第29話 聖人憑依は無敵ではなかった



 初めての海遊びが終わった日、俺と莉緒は、莉緒の部屋で一夜を過ごすことになった。

 付き合ったばかりの俺たちを祝福するための海デートだったのに、それがめちゃくちゃになっちゃったから、二人で過ごしていいという皆さんの計らいなのだ。


 正直、そのくらいじゃ全然納得いかないくらいにマジでめちゃくちゃになった。

 あの和也のせいだ。俺はやっぱりあいつのことは大嫌いだ。 


 俺は着替えをとりに家へ戻った時に「今日は友達の家に泊まる」という超ド定番の嘘を家族へ説明したが、彼女できたての俺の言葉を信じる奴は一人もいなかった。


「悠人。避妊だけはきっちりな」


「そうよ。避妊だけは」


「お兄ちゃん、生とかサイテーだからね?」


「だから友達の家だって言ってんだろ! なんで避妊が出てくる」


 そして玄関に向かう俺が颯太の部屋の前を通った時、ドアの向こうからなんと颯太の声が!


「兄ちゃん、ちゃんとゴム買えよ」


 おお! 颯太が俺に反応してくれた。何ヶ月ぶりだろうか。兄ちゃんは嬉しいぞ!

 そして何を言うのかと思えば避妊の話だという。引きこもりの颯太にさえ心配をかけてしまう俺。

「友達の家に泊まる」という嘘は百パーセント見抜かれているんだなぁ……。


 でもな、安心してくれ家族の皆さん。俺は「今日は莉緒を抱かない宣言」を明言しているのだから。

 何をしても良いと言い放った莉緒はもちろん全てを許してくれるだろうが、そんなことをしたら俺は自分で自分が許せないのだ。

 よって俺は、鉄の覚悟を持ってこのお泊りに臨むことにした。

 

 莉緒の家へ着く。


 ただ単に遊びに来た程度でもまあまあ緊張するのだが、襲うことなく二人っきりで一夜を過ごすとなると、それはもう修行僧をはるかに超える忍耐力を必要とする。

 どんなに修行を積んだ高僧だって、可愛い女の子と一つ屋根の下で過ごせば──しかも「ヤっていい」とまで言ってくれている女の子と一緒に過ごせば、理性を飛ばして襲いかかるに違いない。


 しかし俺には最終兵器とも言える特殊スキル「聖人憑依」がある。

 煩悩を退散させるのは並大抵のことではないが、このスキルは煩悩を内に秘めたまま、すなわち女の子の魅力を十分に堪能しながらも対象の女の子を襲うことなくやり過ごすという、悟りを開いた者しか使えないアルティメット・スキル──!! 


 ご飯を外食で済ませてきた俺たちは、少しくつろぐことにした。


 映画でも見ようかということになって、莉緒は俺のためにいつものコーヒーを淹れてくれた。

 そして自分には、これまたいつもの通りミルクティー。


 二人でソファーに座って映画を見る。

 高校生同士の恋愛映画で、制服姿の初々しい二人が甘酸っぱい恋愛模様を展開するものだ。

 映画を見ていると、莉緒は、ボソッとこう言った。


「……男の子ってさ、女の子の制服姿が好きなの?」


 突然問われた趣味趣向の話。

 なんなら性癖にも通ずる深い話題だ。一つ間違えれば大変なことになる可能性を秘めていて、今後のことを考えると回答には慎重を期したい。


 うーん。どう答えるべきだろうか。 

 うん。ま、いっか。好きなものを好きじゃないと嘘をつく理由もないのだし。


「好きだよ」


 なんで? と問い詰められるんだろうなぁ、なんて俺が思っていると、莉緒は俺の回答には反応せず、スッと立ち上がった。


「どうしたの?」


「……じゃあ、着替えてあげる」


「えっ」


 唖然とする俺を尻目に、莉緒はさっさと自分の部屋へと戻っていく。

 数分後、戻ってきた莉緒は、いつもの制服姿だった。


 もの凄い胸のボリューム感を余すところなく伝えてくる制服のシャツ。

 太ももの付け根が果たしてどのくらいのところにあるのか妄想を掻き立てられる短めのスカート。

 じわじわと性欲が上がってくるのを感じる。

 ヤバい。自分で自分を追い詰めてしまった……。


「……男の子って、どうしてこんなのが好きなんだろうね」


「夢だからじゃない?」


「はい?」


「いえ、なんでも」


 制服姿となった莉緒と、ソファーで座って映画の続きを見る。

 と、莉緒は眠たくなったのか、急にソファーの上にゴロンと転がった。俺の太ももを枕にして、はぁ〜〜っ、と背伸びをする。


「っっ────」


 気づいていなかったのだが、胸のボタンが一つ多めに外れているのか、胸の谷間が見えそうだった。

 というか、何この胸……。


 重力で横方向に少し広がって、しかし素晴らしい弾力がしっかりとその形状を保持した莉緒の胸は、揉んだときの感触を否が応でも俺に妄想させる。


 その上、背伸びしたことで引き伸ばされたにもかかわらず、標高の高い山のように気高くその存在をアピールし続け、制服のシャツをぱっつんぱつんに引っ張っていた。


 体を少し動かすだけで、ぷるんと細やかに揺れる様はもはや至高の芸術品。

 これほどの美しさを世に生み出す神に、俺は心から感謝した。


 俺が意識を飛ばしかけながら凝視していると、莉緒は立ち上がってキッチンへ何かを取りに行く。

 いつかと同じように手にお菓子をいっぱい抱えていた。莉緒はテーブルにドサっとお菓子を転がすと、またソファーに横になったのだが……。


 今度は俺から少し離れて、うつ伏せに寝転がる。そのせいで、莉緒の胸はソファーに押し付けられて、むにゅ、っとその形態を変化させた。

 行き場のなくなった柔らかいおっぱいが、多めに外したシャツの隙間から押し出されるようになる。莉緒は顔をテレビのほうへ向けているが、俺は莉緒の胸へ一直線に視線を向けていた。


 そのまま映画に夢中になってくれればいいものを、歯がゆいことに莉緒は不意にチロっと視線を俺に戻してきたりする。

 もちろん、俺はその度に慌てて視線を逸らす。


「……ねえ、悠人。私さ、思うんだけど」


「なんでしょうか」


「……欲望って難しいよね。自分のしたいようにすることは大切だけど、思いのままに解放すると、大変なことになっちゃうかもしれないんだもの」


「そうだね……いきなり何の話ですか?」


「この映画の話だよ」


 映画なんぞ一ミリも頭に入ってなかった。

 俺が映画に意識をやると、好きな気持ちを我慢できなくなった女の子が、男の子を押し倒しかけているところだった。


「……でもね、私はいいと思う。状況を見れば一目瞭然って時もあるでしょ? 行っていいか、ダメなのかは。あとは、度胸の問題だと思うんだよね」


 ジッと俺の目を見つめながら、小さな声で、しかししっかりと俺の脳へ直撃するように言う。

 

「……悠人は、どう思う?」


 キラキラと煌めく大きな目で俺を捉えながら、上半身を起こしてジリジリと俺に近づく莉緒。

 

 わっ、わっ! やばいっ!!

 ここだっ、ここしかない! 繰り出せ、「聖人憑依」っ!!


 俺は心頭を滅却し、頭の中でお経を唱え続ける。

 色っぽい胸の谷間が見えながらも俺は目を細めて無の極地に到達した。


 下半身に集まっていた血が、霧散していくのがわかる。

 よし。収まってきた。やっぱこの技は無敵だ。


 ジッと俺の顔を眺めていた莉緒は、うんざりしたような顔をしたかと思うとこれみよがしに大きなため息をつき、ソファーに座り直してお菓子をバリバリ食べながら映画の続きを見始めた。

 ……が、そんな莉緒は唐突にこう言う。


「……耳かきしてあげよっか。今日は海に行ったし」


 なんで急に耳かき?


 と思ったけど、莉緒の中ではもう決定事項のようで、俺が返事する前にテレビラックのところへ行く。


 どうやら耳かき棒はテレビラックの中にあるようだったが、彼女は床スレスレのところにあるラックの中を探すために、四つん這いになっていた。

 つん、と突き出されたお尻が俺のほうへ向けられて、肉付きの良い太ももの付け根が出るか出ないかのところまで見えて──……。


 ガーン、と頭をぶん殴られたように衝撃を受け、意識がお尻のことしか考えられなくなった。

 聖人を憑依させようとする発想すらもがれて、俺は頭を空っぽにしながら短いスカートの裾のあたりをひたすら凝視する。


 ああ。ヤバい。これはヤバい。

 今わかった。俺、やっぱお尻はダメだ。

 マジでパンツ見たい。あのスカートをぺろっとめくれば、そこには。

 いや、パンツどころか、パンツ越しにその中身すら形をあらわにしているはず。

 あの中はどうなってるんだろう。いったい、どうなって……? 


 垂れ落ちるよだれにすら気づかない程に意識は莉緒のお尻へと──。

 学校の中庭の時と同じく、仮にどのタイミングでパンツが見えたとしても俺は断じて見逃さないほど集中し切っていたが、しかし莉緒が突然振り向いたことには一ミリも反応できなかった。


 ジュルッとよだれを飲み込んだ。

 うっすら微笑んだ莉緒とまともに目が合う。


「さ、ここに寝転んで」


 そんな俺の様子を無視してソファーに座った莉緒は、自分の太ももの上を手でポンポンする。

 俺は莉緒に誘導されるがままに、ふらふらと莉緒に近づきそこへ頭を置いた。


 耳かきをされながら、映画を見る。

 ああ、気持ちいい……。


 いや、何言ってんだ! すでに莉緒の魔力に引っかかっている。

 ってか、それを言うならこの部屋に入った瞬間からこいつのテリトリー内だったんだろうな……。

 ああ、それにしても気持ちいい。


「……こっちは終わったよ。顔、反対向けて」

  

「んー」


 生返事をしたものの、あれ、と思った。

 

 ……反対?

 反対って……莉緒のお腹のほうへ、顔を向けるってこと?

 

 ドクンドクンとうるさい心拍。

 どっ、どうしようっ……!


「……早く」


「はいっ」


 俺は、その場で体をぐるっと回転させたのだが。

 その時、顔を、上側でなく、下側になるように回転させてしまった。


 視界が暗くなって、なんか妙な匂いがするなぁ、と思っていたら、どうやら俺の行いのせいでスカートがめくれあがって、俺の顔はまともに莉緒のパンツに突っ伏したようになっていたらしい。


「やんっ」


「あっ、ごっ、ごめっ……」


「んっ、くすぐったいよ……あんっ」


 パンツに顔を押しつけたまま喋って吐息を当てちゃった俺。

 完全にパニックに陥る。慌てて顔を離してソファーの上で正座し、即座に反省の意を表した。 

 

「ごめんっっ!! そんなつもりじゃっ……、」


「もうっ」


 頬を上気させて、もじもじと視線を床に落としていた莉緒は、おずおずとまた俺を見る。


「……ほら。反対側、しよ?」

 

「……はぃ」


 座り直した莉緒の太ももの上に、顔がお腹側になるようにして頭を置く俺。

 莉緒の体が、俺の頭を包み込む。


 女の子の匂いってのは、今の俺にとっては魔界の瘴気と同じくらい危険なものだ。

 それがこの体勢だと全ての防御措置を剥ぎ取られてしまって、まともに鼻腔に注がれ続ける。


 息が荒くなるのを止められなくて、はっ、はっ、と莉緒のお腹に吹きかけてしまう。

 その度に莉緒は、「んっ……」と小さく喘いでいた。


 ようやく地獄の耳かきタイムを脱出すると、すぐに次の地獄が待ち受ける。

 耳かき棒を元の位置に直した莉緒は、ソファーに座る俺の横に、ピッタリ体を引っ付けるようにして座った。


「……そろそろお風呂、だね」


「ああ……そうだな」


「うちのお風呂、結構大きいんだ」


「うん…………そ、それが何?」


「……ねえ、悠人。聞いて」


「はい」


「……ふと思った話なんだけどね。男でも、二言があってもいいと思うんだ。誰だって神様じゃないし。一度口から出したからって覆しちゃダメなんて、そんなの誰が決めたのって感じじゃない? 男らしくないって思うかもしれないけど、きっと、何が大切かを見極めて正しい答えに修正するのはむしろ大人として大事なことなんだよ。大人の階段を上がるってのは、そういうことなのかなあって、私、思うんだ」


 小さい声で、しかしはっきりと物申す莉緒。

 逃げ道を塞ぐように喋る莉緒にブルブルと震えながらも、しかし俺もこの程度のことで大人しく論破されているわけにはいかなかった。


「……莉緒、聞いてくれ」


「なに?」


「確かに莉緒の言うとおりだと思う。だけどな、俺の中で絶対に変わらないものもある。それは、莉緒のことが大好きで何より大切だということだ。その場の気の迷いで大切なものを傷つけてしまうことだけは避けたいんだ」


 キュッと口を閉じて、「なんだこいつ」みたいな視線を俺に向けてから先に風呂へ入りに行く莉緒。

 それはともかくとして、どうやら難局をまたひとつ乗り切ったか……。

 

 シャワーの音が、シャアアア、とリビングにも聞こえてくる。

 と、お風呂から莉緒の声が聞こえてきた。


「悠人〜〜っ! ちょっと来て」


 なんだ? と俺が風呂場へ近づく。

 だが、ここから先は洗面所兼更衣室的な感じのはず。ここからは入っちゃいけない。

 薄く開けたドアの前で俺が耳を澄ましていると、シャワーの音が止まる。

 莉緒は何か話そうとしているようだ。


「どうした?」


「下着を忘れちゃった! ちょっと持ってきて欲しいんだ」


 ……はい?

 

「おいおい、それはいくらなんでも」


「じゃあ、後で自分で取りに行くけど、その時は素っ裸で──」


「とってきます。どこにある?」


「私の部屋。このお風呂場のね、向かいにドアがあるよ」


 え、女の子の部屋に勝手に入って下着を漁るの?

 ってか、お風呂場の向かいにあるなら自分で取りに行かせてもリビングにいる俺からは見えないんじゃ……

 

「莉緒! 上がってから自分で取れよ! ……莉緒!?」


 再びシャワーの音がしていて、きっと聞こえていないんだろう。

 しょうがないな……

 

 俺は洗面所のドアを開けた。正面にはお風呂場の扉があり、その向こうにはうっすらと人影が映っている。

 

「莉緒!」


 やっと俺の声が聞こえたのか、お風呂場の蛇腹式の扉がガチャっと音を立てた。が、


 えっ、と驚く俺がどうすることもできないタイミングで、扉を盾にして裸を見られないようにすることもなく、大事な部分を腕とかで隠そうとするでもない莉緒が、無造作に扉を開けてくる。


「っっっ────…………おまっ、それっ」


「なぁに?」


「いえ、なんでもありません……」


 裸を見てしまわないように反射的に回れ右をしていた俺。

 なんとなく、一瞬見えた莉緒の表情がなぜかニヤついていた気はするが……。


 水着売り場ではあれほど積極的に莉緒を辱めた俺が今さらこんなふうになっているこの状況が意味不明ではあるが、「今日は莉緒に手は出さない」という自分自身の確固たる信念を貫くには、このシチュエーションは猛毒以外の何者でもなかったのだ。


 下着を取りに行くと約束してしまった。

 くそ。これは、もう行くしかないよな……


 自分で自分を言いくるめながらドキドキしつつ莉緒の部屋のドアを開ける。

 照明をつけると、そこはやはり女の子らしさとかは特に感じないシンプルな部屋だった。

 衣装棚がどれか探す。めぼしい木製の衣装棚があったので、引き出しを順に開けていく。


 すると下着を入れている棚を発見。課されたミッションとしてはこれをパッと取って持っていけばいいだけの話ではあったのだが。

 俺は、理由もわからず、そこに入っているものをジッと見つめた。

 

 まるで下着ドロにでもなったかのような背徳感と興奮。

 というか、ここまできたらどんなものが入っているのか確認しないのもおかしい気がしてきて。

 

 待て待て、莉緒が見ていなかったら何をしてもいいのか? と俺が正気を取り戻して引き出しにあった一つを持ち出そうとした瞬間。

 手に取ったそれ・・を視認した俺は絶句した。


 え……。これ、Tバックじゃない?


 手に取った黒の下着はTバック。両手で広げてまじまじと確認したから間違いない。

 なんであいつ、こんなの持ってんの?

 最初から持ってたってこと? それとも、水着の試着で感覚が崩壊した莉緒が、とち狂ってこんな物を購入して!?


 いずれにしても、どれを持ってきて欲しいのかを莉緒は指示しなかった。

 じゃあ、これでもいいんだ……。


 Tバックを履いた莉緒の姿を否が応でも妄想させられる。

 あの肉付きの良いお尻がほとんど隠されることなく露わになって……。


 頭を引っ掴まれてグワングワン振られたみたいにクラクラしたが、かろうじて聖人憑依に成功した俺は、ほうほうのていで、至って普通のやつ・・・・・を手に取った。

 更衣室に下着を置いて、俺はリビングで頭を抱える。



 なんだこの展開……

 

 

 その後、俺も風呂に入った。

 海で疲れた俺たちは、もう眠くなってきて、歯を磨いて寝ることにした。


 パジャマを着た莉緒と二人で歯を磨いていると、なんだか同棲しているような気分になる。

 鏡越しに目線を合わせてるとなんだか恥ずかしくて、へへ、とお互いニヤけてしまう。

 

「俺さ、リビングで寝るからさ」


「……ダメだよそんなとこ、風邪ひいちゃうよ。疲れだって取れないし」


「じゃあ、どこにするの?」


「……私の部屋のベッド」


「莉緒は、どこに寝るの?」


「……同じところ」


「だっ、ダメダメ! 俺、そこまでなったら我慢できる自信ないよぅ。絶対に、襲っちゃう」


 とうとう弱音が出る。

 これ以上はもう無理だ。そんなところで莉緒の色気に暴露させられ続けたら、絶対に襲う自信がある。

 

「……それはもう諦めたよ。私のことを大事にしてくれようとする悠人の気持ちは嬉しいよ。でもね、私、夜は怖い夢を見ちゃうことがあって。だから、できればぎゅってしててほしいな」


 諦めたって何!?

 

 まあ、とりあえず修行の時間は終わったらしい。

 聖人の力ですら回避困難な場面が登場する厳しい試練ではあったが、これを乗り切った俺はすごいと思う。


 莉緒に悪夢を見せるのは俺とて本意ではない。だから、このお願いは聞いてあげようと思う。

 照明を消して二人してベッドに入ってから、俺は莉緒を抱きしめた。


 俺の胸に顔を埋めた莉緒は、疲れていたのか、すぐにスー、スー、と寝息を漏らす。莉緒の頭を撫でていると、大事なものができたんだなぁ、という実感が湧いてくる。


 そういやこの状況、風華ちゃんや雷人くんも見てるんだろう。あの二人、こんなことをしている莉緒を見て、もっと身持ちを堅くしろー、なんて思ってるんだろな、と俺は想像してニヤニヤしながら眠りについた。





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