第49話 裏サイト(2)


 学校の裏サイトについては、探偵事務所の方でも「すでに把握はあくしている」と考えるのが正解だろう。俺がわざわざ報告するような事でもない。


 むしろ、意気揚々と報告した場合「なに今更いまさら」みたいな反応をされそうだ。

 白鷺しらさぎ女史から見せてもらった資料には、詳しい記載がなかったハズだが――


(アレは表向きの資料だったのだろうか?)


 【呪い】に関しては別の資料があるのかもしれない。

 今は「綺華あやかなにがあったのか?」を探ることにしよう。


 チャットで会話をしている限りは、裏サイトに入りびたるようなタイプではなさそうだ。恐らくは名前を書き込まれた側だろう。


 なにが原因だったのかまでは分からないが、書き込まれた側がとる行動についてはさっしが付く。裏サイトがあることの密告だ。


 学校側からサイト削除の要請を出してもらうのがいいだろう。

 場合によっては加害者に損害賠償請求を行うことも可能だ。


 法的に責任の追及が出来ることを示唆しさすれば、犯人も大人しくなる。

 ただ、問題は「密告したことがバレた場合」だ。


 他の生徒たちからすれば、わざわざ大人から隠れてする行為こういである。それがバラされ、同時にサイトも削除されたとあっては、怒りの矛先は密告した生徒へと向く。


 そこに正しさは関係ない。

 今度は、より多くの生徒たちからイジメの標的ターゲットにされてしまうだろう。


 裏サイトの存在に大人たちが気付かない理由のひとつでもある。

 まあ、生徒たちと普段からコミュニケーションをとっていれば――


(裏サイトの存在をほのめかす子供もいそうだが……)


 また、教師へ報告できたからといって油断はできない。

 教師側が安易な対応をすることで、密告したことがバレてしまうからだ。


 生徒たちもまた、教師を値踏みしていることを忘れてはいけない。まずは「教師と生徒」「親と子」の間で信頼関係を育てることが大切になってくる。


 それがむずかしいようなら、スクールカウンセラーを活用したいところだ。


(綺華が通っている進学校になら、常勤じょうきんしていそうだが……)


 俺は【やはり信用できる先生に報告するべきでしょうか?】とメッセージで質問を投げかけた。すると【大人は信用できません】と即答される。


 まあ、綺華の家庭環境を考えるのなら当然の返答だ。

 【そうですよね】と俺は同意する。


 同時に【変な話を振ってしまってスミマセン】とも謝っておく。

 この時、絵文字は使わない。これで綺華は俺から距離を取られたと思うハズだ。


(次は距離を詰めようとしてくるだろうから……)


 【いえ、こちらこそ、怒らせてしまったのなら謝ります】と綺華からメッセージが返ってきた。


 まあ、正確には猫の絵文字が使われ『ゴメンにゃ~』と猫が謝っているスタンプ付きだ。当然、これだけでは相手の心境が正確には読み取れない。


 だが、ここは「あせっている」と仮定しよう。

 取りえず、最初に考えていた作戦通り進めてみる。


 まずは【そうそう、呪術に詳しい人がいるのを思い出しました。明日、話をしてみようと思います】といった内容のメッセージを送る。


 これで綺華が興味を示してくれれば良かったのだが、特に返答はない。

 いつもの彼女なら【本当ですか⁉】くらいのリアクションをとるのだが――


(少し警戒させてしまったか?)


 いや、流石さすがに俺が探偵事務所の人間だとは思わないだろう。

 ここはあわてない方がいい。


 俺は【なにか聞きたい事があれば、一緒に質問しておきますよ】とメッセージを送る。しかし、またもや沈黙が続いた。


 なにか勘付かれたか?――と不安になるが、冷静に考えるべきだ。

 恐らくは一度メッセージを打って、それを削除したのだろう。


 まだ、秘密を打ち明けてもらえる関係ではないらしい。


(ここは話を変えるべきだろうか?)


 時間を置いてから、また後で確認する手もある。一応、冗談めかして【猫と会話ができる呪いがあるそうですよ】とメッセージを打つ。


 すると【なんですか、その呪い? うらやましいです】と、すぐにメッセージが返ってきた。どうやら、ウケているらしい。


(それはそうか……)


 俺と違って猫好きの彼女からすれば、普段から「猫と会話したい」と思っているのだろう。これはチャンスのようだ。


 俺は【キツネコさんも、なにか知っている呪いはありますか?】とメッセージを送る。すると再び沈黙が続く。


 失敗してしまったか――俺が後悔していると【黒曜石病って知っていますか?】そんなメッセージが返ってきた。


 ようやく、欲しい情報に辿たどり着けたようだ。

 知らないので詳しく教えて欲しい――といったむねのメッセージを送る。


 実際には「にゃにそれ、知らにゃい?」といった猫のスタンプだ。


(人を小馬鹿にしたような絵だな……)


 彼女の話によると、ネット上に書き込まれた都市伝説のようなモノらしい。

 その【呪い】にかかると人間の身体からだは黒く変色して硬くなるようだ。


 まさしく漆黒しっこくの石のようになる。

 そして、最後にはバラバラに砕け散って死ぬ。


 助かるためには、心の隙間を埋めなくてはいけないらしい。

 『叶えたい夢』や『生きる希望』。


 その他にも『誰かを好きになる』という気持ちを見付けることで【呪い】が解けるそうだ。


なんとも、ロマンチックな話である……)




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 ( ฅ•ω•)ฅ ニャー! 何とか、綺華ちゃんから

 【呪い】の話を聞くことが出来ました。


 (*ฅ́˘ฅ̀*)♡ 綺華ちゃんの心の隙間を埋め

 るのは当然、猫森くんしかいません!

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