第24話 最凶の師 ミランダ・ウォーカー

 ミランダの屋敷は、おっかなびっくりの罠だらけ。

 不用心に入ろうとする者を一網打尽にするために、至る所に悪辣な罠が仕掛けてある。


 あの正面玄関のような入口は、本当の入り口ではない。

 不用心に屋敷に入ろうとする者を、捕らえようとする罠が張り巡らされているのだ。

 正式な入口は双子が紹介した井戸で、そこの下の通路から、屋敷に侵入するしか中に入る方法がないのである。

 ここで侵入としか呼べないあたりに、この屋敷がいかに変なのかが分かってしまう。


 実はゼファーがあの二つの罠をかわして、無事に侵入を果たしたとしても、罠はまだある。

 玄関の扉を開ければ、左右から矢が飛んできて、それを回避しても上から火が飛び出てくるなどなど、とにかくこの屋敷は酷い。

 人を歓迎する家ではないのである。


 ◇


 ミランダの自室にて。

 先程の出過ぎた真似をしてしまったミランダの反省会が開かれた。

 彼女は正座をしてその前にジークが立っている。

 こんな状態では、平たく言って二人の反省会ではなく一方的なお説教タイムである。


 「この馬鹿者が、お前は何をしでかしてくれたんだ! いい加減にしろ!」

 「はい。すみませんでした」

 「謝って済む問題か! 俺の大切な友人だと言っただろうが!」

 「はい。そうでした」

 「お前みたいな奴に頼んだ俺が悪かったんだな。俺のミスか。俺のミスだな」

 「はい。その通りです」

 「お前、舐めてんのか。俺の話聞いてんのか? お前が絶対、悪いだろ!」

 「はい。そうです。私が全面的に悪うございました」


 ミランダの顔は下を向いたまま。

 いつもならば、厚顔無恥でふんぞり返っているのに、この時ばかりは、深く反省していて体が縮こまっている状態になっていた。


 「バカ」「ミラ」

 「ミラ」「アホ」

 「もっともっと」「ジークに怒られろ!」

 「「わーい。わーい」」

 

 今がチャンスと、双子は日頃の激しい訓練の恨みをここで晴らしていた。

 あとご飯をくれない恨みもあるらしい。


 「あの・・ジーク様。なにもそこまで怒らなくてもいいのでは。こうして僕らも無事でありますし・・・」


 ミランダの目はフュンの慈悲の心で輝いた。

 このまま助けてくださいっと思っている。


 「いや、駄目だ! こいつには、罰を与えないといけない。もう少しで君たちは殺されるところだったんだぞ」


 ジークはその意見をすぐに却下した。

 ミランダの首はうな垂れる。


 「罰とは何を与えるのでしょうか。ジーク様」

 

 ゼファーが聞いた。


 「ん? そうだな・・・・百回叩きか! いや、恩賞金の剥奪かな」

 「えええ。それはご勘弁を皇子ぃ」

 「不満なのか。ミランダ」

 「はい。おねげえします。お代官様・・・なんでもしますから。それだけは、ご勘弁を~」


 ミランダのもみ手が高速で動く。

 下手に出ているのが明確だった。

 あえて無表情でいるジークはこれで勝ったなと思いながら『チャンスだ』と畳みかける。


 「…今、何でもと言ったな」

 「はい~。何でもします~。ですからおねげえします。恩賞金だけは~」

 「よし。じゃあ、刑はこの子らに決めてもらおう。一人ずついいぞ。罰を与えてくれ」

 「えええ。そんなに~」


 総勢5名分の罰である。


 「不満か? じゃあ恩賞・・・・」

 「いえ。不満ではありません! どうぞ。罰を」


 ミランダは皆に向かって土下座した。

 双子がミランダの前に出た。


 「ミラ」「ごはん!」

 「もうちょっと」「食べたい!」

 「わかりました。必ず差し上げます~~~~」

 「やった」「やったね」

 「「わーい」」


 双子の刑はご飯増量の刑である。

 とても可愛らしい刑であった。


 次にフュンが前に出てきた。


 「正直、僕は全員無事なので罰はいいです。気にしてないので刑は無しで」

 「あ、それなら私もです。罰はいらないです」


 フュンは切り替えがよいので、罰が無くてもよいと言い、アイネもいらないらしい。

 遠くで手をバッテンにして断っていた。


 「おお。有難き幸せであります。お二人さん。もうあなた方は神ですぅ」


 二人のお断りが終わると、最後にゼファーがミランダの前に出てきた。


 「私は、罰ではなく、一つお願いしたいことがあります」

 「なんでしょうか。何でもします」

 「…私は、あなたの師事を受けたい。許可してもらえないでしょうか」

 「????」


 ゼファーの願いにミランダも戸惑う。


 「あなたの強さに近づきたいです。私の実力ではこの先、帝国で殿下を守れない可能性が出てきました。いえ、可能性ではありません。守れません。ですから私はこのままではいけない。このままでは駄目なんです。殿下をお守りしながら自分が生きることが出来ません。それでお聞きしたい。あなた以上の強さの方は帝国にいますか?」

 「いる。でもあたしクラスの人間と戦うことなどないと思うけどな・・・・政争に巻き込まれんかぎりな。ああ、でもこいつが属国の王子ならば、確実に渦の中に入れねばならんか・・・じゃあ戦わないといけないかもな」


 ミランダは低姿勢からいつもの態度に変わり始めていた。


 「なるほど。ではやはり……私はあなたの師事を受けたいです」

 「・・・そうだな。あたしは結構お前さんを気に入ったな。お前さんの最後に見せた覚悟、あれは武人そのもので従者の魂を感じたわ。いいだろう。あたしが教えてやろう。必ず最強にしてやるわ。ナハハハ」

 「本当ですか! ありがとうございます。ミランダ様」

 「おう。ゼファーよ。これからは厳しく指導するのさ。覚悟しておけなのさ」

 「はい。必ず指導についていきます」

 「うむ。まかせとけなのさ!」

 

 ミランダは立ち上がってゼファーに堂々たる態度で答えたが、隣に立ったジークに頭を引っぱたかれた。

 ジークの苛立ちは相当な物だった。


 「いたっ」

 「馬鹿たれ。何がまかせとけだ。偉そうにするな。下手に出ろ。この屑」

 「ひ、ひっどい言い方ではないか。皇子」

 「お前から皇子は気持ちが悪い。もうジークでいい! それじゃあ、俺の依頼を今してくれ」

 「あ? ああ。わかった。まあ大体分かっているけど、やってやっか」


 ミランダはフュンの前に立ってじっと顔を見つめた。

 そもそもミランダがやらなくてはならかったのは、フュンの見極めだけであったのだ。

 なのに、あんなことをしたもんだから、色々厄介なことになってしまったのだ。

 それをすっかり忘れている彼女はまったくもっていい加減な女である。


 「そうだな。こいつは主君としては失格だわ。でも人としては最高の人物。そうだろ? それが分かるのはお前たちの方だろ?」


 ミランダは、ゼファーとアイネに目配せした。


 「もちろんです。ですが主君としても最高の人物であります」

 「わ、私もゼファーさんと同じに思ってます。主としても最高で。お守りしたい主君であります」


 ゼファーとアイネは真面目にそう答えた。


 「こんな若いメイドと従者なのにな。二人ともそう言ってくれるとはな。これは二人に感謝しないとな。坊主・・・でもな、主君とは何が何でも生きていかねばならんのさ。だからあの時の判断はどっちかというと、そこのゼファーが正しいのさ。主君を生かそうとした雄姿。あれを無駄にしてしまうのは頂けない」


 ミランダはフュンの頭を鷲掴みして左右に振った。

 激しくフュンの頭が揺れる。


 「あんな覚悟をさ。主君は絶対に無駄にしたらいかんのさ。それにだ。そこの嬢ちゃんを物陰に隠していたのも良くない。本来であればこの嬢ちゃんも盾として使い、時間稼ぎに使わないといけないのさ。王を守るとはそういう事なのだ。何があっても生きてもらわねばならんのよ。じゃないと家臣たちが報われん! でもあの時、嬢ちゃんにも死ぬ覚悟があったように思うのさ。という事はだ。この坊主にその覚悟がない。身内が死ぬ覚悟がだ。どうだ」

 「・・・は、はい。そうです。僕には無理・・・です」

 

 ゼファーとアイネもそれを重々承知している。 

 命を捨ててもよいという覚悟を持っていたアイネは、直前の命令で物陰に待機をして、彼女は仕方なく生を選んだ。

 そしてゼファーは無理やり行動を起こせた。

 彼の為に命を捨てる覚悟で動くためには、彼の命令を無視してやらねばならないのだ。


 「だから、お前はどうする。次に同じ場面が来た時だ」

 「ぼ、僕は・・・やっぱり全員が生きる道を選びたい。誰も死んでほしくないです」

 「・・・うん。失格だな。甘すぎる……でも面白いな。お前。君主でこう考える奴は珍しい。それじゃあ、どうしたら皆の死を防げると思う?」


 楽しそうにミランダは会話を進めている。

 フュンに興味が湧いているようだった。


 「…そ、そうですね・・・それは僕が上手く生き残る道を探るしかないですね。政争に巻き込まれるのが必然ならば必ず勝つ陣営につかないといけませんね。なんとしてでも僕は勝たねば・・・僕の大切な人を守れない。そういうことですね」

 「ほうほう。結構いい感じだな。小僧!」

 

 ミランダは満足そうな顔をした。

 授業をするのにこんなに優秀な生徒はいないと言ったような口ぶりである。


 「おい。ジーク!」

 「なんだよ。ミランダ」

 「なんだ。まだ、怒ってるのさ」

 「当り前だ」

 「はぁ。お前の友人は合格なのさ。あたしに預けてくれんかな?」

 「なに?」 

 「あたしがこいつらを鍛え上げるのさ。そんで、このクソみたいに生きにくい帝国の中で、こいつらを生き延びさせてやんのさ。あたし。ちょうど暇してたとこだしさ。こいつら面白そうだわ」

 「なに!? お前に預けたら心配になるわ!」

 

 自分を振り返り、あの特訓を友人に課すのかと思ったジークは珍しく慌てていた。

 だけどそれも無視して、ミランダは二人に向かって話しかける。


 「いいから、いいから。まかせとけって。立派な君主と、立派な従者にするわ。どうだ、あんたら。あたしの弟子にならんか?」

 「え?」

 「私は先程からお願いしているので。私からしたらありがたい話であります。ぜひお願いします」


 ゼファーはまた頭を下げた。


 「そうか。じゃあ坊主。お前はどうする」

 「僕は……武芸も勉学も出来ませんよ。僕って才能がないみたいで」

 「んなもん。わかってる。あたしが教えんのはその両方じゃねぇ。そうだな。あたしのテストを受けてみるか。ちょっと待ってな」


 ミランダは部屋にある小棚からテスト用紙とペンを持ってきた。

 

 「ほれ。これを解いてみい。あとで採点してやるからさ」

 「わ、わかりました」


 


 ◇


 一時間後。

 フュンの結果の紙を見つめてミランダは嬉しそうに笑う。


 「ほう。やっぱな。こうだと思ったのさ」 


 ミランダは用紙の解答欄を指で叩いていく。

 どこも正解を導き出していた。


 「ミランダ、何が分かったんだ?」  


 フュンより先にジークが聞いた。


 「ん? ああ。こいつはな。勉学が出来ないんじゃない。知識が足りないだけなのさ。それで勉強が出来てないように他人の目に映っていただけなのさ。こいつは単純に、問題に対する勉強の方法が悪いのと、それに対する記憶力が悪いだけなのさ。要は要領が悪い」


 フュンのテスト結果は、単純な一般形式の問題が解けないだけで、ミランダが設定した思考型の問題は完璧に解いていたのだ。


 「あたしの問題は人物の傾向が分かる問題になっている。で、こいつのタイプは、やはり知恵があるタイプだ。だからあたし的にはこいつは軍師寄りに育て方がいいと思うのさ。君主タイプに育てるよりもおそらく最善手を見つける育て方がいいと思うんだ。誰かを切り捨てるやり方で自分へのリスクを最小限にする君主タイプではダメ。それと同タイプの軍師も向かない。だから、人を上手く操ってリスクを最小限にするタイプの軍師に育てようと思う。一番めんどくせぇタイプの軍師に育てなけりゃならんのは時間がかかるけど、たぶんそれがこいつの性に合ってるのさ。たぶんな」

 「なるほど。そうか。それは計画としては、いいプランだよな。お前は相変わらずそういうことを考えるのだけは上手いよな。育て方は酷いけど」


 ジークは育成方法に賛成した。


 「ああ、だからな。こいつは決してボンクラじゃないんだぞ。今までそうやって認定されていたのは、普通のテストを受けていたからだ。あれはただの記憶力の良さを知るためのものだ。こっちは生きる知恵の問題。これを見分けるのは非常に難しいからな。こいつの真の実力を母国では測れなかったんだろう。そんで、武芸の採点も同じ方法だと思うのさ。戦う力のみが評価されていたんだと思う。単純な力……例えば腕力とか、武器のコントロールとか、模擬戦だけで力を測定していたんだと思うのさ。でも、こいつはそれとは別な力を持っている。こいつは創意工夫して戦うことと、戦場を有利に動かす判断力と実行力、そして指導力を持っている。なんせあの時に私の視線を誘導して、双子を上手く操ったのはこいつなのさ。あれはかなりすげえことをしたわ」


 ミランダはまたフュンの頭を撫でてから、双子を指さす。


 「だってよ。このあたしがこいつらの気配で一杯一杯になるように仕向けてたんだぜ。あれはなかなか出来ん。この馬鹿共にあたしの目を集中させて、自分のことを気取られないようにして動く。これはかなり難しいことなんだぞ。馬鹿双子を操るって難しいんだ。指揮官の才がなければ絶対にできない。それくらいこいつらはじゃじゃ馬なんだよ。このニールとルージュはさ」


 ミランダのフュンに対する評価が高かった。

 初めて戦闘関連で褒めれらてフュンは喜んでいた。

 でもそれよりもアイネとゼファーの方が嬉しそうだった。

 自分の主君は愚鈍で平凡な人ではないとずっと信じていたからこそ、誰かに認められて自分のことのように喜んでいたのだ。


 「んで、こいつを誰が鍛えたんだ?」

 

 ミランダはフュンに向けて指を指した。


 「私のおじ上です」

 「そうか。そいつ、お前とは相性がいいな」

 「は?」


 ゼクスはゼファーとは相性がいいらしい。


 「だけど、こいつとは相性が悪い。教え方が武人を育てるための育成方法だ。それでは真っ直ぐに育っちまう。でもそれは兵士を作るのには、まあままいい。でも、こいつを教えるには、邪道でいかないといけないのさ。こいつは将として育てねばならんのよ。武の力じゃなく、戦闘という大きな括りで戦いを考えさせるようにしなくてはいけなかったんだ。斬る。防ぐ。この単純な動作の教えじゃない。攻撃を当てるまでの流れ。防御をすることの意味。反撃の糸口を見つけるための場面設定だ。これを教えねば、こいつは絶対に強くならん。単純作業の繰り返しでは明らかに練習効率が悪い。身体能力が高くないせいもある。だから母国では駄目とか平凡とかの分類に分けられたのだろう。要するにサナリア王国はただの殴り合いの戦争をしていたという事だ。単純戦闘ばかりであったんだよ。あまり集団戦闘に慣れていないんだ。あたしらに比べても戦争の数も少ないしな、出来たばかりの国だ。それは仕方ないことだろう。だから、こいつを無能と判断することもな」

 

 フュンはしょんぼりした。

 自分の駄目さ加減と母国の駄目さががここでわかってしまったからだ。

 師であるゼクスは丁寧に教えてくれていたのにできなかった自分が情けなかった。

 俯いて下がった頭にまた手が乗せられた。その手はミランダだった。


 「気にすんな! あたしがお前を戦いでは人並み以上に仕上げてやんよ。俯くな。これからだ!」

 「は、はい!」

 「よし、そんでな。こいつは意外と機転が利く。戦いも思考で勝負させるわ。あたしが論理的に仕上げていく。あとは軍師適性をあげていって将にする。あたしは、軍の将としてこいつは才能があると思うんだぜ。やっぱさ。この馬鹿どもを巧みに操ったのが、素晴らしいの一言なのさ」


 ミランダが、指差したのは双子。二人は激しい抗議をする。


 「ニ―」「ルー」

 「馬鹿」「じゃない」

 「ミラ」「ムカつく!」

 「こいつ」「嫌い」

 「姉ね」「好き」

 「ジーク」「好き」

 「殿下は」「大好き!」

 「ごはん」「ちょうだい」


 最後は願いであったので、皆で苦笑いをした。


 「それにだ。こいつに命令されると何でも出来そうな気がすんだろ。どうだ二人とも」

 「は、はい。そう思ってます。私は殿下の為なら戦えます」

 ゼファーが答えて。

 「私もです。王子のご命令は何が何でも成し遂げます」

 アイネも同様の答えだった。

 「いや、そんなに意気込まなくてもいいのに。僕は一緒にいてくれるだけでいいのですよ」

 

 フュンは照れ臭そうに笑っていた。

 だが、二人は真剣そのものである。


 「こうも心酔に近い二人がそばにいるのさ。これは今の時代では、なかなかに珍しいことだ。このような主従関係は本当に珍しいと思うんだよ。なあ、ジークもそうは思わんか?」

 「ああ。まあな。俺とキロックたちよりも強固な絆だと思う。だから俺も珍しいと思うな」

 「だろ。だからよ。あたしの予想は、こいつのこの感じ。たぶん帝国の初代皇帝と似た雰囲気を持っていると思うのさ。だからこいつを育てないのはもったいないと思う。きっと何かを成し遂げる人物なのさ。こいつはさ」


 ミランダはフュンの頭をまたくしゃくしゃにした。

 撫でられるというよりも、もみくちゃにされていた。


 「なに!? あの伝説のアイザック様にか」

 「ああ。おそらくな。人を引き付ける魅力をどこかに持ってんだろ? たぶんな。なので、あたしが満遍なく鍛えてやるぜ。最高の力を持たせて、こいつが何をするのかを余生の楽しみにするわ。ナハハハ」

 「そんな…僕は皇帝陛下と比べられるほど偉大な人物じゃないですよ。あはははは。ただの属国の王子ですよ」

 「ああ、わかってる。でも時代はまた動き出すかもしれんのさ。今ある帝国の闇はいつ暴発するのかわからん。だから力を付けて置いて損はない。力は、ないよりはあった方がいい。生き延びる為ならな。だからどうだ? あたしの弟子になってみるか?」

 「・・・・そうですね。僕が皆を守る力を手に入れる。確かに、僕は守ってもらうことだけを考えてはいけませんよね。ゼファー殿やアイネさん、イハルムさん。あと故郷のサナリアの民を、自分の力で守っていかなければなりませんよね」


 フュンは決意を胸に秘めて、ミランダを見つめた。 

 

 「ミランダ様。僕は強くなりたいです。だから弟子にしてください」

 「よし。あたしにまかせな。こっから最高の君主にしてやっからよ。あと、あたしのことはミラでいいぞ。あたしゃ、堅苦しいの嫌いなんだわ。そこんところ頼むよ。ナハハハ」


 

 こうして偉大な指導者を得たフュン。

 最強にして最凶の指導者ミランダ・ウォーカー。

 帝国に二つとない独立友軍ウォーカー隊を率いている伝説の隊長。

 であると同時に帝国の軍師の称号も持つ。

 帝国での彼女の異名は、「混沌の奇術師カオスマジシャン

 この名を帝国中に轟かせている。

 その性格と戦いぶりから名付けられた悪魔の軍師だ。

 フュンとゼファーが、彼女と出会えたのは奇跡に近かった。

 二人はここから大きく成長していくのである。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る