第30話 キャンパス(1)
『
「人形を取りに行くから、手伝え!」
大学、見てみたいだろ?――という「悪魔の
今年は雨が多かったためか、桜の花はすっかり散ってしまっている。
だが、
時折、
今回の任務は、大学の教授に頼まれたモノで『フランス人形』の回収だ。
(当然『呪いの』と頭に付くワケだが……)
フランス人形といえば、白い肌にクリッとした大きな瞳、綺麗なドレスを着た可愛らしい人形を想像する。実際は西洋を思わせる顔立ちの人形であればいいようだ。
今の時代だと『ビスクドール』を想像する人が多いかもしれない。フランス人形に具体的な定義はなく、ビスクドールもフランス人形のひとつに含められている。
昔はガラスケースに入った状態で、どこの家にも
日本では大正時代から作られていたらしい。
しかし、1960年代になると国内でも大量生産が可能になり、状況が変わる。
昭和の日本で――70年代の後半まで――大流行した。
着せ替え人形とは異なり、インテリアとして鑑賞するための人形である。
どうやら、フランス人形が飾ってあると「お金持ちに見える」というのが理由らしい。経済成長期における『豊かな暮らし』の
当時は女の子の出産祝いや新築祝いとして送られていたようで、タンスやサイドボード、ピアノの上などが定位置だった。
(「日本人らしい」とも言えるな……)
今回、回収する予定のフランス人形は神出鬼没が売り(?)だ。
気が付くと、そこにある――という物理法則を無視した
近い話なら『メリーさんの電話』が有名だろう。部室にある棚やロッカーの戸を開けると、
誰かが持ってきて、ここに仕舞ったのだろうか?――そう思い、一度は戸を閉める。しかし、そんな人形は誰も知らないという。
気になって次に開けた時には、顔の半分が
人形の悲惨な状況と気味の悪さに、一度は視線を
そして、気が付いた時には「そのフランス人形は姿を消している」というワケだ。
「自分が持ち込んだ人形だ!」
とスグに気が付いたらしく、知人を通して『呪い屋』へ連絡が入った。
「バカな生徒がネットで拡散する前に、回収を頼む!」
といった理由らしい。確かに、全世界へ向けて「呪いのフランス人形がある大学です」などと紹介しても「【悲報】日本の大学」みたいな形で、拡散されるのがオチだ。
場所を特定されれば、大学の名がネット上に残り、教授も周囲の連中や偉い人から変な目で見られてしまう。
オカルト研究の教授として、売名行為が目的ならソレでもいいのだろうが「呪いのフランス人形の持ち主」というレッテルは色物でしかない。
どちらかと言えば「経済番組や歴史の解説などでテレビに出演したい」といった所だろうか?
まあ、俺も父親がテレビで、
(次の日は、学校へ行くべきか迷うな……)
昭和の時代なら「気味が悪い」と怖がられていた怪談も――現代においては――フィギュアやプラモデルなどが当たり前となっている。
AIが搭載された自律型ロボットやドローンもあるので、さほど珍しくはない。
生徒たちに気付かれて、ネットオークションへ勝手に出品されても面倒である。
「早く、引き取って欲しい!」
というのが、連絡のあった大学教授からの希望である。
(時代は変わってしまった――と言わざるを得ないな……)
大抵の場合【呪い】は見られることで、その効果を失う。
全国に存在が知られてしまえば、普通のフランス人形に戻るだろう。
だが、その場合、依頼主の教授としては失うモノが大きいようだ。
教授へは、大学へ到着した時点で『呪い屋』から連絡を入れてもらった。
約束の時間までには、まだ30分ほどある。
スグに返信が来るようなら、このまま
返信がなければ、指定された時間通りに訪ねればいい。
【呪い】の品が
(なるべく、早く対処した方がいい……)
俺のそんな考えに対し、
「他人の心配ばかりしていて疲れない?」
と『呪い屋』。彼女としては人形が回収できれば、どちらでもいいようだ。
まあ、俺自身は【呪い】に強い。
単なる回収作業といっても、普通の
「すまない、これが
俺が短く答えると『呪い屋』は「嫌な高校生だ」と言って、そっぽを向く。
機嫌を損ねたようだ。
(もう少し、年相応の返しをすべきだっただろうか?)
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ฅ•ω•ฅにぁ? 今回は過去の回想です。
任務は『フランス人形』の回収。
早く事件を解決したい猫森くんと、
お金儲けを優先する呪い屋さんだと、
相性が悪いようですね。
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