「足跡。」~10代から20代に書いた詩

天川裕司

「足跡。」~10代から20代に書いた詩

「足跡。」

夜…. それは足跡だ。あなたが砂地から帰ったあとに、残っている筈の足跡を

   もう一度捜しに行ったらあとかたもなくきえていた。あそこは人通りが

   少なく、暗いから女・子供も通らない。ましてや夜には。さっきまで一

   緒にいたのが私一人なのに、その足跡がきえているなんて、不自然すぎ

   るだろう。


「愛という名の欲望。」

あの外国の人も、今は死んで居ない。そのミスは過ちか、罪か、問われたのか。未だわからず私はあの外国の人の唄を、今ビデオで観ている。今起こっている世の中の流行・すたりに愛相がつきた。私は私なりに愛相がつきたのだ。今更誰も何も言えない。私はこの世では一人だが、この次はあの唄っている人達と同じ言葉で愛し合えるんだ。ただ今気になるのは、あの時のひとつのミスはどう清算されたか、ということだ。人間故に私は他人(ひと)を裁けないし、裁く気もない。疑問は裁きにかわってゆく。私の欲望が他人を殺しかけた。その前に自滅という道を選んだ。だが、それは自滅じゃなくて、信じた天への道だった、今私は夢をもう一度見たい、と思った。私は神を愛したいと思い、この道を選んだ。“お気に召せば私という個人を拾って下さい。”そう祈ること日々長く。それにしてもまだ、あの人の罪が気になる。


「TRUTH.」

あの人も言っていた、“愛すること”こそが、真実な筈だと。だが、この世間ではどうしてもその意味は腐っていく。それも仕方がないことなのか。あの人の死の意味を勝手に私は想像する。ひとり故に、そう思うのだろう。人間に生れてながら、その他者が同じ人間なのに狂ってしまって、それに対する欲望と絶望。背負いきれない。あの人のしたことこそが、そのどうしようもない仕組まれた壁を越える方法なんだと、私は信じた。


「欲望の真実。」

女が誘い、男はその誘いに乗り、性交をくり返した。どちらも欲が元であった。そして子供が出来た、と女は男にくってかかった。男は”ルールだ”、と、精一杯その時の二人の情景を女に話している......

つまり、どちらとも欲に負けたのだ。欲とは悪、....どちらとも何も言えないのが真実だ。


…女は言う。後に体に”子供”として、その悲劇が残るのは女の方だ、と。そしてどの女もその女の味方をして、得意の(性質の)連帯感で男にくってかかる。しかし、それは間違いなのだ。その誘いの前から女はその事実を知っているもの、子供が出来るのは男ではないのだ。つまり、男も女も欲望に負けたのだ。欲とは悪に思える、....どちらとも何も言えないのが真実だ。


「恋触。(コイブレ)」

恋だの愛だの下らないこと言ってる内にその相手が、手のつけられない程の悪魔になったりしたらどうするのか。たわいもないことである。


「Return.」

幾らか眠れば朝はまた来て、夜もいずれ来る。そのくり返しは、幾らか考え込んでても、勝手に過ぎていく。自然のために人間が生れたのか、人間のために自然が生まれたのか、そのどちらかなど、どうでもいい。ただ、幾ら考え込んでても、時は勝手に、他者の上でも同じように過ぎていくのだ。そして考え過ぎて、“疲れた”、なんて呟いて、また眠り始めるのだ。朝はいずれ来る。


「無題。」

その人に言ったことを、その場ですべてわかる人は最良の人である。


「変貌。」

どこまでいっても、同じ書き方で同じ思惑で、いつになれば私はかわれるのだろうか。やがて来る春を、また同じ気持ちで受け止められるのか。この前は冬、その前は秋。いつまでたっても、同じ書き方で同じ思惑である故に、自分のなのだろうか。いつしか哀しさを覚えたのは、遠い昔のことのように。


「或る春光の詩。」

 小さな書斎で、大きな欠伸をする自分がいた。クリスチャンの教典、聖書を傍らに置き、思わず悪魔主義に身を委ねる自分がいた。ヒーターは、母親が灯油を一杯に入れてくれたお陰で、さっきから私を暖めてくれている。大学に入って、高校の時より勉学から離れた故、字すらも覚束ない様で、字を書き続ける自分。その姿は、人間の世界から離れて喜びに耽る、狂人の様でもあった。


「或る男。」

男は女の言う事を最後まで信じようとはしなかった。

男はそういう気持ちを既に遣い果たして居り、その時に信じる事ができなかった。

その女は見た目が美しく、他からも愛される事のできる風(容)貌であった。

しかし男は、その女のそういう風貌に執着してしまい、他を考える事ができなかった。

それは欲望から目を離す事のできぬ男女共通の悩みであった、男はそれを一人で背負っていた。

男は、聖書に記してある「独身について」というところを読み、それを都合の良いように信じた。かたくなかとも思った。

男は「プライドを大切にする」ということを、口癖のようにしていた。


「二重の構造。」

僕はもう、普通の恋愛ができない。


私はもう、普通の恋愛ができない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「足跡。」~10代から20代に書いた詩 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ