コンビニ店長邪神おじさん
あおいるか
第1話
コンビニ店長邪神おじさん
シナリオ
登場人物
・吉田健二(34)……コンビニ「セイントマート〇〇町一丁目店」の店長。ある日突然邪神の力を手に入れてしまい、日常生活が困難。普通に生きたい。
・ルイナーラ(500)(外見10)……邪神。吉田に邪神の力が宿った原因。自分の目的のために吉田に付き纏う。赤い目に黒髪のツインテール。
・百瀬伊吹(18)……「セイントマート〇〇町一丁目店」の新人アルバイト。
大学に通いながら声優を目指している。黒髪ポニテ。
・佐渡春樹(45)……「セイントマート○〇町一丁目」によく訪れるクレーマー。
「☆」1コマ想定
【1ページ】
○セイントマート・全景(夜)
☆閑静な住宅街にある狭い駐車場付きのコンビニ。車は止まっていない。
○同・外観(夜)
☆Saint Martのロゴの横に〇〇町一丁目店と書かれている。
〇〇の部分はぼやけて見えない。
○同・店内(夜)
☆吉田健二(34)がレジに立ち、精算機で商品を読み取っている。
対面に若い男性客が立っていて、吉田を天井から三人称視点で見ている感じ。
☆吉田のバストアップ。名札には(店長 吉田健二)と書かれている。
レジ台に置かれてるエナジードリンクも見える感じで。
吉田「袋詰め致しますね」
☆吉田の手が、レジ台に置かれたエナジードリンクの缶を掴むと、
りんごの芯みたいに潰れる。バキゴキバキバキとえげつない効果音。
吉田の声「あっ」
【二ページ】
☆潰れて飛び散った中身の液体が、吉田と客にそれぞれかかる。大ゴマ。
☆客は吉田と潰れた缶を交互に見て、驚きの表情を浮かべる。
☆後頭部が見える程勢いよく頭を下げる吉田。数本白髪がある。
吉田「申し訳ありません! ただいま新品をお持ちします!」
☆吉田の手がキッチンペーパーを束でレジ台に置く。
吉田「こちらで拭いてください!」
【三ページ】
☆商品棚の並ぶ売り場を小走りしながら、頭を抱える吉田。
吉田M「ま、またやっちまったー!」
☆売り場にいる客とぶつかりそうになる吉田。すれ違いざまに謝る。
吉田の走り去った風圧で客の服や髪が持ち上がる。
吉田「すいません!」
☆走っている吉田の顔のアップ。首から上のみ。
吉田M「俺、吉田健二はここ、セイントマートの店長を務める
三十四歳独身の普通のおっさんだ。」
☆ペットボトルや缶が並ぶドリンク売り場の前に立つ吉田。
吉田M「だがある日、邪神の力が宿り、人智を超えた怪力になってしまった」
☆ドリンク売り場で吉田が目をキョロキョロさせる。上半身だけ。
吉田M「何を言ってんだと思うかもしれないが、本当だ。現にー」
【四ページ】
☆吉田の手がエナドリの缶を握り潰したカット。
吉田M「力加減をミスるとなんでも破壊してしまうし」
☆吉田が両目からビームを放つカット。上半身。
吉田M「目からビームも出るようになった」
☆吉田の手が売り場のエナドリ缶を指の先端で優しくそっと持つ。
吉田M「この力によって俺は日常生活で苦労を余儀なくされている」
☆レジに向かって走る吉田の後ろ姿。
吉田M「俺はただ普通に生きたいだけなのに…!」
☆吉田がビニールを持つ若い客にお辞儀する。
若い客は背を向けてレジから離れている。
ビニールには新品のエナドリ缶が透けて見える。横から見た構図。
吉田の背中に百瀬伊吹(18)が声をかける。
吉田「ありがとうございましたー」
百瀬の声「店長!」
【五ページ】
☆百瀬のバストアップ。ニコニコ元気な様子。
(トレーニング中 百瀬伊吹)と書かれた名札をつけている。
吉田は手を左右に振って否定するポーズ。
百瀬「戻りました! レジ代わってくれてありがとうございます!」
吉田の声「大丈夫。電話ならしょうがないよ」
☆奥の百瀬が訝しげな表情。手前に、濡れている吉田の後ろ姿。
吉田はぎくりとして身を震わせる。
百瀬と吉田は隣同士のレジに立っている。
百瀬「…店長なんか甘い匂いしません?」
吉田「あはは…き、気のせいじゃない?」
☆吉田が焦った顔のアップ。
吉田M「わ、話題を逸そう…」
吉田「さっきの電話大丈夫だった?」
☆困ったような笑顔を浮かべる百瀬。レジ台に片手をついている。
百瀬「はい! 親からでした」
「オーディションの合否連絡かと思って焦りましたよ…」
☆吉田が顎に手を当てて上を向く。
吉田「そっか、確かー」
【六ページ】
☆吉田と百瀬がレジ正面に体を向けて、顔だけお互い向きあっている。
後ろから見る構図。
吉田「声優目指してるんだっけ」
百瀬「はい! 大学通いながら養成所に入る為に勉強中です!」
☆吉田が眩しい物を見る目をする。上半身のみ。
吉田「そっか、凄いね」
☆両手をブンブン振る百瀬。上半身のみ
百瀬「いえ、私なんて全然…!」
☆吉田がふと視線を下に向ける。
吉田「いやそんなこと…」
☆満杯のゴミ箱
☆吉田の顔。
吉田M「こりゃ捨てないとな」
吉田「ちょっとゴミ出してくるからレジお願い」
百瀬の声「了解です!」
【七ページ】
○同・店内(夜)
☆吉田がうんざりした顔で従業員用出入口と書かれた扉から出てくる。
吉田「あー重かった」
☆吉田が佐渡春樹(45)の突然の大声にびくりと跳ねる。
佐渡の声「(怒声)早くしろよ!」
☆何かにピンとひらめく吉田
吉田M「この声は…」
☆売り場からレジに顔を覗かせる吉田。
☆コマの奥でレジ前で佐渡が百瀬を指差し、怒った表情。
百瀬は頭を下げている。
吉田の後頭部が手前にある。
佐渡「ちんたらしてんなよ」
百瀬「申し訳ありません!」
吉田M「やっぱりクレーマーか!」
【八ページ】
☆百瀬を後ろ手で庇う、吉田。百瀬は辛そうな顔。
吉田は媚びるような笑み。
吉田を正面から映し、佐渡の指が百瀬を指差している。
吉田「お客様、どうされましたか?」
佐渡「こいつが会計おせぇんだよ」
☆頭を下げて謝る吉田と怒った顔の佐渡を横から見た構図。
吉田「それは…失礼しました。私が会計代わります」
佐渡「ちっ。はやくしろ」
☆吉田は佐渡の商品をスキャナでスキャンしていく。手元のみ映す。
佐渡の声「まったくよぉ」
☆吉田と百瀬の後ろ姿。
百瀬と吉田の前に立つ佐渡は嘲りの表情で百瀬を指差す。
百瀬がぴくりと体を揺らす。
佐渡「何でこんな使えない奴雇ってんだ」
☆吉田の誤魔化し笑い。顔のみ。
吉田「あはは…申し訳ありません」
【九ページ】
☆吉田の手が差し出すビニール袋を佐渡の手がひったくる
吉田の声「こちら商品です」
佐渡の声「チッ!」
☆レジに背中を向けて去っていく佐渡。吉田は軽く頭を下げている。
吉田「ありがとうございましたー」
百瀬の声「店長」
☆手前に吉田の後頭部。
顔が少し見えていて、無理に笑顔を浮かべている感じ。
奥の百瀬は沈んだ顔をしている。
百瀬「すいません…ありがとうございます」
吉田「大丈夫! 今の客よく来るクレーマーだから、
言われたこと気にしなくていいよ!」
☆沈んだ顔で俯く百瀬。
百瀬「…はい」
☆吉田が浮かない顔で百瀬を見る。
【10ページ】
○コンビニ・裏口(夜)
☆夜空の月
☆疲れた顔の吉田が、コンビニの裏口から顔を覗かせる。
吉田「やっと退勤だ…」
☆正面を見た吉田が嫌な物を見た顔をする。顔のみ。
吉田「げっ!」
☆手前に吉田の後ろ姿。その奥にルイナーラ(500)(外見10)が
怪しげな笑みを浮かべて立っている。
☆ルイナーラが無邪気な天使のような笑みを浮かべる。顔のみ。
【11ページ】
☆ルイナーラが吉田の腰に手を回して抱きつく。
吉田は腰だけ、映す中心はルイナーラでニコニコ笑っている。
ルイナーラ「パパー!」
☆慌てる吉田。顔のみ。
吉田「おいおま…っ!」
☆吉田が腰のルイナーラの腕を掴む。腰のみのカット。
ルイナーラの声「お?」
☆吉田の手がルイナーラの腕を掴み、投げ捨てる。弾丸の様に射出される。
ルイナーラは自分の状況にピンと来てない表情。
吉田「離れろッ!」
☆ガードレールに突っ込んだルイナーラが砂煙を上げる。
【12ページ】
☆投げ終えた姿勢の吉田、
ガードレールに突っ込んだルイナーラは砂煙を上げる。
☆キョロキョロと辺りを見回す吉田。
吉田M「誰も見てないよな?」
☆誰もいない夜道。
☆吉田が胸に手を当ててほっと息を吐く。
☆吉田が砂煙の先を睨む
吉田「俺を社会的に殺す気か! この邪神め!」
吉田M「独身のおっさんが幼女と抱き合ってたら事案だ!」
☆煙が晴れかけて、ルイナーラのシルエットが浮かぶ。
ルイナーラ「なんじゃ。お主―」
【ページ13】
☆イタズラな笑みを浮かべるルイナーラ。無傷。
ルイナーラ「つれないのぅ」
☆ルイナーラを見下ろす吉田の上半身。憮然とした顔。
吉田「何しにきたんだよルイナーラ」
☆不敵な笑顔のルイナーラ。
ルイナーラ「決まっておろう? お主にお願いをしにきたのじゃ」
☆ルイナーラの小さく華奢な指が吉田を指差す。
☆ルイナーラの顔のアップ、不敵な笑顔を浮かべている。
ルイナーラ「わしと一緒に父上を殺した神に復讐するのじゃ!」
【ページ14】
○閑静な住宅街(夜)
☆閑静な住宅街。人通りが少なく、街灯がぽつりぽつりとある。
☆ルイナーラと吉田が二人で人気のない夜道を歩いている。
吉田が前。ルイナーラは半歩後ろ。
☆クッキーを美味しそうな顔で齧っているルイナーラが肩をすくめる。
ルイナーラ「…だから何度も説明しとるじゃろ」
☆吉田の半歩後ろを歩くルイナーラがクッキーを齧っている。
コマの中心はルイナーラで吉田は見切れている。
ルイナーラ「わしが父上である神を適当な人間を依代に復活させようとして
失敗した結果、お主にその力が宿ってしまったのじゃと」
☆ルイナーラが口元に両手を当てて、リスみたいに口をモグモグさせている。
ルイナーラ「じゃから…」
【ページ15】
☆奥のルイナーラが口元にクッキーのカスをつけたまま不敵な笑み。
手前に吉田の後ろ姿。
ルイナーラ「わしと一緒に父上を殺した神に復讐して欲しいのじゃ!」
吉田「嫌だよ」
☆ルイナーラが仰向けになり、手足を動かして駄々をこねる。
立ったままそれを見下ろす吉田は白けた顔をしている。
ルイナーラ「なんでじゃー!」
吉田「俺は普通に生活したいの。復讐とか俺に関係ないし、あと…」
☆ルイナーラをつまらない者を見る目で見下ろす吉田。顔のみ
吉田「邪神に協力したくない」
☆ルイナーラが上体を起こして顔を赤くする。
ルイナーラ「邪神とは失礼な!」
☆ルイナーラがギャグっぽく怒った顔で吉田を指差す。
吉田は後ろ姿で顔のみ。
ルイナーラ「ただ、わしは父上と一緒に宇宙の星々を破壊して回っただけじゃ!」
吉田「どう考えても邪神だろ」「滅ぼされて当たり前だわ」
【ページ16】
☆はぁ、とため息をつく吉田。呆れ顔。ルイナーラのいる下に目線。
顔のみ。
吉田「ったく、毎日粘着して来やがって…復讐したいなら一人でやれよ」
☆やれやれ顔で言い返すルイナーラ。吉田の顔がある上に目線。顔のみ。
ルイナーラ「言ったじゃろ。父上を復活させる魔法で力を使い果たした今のわしはちょっと丈夫なだけの人間同然じゃと」
☆ルイナーラを置いて歩き出す吉田。
その背中を見ているルイナーラの後ろ姿。
吉田「そもそも、俺の体を乗っ取って邪神を復活させようとした奴に
協力したくない」
☆ルイナーラが後頭部に手を当てて、誤魔化し笑い。
ルイナーラ「ま、まぁ失敗したんじゃから良いではないか!」
☆振り返った吉田がルイナーラに怒った表情で吠えかかる。
吉田「よくな…」
☆吉田の両目のアップ。むずむずと擬音。
吉田の声「あっやべ」
【ページ17】
☆夜空をハトが飛んでいる小さいコマ。
☆吉田が顔を頭上に向ける。
☆吉田の両目から空にビームが放たれ、ハトを飲み込む。
☆ビームが終わった後、ハトの羽が一つひらひらと落ちてくる。
☆吉田を頭の上から見た図。手のひらに羽が乗っかる。
【ページ18】
☆手の中の羽を見てギャグっぽく顔を引き攣らせる吉田。
吉田M「やらかしたぁー!」
☆吉田が羽を両手で包んで目を瞑って祈る。
吉田M「生き返れ…」「生き返れ…」
☆握った手から光が溢れる。
☆光が収まると、吉田の手に無傷のハト。
☆安堵する吉田。上半身。ハトが怯えた目を吉田に向ける。
【ページ19】
☆飛び去っていくハト。
☆空を見上げる吉田、横にいるルイナーラが呆れた顔で吉田を見上げる。
ルイナーラ「怒るとビーム暴発するって前に言ったじゃろー?」
☆ルイナーラの両肩を掴んで吉田が詰め寄る。
吉田「覚えてるよ! いい加減、この力手放す方法ないのか!?」
「人殺しちゃったらどうすんだよ!」
☆ルイナーラの真剣な顔、上半身のみ。肩には吉田の手。
ルイナーラ「わしに力が残っておればとっくにしておるよ」「殺しについては…」
☆舌を出して憎たらしい笑みのルイナーラ。ジト目の吉田。
ルイナーラ「死んでも今みたいに蘇生すれば良くない?」
吉田「邪神の倫理観やめろ」「殺すのが嫌なんだよ」
【ページ20】
☆ルイナーラが肩をすくめて言う。
ルイナーラ「人間の精神は軟弱じゃのう」「軟弱と言えば…」
☆奥のルイナーラが吉田を見て嘲笑する。手前の吉田は後ろ姿。
ルイナーラ「お主のあの無礼な客に対する態度、実に情けなかったのぅ…」
☆バツの悪そうな顔の吉田。怒っている佐渡の顔が吉田の顔の上に蘇る。
吉田「見てたのかよ…」
☆ルイナーラが拳を握って力説。吉田は億劫そうな顔。
並んで歩いている吉田とルイナーラを正面から見ている図。
ルイナーラ「あんな奴、ぎゃふんと言わせてやればいいのじゃ!」
吉田「トラブルになったら面倒だろ」「俺は平穏普通に暮らしたいの」
☆吉田を見上げるルイナーラ。
ルイナーラ「普通、普通て何故そこまで普通に拘るんじゃ」
吉田「それは…」
【ページ21】
* * *(フラッシュ)
○吉田の実家・吉田の自室
☆背中向けて座り、パソコンで作業中の吉田健二(21)。
近くに「新人賞締切30日まで! ラストチャンス!」と書かれた
張り紙がある。
* * *
☆吉田は複雑な感情を精一杯押し込めた無表情で下を向く。
ルイナーラが横からそれを見ている。
吉田「別に大した理由はないよ」
☆下から見上げたルイナーラは後頭部に両手を当てる。背景に夜空。
ルイナーラ「理解に苦しむのぅ」
☆夜空。
☆夜明け、明るくなりかけの空
☆真昼の空、太陽と雲。
【ページ22】
○セイントマート・外観(夜)
T「数日後」
○同・店内(夜)
☆客がほぼ居ないガラガラの店内。
一人だけ(佐渡)店内の端っこの方で商品を見ている。
☆時計は午後7時を指している。
☆レジに立って正面を見ている吉田に同じ横のレジから百瀬が声をかける。
百瀬「店長!」
☆振り向く吉田。
☆嬉しそうな顔の百瀬。
百瀬「聞いてください!私―」
【ページ23】
☆嬉しそうな顔の百瀬のアップ。両手を握り拳にしている。
百瀬「声優養成所のオーディション受かりました!」
☆驚いた顔で拍手する吉田。
吉田「おぉ! おめでとう!」「これで夢に一歩近づいた訳だ」
☆満面の笑みの百瀬の顔。
百瀬「はい! ありがとうございます!」
☆独特の効果音と共にコンビニの出入り口が開く。
ルイナーラの足が店の中に足を踏み出す。
☆レジから身を乗り出した吉田の表情が固まる。
吉田「いらっしゃいま…」
【ページ24】
☆自動扉を背に嫌らしい笑みを浮かべるルイナーラが立っている。
☆ルイナーラが歩く。足だけのカット。
☆レジの前に立つルイナーラ。吉田は後ろ姿。
吉田「お前何しに…」
☆ルイナーラがニコリと満面の笑みを浮かべる。
ルイナーラ「パパー!」
☆笑顔のルイナーラと狼狽する吉田を横から引きで見た構図。
吉田M「こいつ職場でやりやがった!」
☆首を傾げる百瀬の顔。首から上。
百瀬「え?」「店長って確か独身じゃ…」
【ページ25】
☆吉田は焦った顔で大量の汗を流し、横に立つ百瀬を見る。
百瀬は驚いた表情。
吉田「も、百瀬さん! ちょっとの間レジ任せても良い⁉︎」
百瀬「は、はい」
☆開いたコンビニ出入り口に向かって。ルイナーラの背中を手で押す吉田。
ルイナーラと吉田を横から見た図。
吉田は出入り口を見ていて、ルイナーラは吉田に目線を向けている。
ルイナーラ「そんな怪力で押されないでくれんかのぅ」
吉田「いいから出るぞ」
○同・駐車場(夜)
☆コンビニを出た外の駐車場の端っこで向かい合う吉田とルイナーラ。
☆怖い顔で見下ろす吉田の顔アップ。
吉田「何しに来た」
☆見上げるルイナーラ。ニヤニヤしている顔のアップ。
ルイナーラ「わしの復讐に非協力的なお主に対する嫌がらせじゃ」
吉田の声「おい」
【ページ26】
☆後頭部を掻きながらため息をつく奥の吉田。手前にルイナーラの後ろ姿。
吉田「とにかく帰れ。仕事中は来るんじゃない」
ルイナーラ「わかったのじゃ」
☆吉田の顔。横目で疑いの目をしている。
吉田M「随分あっさり頷くな…」
☆ルイナーラが片目をつぶって吉田の背後を見る。
奥にルイナーラ、手前に吉田の後ろ姿。
ルイナーラ「なに、わしに構っておる場合ではないと思っての」
☆振り返る吉田。顔。
☆百瀬が落ち込んだ表情で立っている
百瀬「…店長」
吉田「百瀬さん、どうしたの?」
【ページ27】
☆沈んだ表情の百瀬。上半身のみ。
百瀬「レジでミスしちゃって、どうしたら良いかわからなくて…」
☆吉田のニコリと笑った顔。
吉田「わかった。俺が行くよ…っと」
☆吉田が店の窓ガラスに視線を向ける。何かに気づいた顔。
☆窓ガラス越しのレジの前に不機嫌そうな佐渡が立っていた。
【ページ28】
○同・店内(夜)
☆吉田が後ろ姿の佐渡を見上げながら申し訳なさそうに言う。
百瀬も吉田の後ろに控えている。
吉田「お待たせしましたお客様。会計ミスで返金でよろしかったですか?」
☆不機嫌そうな佐渡の顔。上半身。
佐渡「そうだよ。いつまで待たせんだ、早くしろ」
☆吉田の手がレジのタッチパネルを操作し、
返金処理と書かれたボタンを押す。
☆タッチパネルを操作している吉田(正面)。
後ろ姿の佐渡(手前、ほぼ見切れてる)が吉田の背後に控える百瀬を指差す。
佐渡「前もこの店員に迷惑かけられたんだけど」
吉田「申し訳ございません」
☆タッチパネルを操作しながら頭を下げる吉田。百瀬も後ろで頭を下げている。
【ページ29】
☆不機嫌な顔で言う佐渡(奥)手前の吉田は後ろ姿で頭を下げている。
佐渡「あんた店長だろ? ちゃんと指導しろよ」
吉田「申し訳ございません」
☆吉田の顔にたらりと汗の滴が流れる。
その後ろで百瀬が目元の涙を手で拭いた
百瀬「ぐすっ」
* * *(フラッシュ)
☆嘲笑するルイナーラの顔。
ルイナーラ「お主のあの無礼な客に対する態度、実に情けなかったのぅ…」
* * *(フラッシュ)
☆苦い顔でタッチパネルを触っている吉田。上半身。
吉田M「…言い返した所で何にもなりゃしない」
☆横目で背後の百瀬を流し見る吉田。百瀬は目元の涙を拭っている。
佐渡の声「そういや、さっきレジから聞こえたんだけどよー」
吉田M「百瀬のことなら後で慰めれば…」
【ページ30】
☆人をバカにした笑みを浮かべる佐渡の顔。
佐渡「この女、声優がどうとか言ってたけど、
こんな仕事できない奴が成れる訳ねぇだろ」
☆目を見開く吉田。その後ろで酷くショックを受けた顔の百瀬。
(回想)
☆文字だけのコマ
吉田M「俺には夢を諦めた過去がある」
〇吉田の自室・実家
☆過去の吉田(21)が両手をあげて喜んでいる
吉田(21)「よっしゃ! 一次審査通った!」
吉田M「だからこそ、俺は夢を追う楽しさと」
☆過去の吉田が机でつっぷしている後ろ姿。
周囲には丸めた紙が散乱している。
吉田M「苦しさを知っている」
(回想おわり)
☆ギリっと俯く吉田が歯を食いしばる。目から下だけ。
【ページ31】
☆正面を向く吉田が毅然とした表情、その先には佐渡がいる。
吉田の後ろには涙に濡れた目を見開く百瀬。
吉田M「それを赤の他人が簡単に否定して良いはずがない」
吉田「謝ってください」
☆半ギレで怖い顔の佐渡。
佐渡「は?」
☆吉田はムッと表情に怒りを滲ませる。両目にむずむずと擬音。
☆怒った吉田の顔。目から光が溢れ出している。
吉田「謝ってくださいと言…」
【ページ32】
☆吉田の目の位置からビームが放たれ、佐渡の頭上を通り過ぎる。
百瀬は吉田を見ている。佐渡は吉田と百瀬を見ている。
その様子を斜め上天井から見る感じ。
☆穴が空いた天井。煙と共に夜空が見える。
☆呆然とした顔の吉田。
☆驚愕に目を見開く百瀬の顔。
☆佐渡の目線が自分の失った髪に向く。
【ページ33】
☆禿げた頭を見て絶叫する佐渡。
佐渡「俺の髪がぁああああああああ⁉︎」
☆恐怖に引き攣った顔で叫ぶ百瀬。
百瀬「きゃぁああああああああああ⁉︎」
☆やっちまったという顔で叫ぶ吉田。
吉田「うわぁああああああああああ⁉︎」
☆コンビニの出入り口から転けそうになりながら逃げていく佐渡。
佐渡「た、助けてくれぇ!」
☆佐渡のポケットからスマホを落ちる。
☆吉田が慌てた顔でレジから身を乗り出し、手を伸ばす。
吉田「ちょ、待っ!」
【ページ34】
☆追いかけようと、焦った顔で横を向いた吉田。
☆怯えた表情で後ずさる百瀬。スマホを耳元に当てている。
吉田の後頭部、百瀬と目が合っている。
百瀬「ひっ!」
☆手を伸ばす吉田。必死の顔で。
吉田「ま、待ってくれ! 百瀬さん!」
☆吉田の両目のアップ。むずむず
☆吉田は無理やり作った引き攣った笑みをニコッと浮かべる。
吉田M「やべ、ここで焦ったらまたビームが出る!」
百瀬の声「ひっ!」
【ページ35】
☆笑顔の吉田の顔。目はビーム発射の余波で発光している。
吉田「大丈夫。怖くないから。話を聞いてくれないかな?」
☆後ずさる百瀬はレジの壁際に追い詰められる。
百瀬「こ、来ないで!」
☆百瀬の足。物に躓く。
☆頭を壁にぶつける百瀬。
☆壁に沿った姿勢で崩れ落ちる百瀬、俯いて気絶。携帯が傍に落ちる。
☆それを吉田の手が屈んで拾う。
【ページ36】
☆吉田の手が110と書かれたスマホの通話を切る。
☆スマホを覗く吉田が安堵の表情。
吉田「ふぅ…」
☆頭を抱えてギャグっぽく騒ぐ吉田。
吉田「って! やべぇ! どうしよう!」
☆頭を抱えた吉田が滝の様な汗をかく。
吉田「二人に見られたし、クレーマーには逃げられた」「いや、それより今他の客が来たら…!」
☆コンビニの出入り口の自動扉が開く。
☆反射的に振り返る吉田。
【ページ37】
☆自動扉を背に嬉しそうな顔でキョロキョロするルイナーラ。
ルイナーラ「おぉ。随分派手にやったのぅ」
☆吉田の足。走るカット
☆吉田がルイナーラの両肩を両手で掴んで必死の形相で語りかける。
ルイナーラ普通の表情。
吉田「良い所に来た! 頼む助けてくれ!」
○同・店内(夜)
☆コンビニの外側の自動扉に臨時休業の張り紙。
☆気絶している百瀬の前、に吉田とルイナーラが立っている。
百瀬をルイナーラが見下ろしていて、
吉田はルイナーラを焦った顔で見ている。
ルイナーラ「成程のぅ。事情はわかったのじゃ」
吉田「な、なにか解決策はないか⁉︎」
【ページ38】
☆ルイナーラが人差し指を立てる。吉田は両手を広げて縋るような表情。
横から見る構図。
ルイナーラ「記憶を消す魔法ならある。今のわしには使えんが、お主なら使える」
吉田「ほ、本当か⁉︎ 使い方教えてくれ!」
☆ルイナーラの意地悪な笑みを浮かべた顔。
ルイナーラ「タダでは無理じゃのぅ? わしの復讐に協力して…」
吉田の声「それは無理」
☆ぷいっとそっぽを向くルイナーラ。
ルイナーラ「それじゃあ教えてやらんのじゃ」
☆吉田は顎に手を当てて考える。苦渋に満ちた顔。
吉田M「今、俺の今後の生活が掛かってる。なにかないのか…」
☆ひらめいた表情の吉田の顔。
クッキーを食べているルイナーラがコマ上に表示。
【ページ39】
☆真顔の吉田の顔アップ。
吉田「教えてくれたら明日クッキー奢ってやる」
☆無邪気な笑顔のルイナーラの顔アップ。
ルイナーラ「魔法のことならわしに任せるのじゃ!」
☆気絶した百瀬の頭に片手を乗せる吉田、目を瞑っている。
ルイナーラはその近くに立ち、吉田と百瀬を見ている。
ルイナーラ「目を瞑ったらわしの後に続いて呪文を唱えるのじゃ。」
☆ルイナーラが目を瞑り、言葉を呟く、地球の言語じゃない感じの。
☆吉田も目を瞑り後に続いて唱える。
吉田「これは…」
【ページ40】
☆百瀬視点の様々な記憶が映像としてコマ内に溢れかえる。
子供の頃とか学校の風景とか。
吉田の声「…百瀬さんの記憶?」
☆目を瞑っている吉田とその後ろで腕を組むルイナーラ。
ルイナーラ「その通りじゃ。後は消したい記憶を強く念じれば完了じゃよ」
☆直近の記憶の映像がコマに映る。
ビームを打つ吉田を百瀬の視点から見た様子。
吉田M「成程…これを消せば…」
☆ルイナーラが人差し指をピンと立てる。
ルイナーラ「言い忘れておったが、慎重にやらないと人格ごと消えるのじゃ」
☆ギャグっぽい切羽詰まった表情で振り返る吉田。
吉田「それを早く言えよ!」「もう消しちゃったよ!」
【ページ41】
☆焦った顔のルイナーラが百瀬を見下ろしている。
吉田も不安げに覗き込んでいる。
ルイナーラ「さ、最悪蘇生魔法を応用すれば復元できるのじゃ。
どれ、試しに起こしてみるぞ」
吉田「大丈夫だよな…?」
☆朧げに目を開けた百瀬が、焦点の合ってない目で言う。
百瀬「ここは何処…? 私は誰?」
☆ルイナーラと吉田がギャグっぽく絶叫。
ルイナーラ「消しすぎたぁー!」
吉田「消しすぎたぁー!」
【ページ42】
○セイントマート・外観
☆昼間の空。太陽と雲とセイントマート。
T「―翌日」
○同・店内
☆店内。店員が売り場で品出ししている。
☆吉田がビームで開けた穴が木の板を重ねて塞がれている。
それを吉田がため息混じりに見上げている。
吉田はレジの中にいる。
☆吉田の立つレジ台にクッキーが大量に入ったカゴが置かれる。
ルイナーラの声「会計よろじゃ」
☆上を見ていた吉田がレジに視線を向けて嫌そうな顔をする。
吉田「はーい。…げっ!」
【ページ43】
☆ルイナーラがニヤニヤしながら吉田を見上げている。
吉田「仕事中は来るなって言っただろ」
ルイナーラ「クッキー奢るって約束じゃろ?」
☆渋々の顔でクッキーをスキャンしていく吉田。
吉田「…そうだったな」
☆天井の塞いだ穴を見上げるルイナーラ。上半身。
ルイナーラ「なんとかなったようじゃの」
☆疲れた顔の吉田。コマ上に複数のミニキャラ百瀬が
支離滅裂な言動をしている様子。
吉田「…記憶消すのに死ぬ程苦戦したけどな」
「まぁクレーマーにも通報されなかったし」「監視カメラ映像も消せたし」
☆コンビニの出入り口の自動扉が開く。
【ページ44】
☆開いた扉を背に禿頭になった佐渡がキョロキョロと
視線を彷徨わている。
吉田の後頭部が映る。
吉田の声「あっ」
☆吉田の手が忘れ物と紙が貼られたスマホを取る。
☆佐渡のスマホを持って後ろ姿の吉田がそれを差し出す様子。
佐渡が怯えた表情を浮かべる。
吉田「お客様昨日の忘れ物…」
佐渡「ひっ!」
☆慌ててコンビニの出入り口から逃げていく佐渡。背中を向けて、
吉田に怯えた目を向けている。
佐渡「殺さないでくれぇ!」
☆ルイナーラが出口の方を見ながら嘲笑って言う。腕を組んでいる。
ルイナーラ「なんじゃ、情けないのぅ」
☆忘れ物届けの紙に吉田の手がペンを使って記入している。
吉田の声「渡せると思ったのに…」
【ページ45】
☆ペンが吉田の手の中でボキリと折れる。
吉田の声「あっ」
☆手の中の折れたペンを見つめる吉田の後ろ姿。それを見ているルイナーラ。
ルイナーラ「ん? どうかしたかの?」
☆手の中の折れたペンのアップ。
吉田の声「いや、邪神の力はクソだけどさ」
☆前を向いて明るい顔の吉田がクッキーの入ったビニールを
ルイナーラに渡す。
吉田「あのクレーマーに一泡吹かせられたのは良かったなって」
吉田「ほらよ」
☆クッキーを食べるルイナーラ。ニヤニヤとした笑み。手にはビニール。
ルイナーラ「そりゃ良かったの。なら、わしの復讐にも協力…」
吉田の声「それは無理」
☆不満げな顔のルイナーラが吉田に身を乗り出す。
吉田も真っ向からルイナーラを見据える。その間に吹き出しで百瀬の声。
ルイナーラ「誰のおかげで昨日を乗り切れたと思っとるんじゃ?」
吉田「それはクッキー奢るってことで話がついただろ」
百瀬の声「店長!」
【ページ46】
☆ルイナーラと吉田が揃って振り向く。誰だ?って顔をしている。
☆私服姿の百瀬がバストアップ。不安げな顔。
百瀬「店長、今大丈夫ですか…?」
☆吉田はレジの前に立つルイナーラの肩を掴み、
百瀬に笑顔を向けながらどかす。ルイナーラは不満げな顔。
吉田「大丈夫、大丈夫!」
ルイナーラ「お、おい」
☆吉田が口元に手を当ててルイナーラの耳元で囁く。
ルイナーラは嬉しそうな顔。
吉田「明日もクッキー奢ってやるから」
ルイナーラ「…仕方ないのぅ!」
☆奥で首を傾げる百瀬。吉田は後ろ姿で両手を振って否定する。
百瀬「店長、その子って確か昨日…」
吉田「いやいや、ただのお客さんだよ」
「百瀬さんこそ今日は休みのはずじゃ?」
【ページ47】
☆百瀬が恥ずかしげに少し俯く。
百瀬「昨日のことでお礼が言いたくて…」
☆百瀬が吉田を少し赤くなりながらまっすぐ見ている。
対面する吉田は少し驚いた顔で照れくさそうに。横から見る構図。
百瀬「昨日あのお客さんに言い返してくれたの私が馬鹿にされたからですよね、 ありがとうございます」
吉田「いやいや、お礼を言われるほどのことじゃ…」
☆百瀬が強い意志を宿した顔で。
百瀬「そんなことないです! すごく嬉しかったです!」「ただ…」
☆百瀬が首を傾げる。
吉田が明後日に顔を向けて狼狽。後ろ姿。片手で後頭部を掻いている。
百瀬「何故かその後の記憶が曖昧で…」
吉田「アハハ…疲れてたんじゃないかな…?」
☆百瀬が肩がけのバックに手を突っ込む。
百瀬「あ、あと店長に渡したいものがあって…」
【ページ48】
☆百瀬が恥ずかしげな顔で手作り包装のクッキーを差し出す。
百瀬「これ、良かったら食べてください!」
☆不安げに首を傾げる百瀬。
吉田の声「これって…手作り?」
百瀬「はい…迷惑でしたか…?」
☆慌てた顔でブンブン手を振る吉田。
吉田「そんなことないよ。ありがとう」
☆安心した笑顔で微笑む百瀬。
吉田の手が百瀬の両手の上のクッキーの包装を慎重に掴む。
百瀬「はい!」
☆クッキーの包装を落とす吉田。
吉田M「まずい!」
【ページ49】
☆横合いから手を振ってキャッチする吉田。
怪力で中身を握り潰してしまう。
吉田の声「あ」
☆ショックを受けた顔の百瀬。
百瀬「えっ…」
☆汗を滝の様に流す吉田。
吉田M「やらかしたぁー!」
吉田「こ、これはですね…」
☆ルイナーラの口元。笑いで吹き出している。
ルイナーラ「ぷっ」
☆売り場の方でルイナーラが腹を抱えて大爆笑している。
ルイナーラ「あっはははははは! お主、最高じゃ! くくく…」
【ページ50】
☆吉田が怒った顔で身を乗り出す。
吉田「お前! 笑ってんじゃ!」
☆吉田の両目がアップ。むずむず擬音。
☆吉田の後ろ姿。目から発射されたビームがルイナーラの頭の横を通り けて、店の外壁に穴を開ける。
百瀬は吉田の横に立っている。
☆百瀬が恐怖に引き攣った顔でギャグっぽく絶叫。
百瀬「きゃぁああああああああ!」
☆泡を吹いて倒れる百瀬。
【ページ51】
☆ルイナーラがニヤニヤ笑っている顔。
ルイナーラ「また怒ってしまったのぅ」
☆吉田が叫び出す様に頭上を向く。
☆コンビニの外観。空いている天井の穴からふきだし。
吉田の声「やっぱこの力クソだ!」
終わり
コンビニ店長邪神おじさん あおいるか @iruka15
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