幕間 調査

 俺達がベガ村に憑く蜘蛛の魔物の存在を知ったのは、つい昨日の事だった。


「お疲れ様でーす。村人に聞き込みしてきたんすけど、魔物は昨日倒されたらしいっすよ。って、なんか臭うと思ったらこれ……」


 聞き込みから戻ってきたシルビアの視線の先には、俺とウルフの前にある巨大な魔物の死体がある。


 この魔物はホーンスパイダー。

 非常に強力な魔物であるはずだが、余程強い冒険者でも立ち寄ったのだろうか?


「そうか。魔物の死体も確認したから、もう用は無い。帰るぞ」


 俺の言葉に、ウルフとシルビアは露骨に嫌な顔をした。


「えー! せっかくここまで来たのにっすか⁉︎」


「エドちゃん、そりゃ無いぜ」


「ウルフ、その呼び方やめろ」


 確かに、二人の言い分もよく分かる。

 シリウスから半日以上かけてここまで来たのだから、無駄足もいいところだ。


「あーあ、国がもっと早く動いてりゃ、オレらがこんな遠出する必要無かったのによぉ。良い迷惑だぜ。シルビアちゃんもそう思うだろ?」


「全くっすよ! なんであーしらが無能兵士共の代わりにこんなこと~」


 また二人の愚痴大会が始まってしまった。


 国は俺たち私設軍隊のように早くは動けないのだから、仕方ないだろう。


「その為に、俺達がいるんだろ。そうだシルビア、その魔物を倒した者の風貌について、村人は何か言ってなかったか?」


「あー、それなら聞きましたけど、何でもきらきらしてる盾使いの女の子だったらしいっす。あともう一人、黒いフード被ってる女の子も一緒だったそうで」


 盾使いに、黒いフードの少女か。

 強い冒険者ではあったにしても、恐らく“勇者”では無いだろう。


「エドさん、どうかしたんすか?」

「……いや、念のため聞いておきたかっただけだ。行こう」


 最後に、俺はもう一度目の前にある魔物の死体に目をやる。


 剣で一突きにされたような深い傷……盾の攻撃では、こんな傷は有り得ない。

 まさかとは思うが、あの可能性は否定出来ないか。


 俺達は連れていた馬に乗り、元来た道を戻り始めた。

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