第2話
ラヴィはトラックの荷台に積まれた機体に乗り込んだ。
別電源で別離されているので、トラックが稼働していなくても機体には乗り込む事が出来る。
ハッチを開けて彼女は乗り込むと、操縦席へ搭乗した。
「ふぅ…痛くしないでね」
そう言いながら、ラヴィは操縦席の背凭れに体を預ける。
「狙撃兵、起動」
その言葉と共に機体の節電状態が稼働。
体重を預けた背凭れから、
「んあっ」
特別痛覚と言うものは無い。
声が漏れるのは、端子挿入部位が金属由来の冷たさで驚く事が稀にあるからだ。
しかし、痛覚は無いが…肉体に異物が挿入されるのは、中々に嫌悪を感じる事だった。
頭の中でノイズが疾走した。
最初に視覚、味覚、嗅覚が消えていく。
次に聴覚を喪い、視覚が復活。
最後に触覚が無くなっていき、聴覚が蘇ると、彼女の肉体は機体へと意識が移り込んだ。
機骸を操作する事が出来る
『ラヴィ、聞こえるか?』
脳内に響く声。
トラックにガソリンを入れた事で電気系統が復活。
備え付けのインカムから機骸と同調しているラヴィに話し掛ける。
『聞こえてるよ、銀』
彼女はそう告げると、脳内に「よし」、の一声。
『ドアを開ける、十分に狙えよ』
その言葉と共に。
暗いトラックの荷台の天井が観音開きで開かれる。
『狙撃兵、駆動』
ラヴィが発言。
そして、トラックの天井から出て来る機体。
量産型機械兵・『
銃火器を搭載している機械兵を改造した
機械兵専用狙撃銃『遠射砲』を搭載している。
長距離に適した射撃を得意とする。
銃口の長い銃火器を構える狙撃兵。
脳内に響き渡る日柴鬼銀の声が話しかけて来る。
『お前、さっき一発で十分って言ったな?』
『うん、言ったけど?』
脳内で話し出す二人。
『弾代もバカにならねぇからな、マジで当てろよ?』
軽口を言う日柴鬼銀。
当然、その発言に対して軽口を叩こうとした時。
此方へと接近してくる、機械神を視認する。
狙撃兵の能力では、往来の『
その際に、機械神の行動を確認したのだろう。
一瞬、ラヴィの息が止まった。
そして、我に返る様に、叫び出した。
『銀、トラック、発進してッ』
そう言われて、日柴鬼銀は聞き返そうとした。
『機械神、攻撃準備してんの!!』
急かす様に言われる。
『攻撃準備だ!?くそッ』
ラヴィの視界に映る機械神。
体内に蓄積された電力。
外殻から生える東京タワーやエッフェル塔の様な刺々しい鉄骨から電気の束が跳ねて散っている。
その中でも特に細くて長い鉄骨を二枚挟みにした様な銃器が展開されていた。
『あれ、え、きゃはっ!』
機械神の銃器を見て興奮を隠せないラヴィ。
此方を狙われていると言う肝を冷やす状況に笑っていられる状態では無い日柴鬼銀はトラックを急発進させながら彼女に聞く。
『なんだッ!何笑ってやがる!!』
叫ぶ彼を逆撫でする様に興奮した声で口にする。
『だって、電力のエネルギーをそのまま飛ばしてるッ!めっずらしい!!』
『あ?!エネルギー兵器!?』
紫色の雷が銃器の間に収束されていく。
トラックを発進させ、少しでも標的になるのを避けようとしている。
日柴鬼銀はインカムでラヴィに射撃命令を送る。
『さっき、言ったのは忘れろ!!あのエネルギー兵器、撃って破壊出来るだろ!!』
彼女の腕ならば、走行中でも遠距離の敵を撃破出来る。
だから、エネルギー兵器に向けて撃てと言うが。
『出来るけど…だめ、あれ欲しいっ』
彼女は拒否した。
『はあ!?』
そして、ラヴィは遠射砲を構えた。
『壊したら、使えないでしょ!』
エネルギー兵器の充電が行われている隙を狙い、精密射撃を行う。
機骸が引き金を引き、弾丸が射出されると、遅れて発砲音が響き渡る。
機械神の背負うエネルギー兵器。
それを固定しているのは二つの腕だ。
その片方の腕を狙い、装甲の薄い関節部分に直撃。
弾丸は貫通し、機械神の姿勢が崩れる。
後になってエネルギー兵器が射出された。
狙いは大きくズレてしまい、砂漠の砂に直撃。
砂はドロドロになって溶けていた。
『すっご…絶対に欲しい、銀、私の専用機、絶対あれ取り付けて!!』
『分かった、分かったからさっさと壊れ!!』
ようやく、日柴鬼銀の言葉に頷いたラヴィ。
遠射砲を改めて機械神の方に向けると、引き金を引いた。
発砲された弾丸、銃火器は反動により上空へと仰け反る。
高速で回転しながら空を裂く弾丸が、破壊された装甲の隙間に着弾。
如何に装甲が破壊されていると言っても機械神が四つん這いになった状態だ。
この状態では胸部にある中枢核までは被弾しない。
しかし、首と肩の装甲が剥がれており、首筋を狙って打ち込み機体骨格の隙間を掻い潜り多数の機体制御プラグを破壊しながら中枢核を撃ち抜いた。
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