つい先週のこと 第三巻 浪人編「東98系統」
雪森十三夜
序章 青春鎖国時代
【ここまでの粗筋】
天然系な主人公「駿河轟」は大学一浪中の身。
最愛の彼女「ベーデ」や留学生の親友「エリー」が海外に去った後、ベーデの従姉「閑香」と知り合うが、受験失敗と共にその関係も押し流される。
常に優柔不断、相手任せ、なりゆき次第、で生きている駿河は、一年の準備期間で大学に合格できるのか。
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二〇一一年九月現在、東98系統(東京駅丸ノ内南口~等々力操車場線)は、長距離路線バスの寸断、廃止が続くなかで、未だに路線分割や廃止をされることなく走り続けている。
昔ながらに続く『変わらないもの』に対する愛着は、誰しも歳を重ねるにつれ、様々なものに抱くようになるのだと思うが、此の路線には僕も格別の愛着を持っている。
東京都交通局と東京急行のバスが相互乗り入れしている此の路線は、目黒通りを中心として東京駅から東急大井町線の等々力駅へと向かう。車は東京駅の丸ノ内南口に発し、慶應義塾大学の三田を通り、目黒駅を抜け、元競馬場から都立大学駅、八雲、等々力という住宅街へと疾走する。
完全乗車には小一時間かかるが、当時、時間が有り余っていた(本当は、全く時間など無かった筈なのだが)浪人生の僕にとって格好の『まとまった』『静かな』時間作りの手段だった。少し急ぎの時には、たしか午後五時以降、首都高速環状線~二号線を経由する料金が十円高い高速系統もあった。でも、此処から暫くの話は、そういう途中下車的なネタを書いたものじゃあない。
一方、《浪人》という当然禁欲的であるべき《鎖国》状態だから、此処からの一編は前後の譚とも、多少ながら趣を異にしている。
注:2024年現在、東98系統は東急バスの単独運行。朝夕を除き大幅に減便されている。
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