100回目の告白を失敗した俺、二度と告白しませんと告白しに行くと相手の様子が何かおかしい

ミナトノソラ

第1話

 皆さまは好きな人が出来たとして一度振られたくらいで諦めることが出来るだろうか。普通の人なら可能だろう。


 だが普通の人じゃなかったらどうなると思う?きっと諦めずにずうっっっっっっと告白し続けるのではなかろうか。


 周りからなんと言われようとも気にせず、臆することもなく、ただ大好きな人に告白し続けるだけ。

 相手からすれば迷惑以外の何物でもないだろうが、こちら側からすれば意地でも自分の望みを叶えたいと思うことも仕方ないことだ。


 …でも10回を過ぎれば多少は気持ちに揺らぎが生じることがある。


 俺も10回を過ぎた時、ちょっと揺らいでしまったことがあった。でも耐えた。俺の気持ちは10回振られたくらいで消え失せてしまうものなのかと!


 否、そんなことがあるはずがない!俺の気持ちはたとえ50回以上告白しようとも消え失せることなんてない…なんて言いきれる時もありました。


 過去形ということは今は違うということはみんなも分かるだろう。先ほど軽く流してしまったが、俺は好きな人に何度振られようとも折れずに告白しに行ったやばいやつである。


 今まで同じ人に告白しに行った回数は丁度100回。


 つい昨日行った告白で100回に到達したばかりで、学校中で変な奴だと認識されている自称普通の人だ。あくまで自称なので周りの言っていることは気にしていない。


「おはよう藍木。今日も告白しに行くのか?」


「おはよう。まあ…そうだな…」


「どうしたんだ、歯切れ悪いけどもしかして諦めたのか?」


「ん~。まあ、そんな感じかもしれない」


「しれないって、自分でもよくわかってない感じか」


 俺の好きな人は同じ学年クラスの青水亜玖亜さんである。青水さんは男嫌いで有名な学年のマドンナ様であり、今まで数々の男を残酷に振ってきた女性である。


 俺が二年生になると同時に同じクラスになった彼女に一目ぼれしてから始めた告白。俺が初めて感じることが出来た恋心であり、俺が思ったよりも粘着質だと分かるきっかけを作った人。


「いや、決まってるよ。もう諦めたんだ」


「そうなんだな。まあ正解だと思うよ。お前はかっこいいと思うし、叶わない恋を追うより新しい恋を探すべきだと思うぜ」


「お前、良い奴だったんだな」


「失礼すぎるだろお前」


「まあ、ほっとけ」


 諦めたと言った通り、俺はもう彼女のことを諦めることにした。なぜかといえば、もう疲れてしまったということと、100回も告白して成就しないのであればこれからするのも無駄なんじゃないかって考えた結果だからだ。







 昼休みになって俺はいつも通り彼女を空き教室に呼び出していた。ラブコメだったら告白イベは屋上であるものなんだろうけど、生憎さまこの学校は屋上が開放されていない。


 現実だと嫌でも再確認させられる。


「今日も告白ですか?」


「うん、告白だね」


「まあそうでしょうね。あなたは本当に懲りることを知りませんね」


「あはは、ありがとうございます」


「褒めてませんよ」


 やっぱり青水さんは美しくて可愛らしい。どんな前世で得を積んだらこんな風に芸術的なお顔を授かることが出来るんだろう。

 きっと彼女のお母様とお父様もものすごく美人なんだろうな。


 出来ることなら彼女と付き合って、ご両親にご挨拶して、結婚して…なんて幸せな道を歩みたかったが、無理なのは分かっている。


「で、ですよねー。知ってました」


「面白くありませんよ本当に」


「それにしては青水さん毎回来てくれますよね。なんで来てくれるんですか?」


「…そういえばなぜでしょう。私もよく分かりません。ただ何故か断ったら嫌な気持ちになりそうな気がします」


「まあなんでもいいですけどね。本当に今まで俺だけのために来てくださってありがとうございました」


 腰を90度にまげて誠心誠意気持ちを込めて感謝を伝える。


「え、え、突然なんですか!?」


 彼女は相当驚いている様子だ。俺の今までの行いを見てきたら妥当な反応だと思う。


「告白をしに来たんだ」


「いつも通りじゃありませんか。意味が分かりません」


「すぐに意味は分かりますよ」


 一息置いて深呼吸する。不思議と緊張はしていないようで、逆に青水さんは少し焦っているように見える。きっと気のせいだろうけどね。


 では言わせていただきます。


「青水さんのことを諦めようと思います。もう2度と告白することも話しかけることもやめます。だから今までありがとうございました。俺の初恋が青水さんで本当に良かったと思います」


 俺はそれだけ言うと、黙って空き教室を去った。その時青水さんがどんな表情をしていたのか俺に知る由はない。


 でもきっと精々したものだったのだろう。

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