第4話 へレスサーキットにて 修正版

 第1話から第25話までは修正版です。実はPCの操作ミスで編集作業ができなくなり、パート2として再開しています。表現や文言を一部修正しています。もう一度読み直してみてください。


 4月末、私はスペイン・へレスにいる。またもやMotoGPのサポートレースで走る。

 この1ケ月、アカデミーはザルツブルグリンクで走り込みをしてきた。マシンにはだいぶ慣れてきたというか、昨年まで乗っていたH社のマシンがベースなので比較的容易に乗りこなせるようになった。中谷麻実のタイムには及ばないが、チーム内で3番手のタイムを出せるようになってきた。

 先週、フランスのルマンでヨーロッパ選手権が開催され、中谷麻実がワイルドカードで参戦して、10位入賞を果たしていた。ここでランキング5位ならばMotoGP-3に参戦できるという。Grokkenジュニアチームは2台体制でE-GP3に参戦している。マシンは自社のKT社である。H社のマシンよりピーキーだという話だ。

 私はフランス遠征に参加できなかったが、麻実の話ではチーム監督のジュン川口がアドバイスをくれたとのこと。やはりエリートには声をかけるのかと少し嫉妬した。

(やはり上に上がらなければ相手にしてもらえない。こうなれば上がるのみ)

 と心に誓うしかなかった。

 

 へレスサーキットはマルケルチームの本拠地である。彼らは走り込んでいるので皆速かった。その中でも速いマシンについていって、ラインどりを真似することにした。全体的には中低速コーナーが多い。MotoGPのマシンは左右のコンパウンドが違う特殊なタイヤを違うそうだ。右コーナーがやたらきついので右サイドがハード、左サイドがミディアムというタイヤだ。だが、私が使うのはふつうのハードタイヤ。

 ラインどりがうまくいって、予選は10位になった。チーム内では3位に入った。マシンにも慣れてきたし、生活リズムもつかめるようになった。中谷麻実とは日本語で話すことはほとんどなかったが、エイミーとは英語で会話することが多くなった。練習の後にお互いに情報交換ができるようになってきたのは心強い。ちなみに麻実は予選7位。エイミーは予選12位に入っている。

 決勝スタート。第1コーナーまでは距離がないので、低速でコーナリング。そこからが勝負だ。前のマシンの動きを見て3周走る。そしてストレート後のヘアピンで抜けると判断し、4周目にアタックした。思い切ってインに飛び込む。相手は驚いたようで倒し込みが中途半端になった。後ろのエイミーもついてくる。次のストレートを終えると、前のマシンに追いついた。中谷麻実だ。麻実・私・エイミーとハインツアカデミーの女性ライダー3人が団子状態で走る。

 ファイナルラップ。麻実が6位のマシンにくらいつく。先ほど私が抜いたヘアピンでインに飛び込む。ブレーキ勝負だ。2人ともオーバースピードで飛び込んでいく。レイトブレーキで2台ともオーバーランしてしまった。そのスキに私とエイミーが抜いていく。結果、私は6位、エイミーは7位、麻実が8位となった。予選5位だったデビッド・トムヤンが3位に入り、次回のE-GP3への挑戦権を獲得していた。優勝と準優勝はマルケルチームだった。

 ザルツブルグにもどるバスの中では、デビッドの一人舞台だった。今年、昇格できなければ年齢の関係でアカデミーをやめなければならない。今回の表彰台は最高の気分だったのだろう。反対に麻実はブスッとしていた。突っ込みのミスとそれに乗じた私とエイミーが漁夫の利を得たことが不満だったのだろう。そういう時に声をかけるとろくなことがないので、私も無言でいた。

 次は5月初めのフランス・ルマンである。

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