第17話 ここを殺人事件の現場とする!
早足で歩けば、追いついた
「ねえ!? 2人だけで訳知り顔するの、本当にやめてよ!」
仕方なく、渓谷のダイビングスポットへ向かいつつ、説明する。
「この
「あ、うん……。最後は人魚になったやつ?」
「ええ! あれ、昔にここを訪れた
「はぁあああっ!?」
相変わらず、うるさい先輩だ。
「今、俺たちは危険なエリアにいます! いちいち騒ぐのなら、もう喋りません」
「……ご、ごめん! 続けて?」
「防人の
反射的に叫ぼうとした音々は、ハッと気づき、両手で口を押さえた。
(この任務に一番向いていない人が来たな……)
呆れつつ、立ち止まる。
釣られて、女子2人も。
「1つずつ、説明しますね?」
コクコクと頷く、音々。
それを見ながら、解説する。
「村で言っていた『
しかし、それだけで終わらない。
「立ち去ろうとした女は、理由は不明ですが、村に住み着いた」
「村としては、水源をどうにかするため、だろうね?」
首肯しつつ、現代の説明へ戻る。
「同じ防人なのに、俺を無視して……。というより、後回し! 対して、先輩と睦実には異常なまでの歓迎ぶりだった。その理由は、初代の天女と同じ目に遭わせるから。つまり、お供えだったわけです」
ポカンと口を開けた、音々。
我に返って、反論する。
「で、でも! 今は、昔と違うよ!? そんな馬鹿なこと――」
「先輩? この村を見て、どう思った?」
睦実の指摘に、音々は黙り込む。
「昔みたいと思ったよね? そういうことだよ」
「でも! よ、呼び方だけで、大げさな……」
睦実は、音々に向き直った。
「相良先輩……。そのセリフ、風鳴の人に言える? 地元でずっと事件解決を目指していて、女子3人が行方不明なんだよ?」
頭を殴られたような感じの音々は、ショックを受けたまま。
片手を頭に添えたまま、ボソリと呟く。
「じゃあ、行方が分からない
「残念ですが、この村に関わりたくない方針だそうで! 隣の
小さく震え出した音々は、思わず言う。
「う、嘘でしょ!? 現代の日本で、そんなことが……」
パニックになりかけた彼女のため、要点を言う。
「県警を動かしたければ、死体が必須」
「すぐに見つかる場所とは思えないけど! 原型を留めていないだろうし」
睦実が、あっさりと切り捨てた。
落ち込んだ音々に、俺たちの覚悟を告げる。
「いいですか? 俺と睦実は、必要があれば、この村を消します」
音々は、反論せず。
凄みのある笑顔で、睦実も念押し。
「ボクと駿矢は、いざとなれば地形ごと潰すから! 先輩は巻き込まれないよう、隣村まで逃げてください。御神刀を完全解放した後は、そちらを気にする余裕がないから」
「……分かった」
音々は、しょんぼり。
睦実が、指摘する。
「先輩が『説明しろ』と言ったから」
「それね? ごめん! 私、ちょっと怖い……。怖いよお……」
耐えきれなくなったようで、目を閉じたまま、深呼吸する音々。
やがて、パンパンと自分の頬を叩いた。
「よしっ! 君たちは犯人も目星がついていそうだけど、これ以上は教えないで! 私、ぜったいに警戒しちゃうから……。今後も、
「了解……。先輩には、全てが終わり、
「うん! そうして」
緊張したまま、3人で歩きだす。
やがて、見覚えのあるワンボックス2台。
メガネをかけた男子が、機材が置かれた場所でチェアに座っている。
「やあ! こんな場所まで、どうしたの?」
彼と話していた睦実が、答える。
「やっほー! 暇だから、ホラースポットの見学だよ」
首をかしげた男子は、すぐに思いつく。
「ああ、銀山で働いていた鉱夫と遊女を始末したって……。僕は、同じサークルの人がピンチになった場合の備えだよ」
「よく、こんな狭くて暗い場所に潜るね?」
「そう言われたら、終わりだけどさ……。やっぱり、ロマンがあるんだよ」
明るい雰囲気に、音々も加わる。
「どうやって、潜るんですか?」
「普通のスキューバダイビングの装備と、ライト……。それに、入口へ戻ってこられるように水中のロープであるガイドラインを辿っていくか、繋ぐのさ!」
俺たちが聞き入っていることで勢いがついたのか、平べったい無線機を見せる。
さらに、小さな装置も。
「これ、何だと思う? 水中通話だ! ダイバーは頭にこの装置をつけて、骨振動による通話さ! 従来の水中ヘルメットなしで使える。僕が見せた無線機からケーブルを伸ばして、こちらとも通話可能――」
『き、聞こえるか、
鬼気迫った声が、いきなり飛び込んできた。
『みんな、殺された……。ちくしょう! ボボボ……。俺は何とか脱出でき……ザザザ ブクブクブク』
「おい! どうした!?」
『くそっ……。離せ、この……』
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