子さんのバイト…」

「アタシは、不足分をおぎなうために名古屋へ行ってお金稼いでいるのよ!!おかーさんは休みなく働いているアタシの気持ちは二の次だと言うのね!!」

「そんなことは言うてないわよ!!」


(ガタッ)


その時であった。


ガタッという音が聞いたなおみは、大急ぎで玄関へ行った。


なおみが玄関のドアをあけた時だった。


なおみは、強烈な悲鳴をあげた。


「さおり…さおり…ヒィィィィィィィィィィィィ!!」


なおみの前にボロボロになったさおりが立っていた。


なおみは、大急ぎでりつよを呼んだ。


「おかーさん!!早くきてぇ!!」


制服は、鋭利な刃物で制服がズタズタに切り裂かれていた。


髪の毛は、泥でグシャグシャに汚れていた。


くちもとから血が出ていて、目が真っ赤にそまっていた。


ほほが青むらさき色にはれていた。


その上にまた、身体に強烈な肥料のにおいが付着していた。


そこへ、りつよが玄関にやって来た。


「さおり!!さおり!!さおり!!さおり!!」


りつよとなおみは、必死になってさおりを呼んだ。


さおりは、りつよとなおみの呼びかけに反応しなかった。


りつよとなおみは、泣き叫ぶより他はなかった。


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