種田山頭火のおいしい日記

@evans3

第1話  山頭火、鮎を食べる  その1

◎昭和5年10月21日の日記より

「早く起きる、前庭をぶらつく、花柳菜といふ野菜が沢山作ってある、紅足馬さんがやってくる、話がはづむ、鮎の塩焼を食べた、私には珍らしい御馳走だった、小さいお嬢さんが馳けまわって才智を発揮する、私達は日向の縁側で胡座」


(ちょっと一言)

・花柳菜とはカリフラワーのこと


・紅足馬とは宮崎県の俳人、黒木紅足馬(1885~1964)。

彼には次のような句がある。

天地黙す糸瓜忌の夜の月もなき

夏痩せて兵子帯長くなりにけり


・紅足馬の住まいは妻町、またはその近辺であったと考えられるので、この日、山頭火が食べたのは10月だからいわゆる落ちアユだが、宮崎の大淀川の鮎だろうと私は想像している。大淀川はアユ釣りの名所であるそうな。



◎昭和8年9月15日の日記より

「酒は賀茂鶴、下物は焼鮎、……身にあまる優遇で野柄いささか恐縮の体」


(ちょっと一言)

・この日、山頭火は広島市牛田に住む句友である大山澄人宅で歓待を受けている。

よってこの日の鮎は広島を流れる太田川の鮎に違いないだろう。

ちなみに私は、山頭火がこの日訪れた大山澄人旧宅のごく近くに住んでいる。


・賀茂鶴とは広島の酒どころ,西条の銘酒。私もしばしば口にする酒だ。


・下物とは山頭火独特の表現で、いわゆる酒の肴のこと。


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