無口なヤングマン

「……ただいま…」


 厳かに学校から帰宅したムスコ。


「おかえり!」


 私が帰宅を祝ってもうんともすんとも言わない。下手するとご飯まで無言だったりする。

 たまに用事があると気配もなくキッチンにいたりする。

 

「…モゴモゴ…」


 なんて言ったのか全くわからない。とりあえず、


「そうなんや」


といい顔で答える。

 そして彼のその後の行動で内容を推理する。内容を追求すると不機嫌になるからだ。


 友人にムスコが何言ってるか判らんことがよくある、と同級生に相談すると、彼女も現在進行形でそうだと言うので安心した。


 しかしたまに困ることが起こる。

 ムスコが何を言ったのかをわからないままにしているから、『明日教科書代五万いる』『空手着と部Tのお金二万五千いる』とか突然(彼にとっては報告済)言われたりする。

 その時は家族から家中の有り金をかき集める。


 思春期が早く終わる事を祈る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る