第30話
教室に着くと案の定テイラーさんがジロっと睨んできた。周りにはクラスメイトが沢山いるというのに抜け目ない。
本当にあれが惚れさせようとしている相手にとる態度だろうか。俺なら絶対にとらないけど…まあ常識人だったら普通なのかもな。
俺は普通の人というには少々難しい所があるだろうし。
「はぁ」
今日も憂鬱な一日が始まりそうだ。
俺は陽キャたちに謝りながら自分の席に腰を下ろすと早速突っ伏した。陰キャならば誰でも通るであろう術。
これさえしておけば余計なことに巻き込まれずに堂々と寝ていられる。
「おはよー」
久遠さんも今教室に入ってきたようだ。彼女の挨拶に男子も女子も一様に挨拶を返していく。
もう完全にこのクラスの一員だな。というか既に絶対に俺よりも高い立場にいる。
あれ、そもそも俺は認知されてるの?
ううん、嫌なことは考えるのをよそう。きっと俺はみんなにクラスの一員として認められているはずだ、うんうん。
しばらく机に突っ伏していると朝のSHRを合図するチャイムが鳴り響くと同時に担任が入ってきた。
今日も今日とて昼休みがやってきた。
俺は昼休みなんて求めていないのだから来ないでいいんだけどな。さっさと授業を終えて帰らせてほしいものだ。
多分陰キャの皆は同じ考えだと信じている。でもまぁ、学校の覇権を握っているのはもちろん陽キャたちなのであって俺たち日陰者の意見など無いに等しい。
「弁当食お」
弁当箱を持って空き教室に向かう。誰もいない俺だけの空間。
弁当を食べながら推しの配信を見るのが俺の昼休みのルーティン。本当に誰も入ってこないので…
「こんにちは藍木」
「はっ!?」
なんであなたがここにいるんだよ。教室を出た時は女の子たちに囲まれていて脱出できそうな雰囲気じゃなかったのに。
出てこられたとしてもこの教室に来る理由も分からん。
これでも俺は察しが良い男だ。周りには常に注意を払っているし、今日ここに来るときも周りには誰もいなかった。
その警戒をかいくぐってきたというのか。
「こんにちは藍木」
「…」
よく見ると、彼女の片手には弁当袋がぶら下げられている。もしかしてここで食べるつもりじゃないだろうな。
俺の学校の中で唯一一人になれる時間だというのにそれを奪うつもりか。
やっぱ惚れさせる気ないだろ。テイラーさん。
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