第21話 スーパーGT オートポリス
※この小説は「スーパーGTに女性ドライバー登場」「続スーパーGTに女性ドライバー登場」のつづきです。実は、パソコンのトラブルで編集中に保存できなくなり、また新しいページで再開した次第です。
富士から九州に入った。すると、朱里に驚きのニュースがもたらされた。サードドライバーの庄野がトレードされて14番のマシンに乗ることになったのだ。今まで乗っていた女性ドライバーが交通事故にあい離脱してしまったからである。同じT社のマシンとはいえ、ライバルチーム。気楽に口をきけないと思っていたら、庄野があいさつにきてくれた。監督やチームクルーにあいさつをした後、朱里のところにやってきた。
「朱里ちゃん、これからはライバルだね。お互いいいレースをやろうね」
と声をかけてきた。朱里も
「庄野さんと争うことになるとは思っていませんでしたが、これもレースです。負けませんよ」
と返して、握手をして別れた。その後、朱里のチームのサードドライバーが坪江に決まったと報告を受けた。あのSFの富士マイスターである坪江の奥さんである。レディースのレースで実績をつんできて、今回大抜擢されたわけである。
予選までは雨つづきの日々となった。レースができる状況ではないので、フリー走行も予選もキャンセルとなった。日曜日の一発勝負である。
日曜日の朝、GT300の予選が始まる。30分の時間枠で今までの方法である2人のドライバーの合算ではない。一発勝負なので、一人のドライバーでアタックするチームがほとんどだ。なにせ、路面がハーフウェット状態で滑りやすい。コーナーによっては霧がかかっていて見通しがよくない。気温12度、路面温度13度ととても低い。マシンが通り過ぎればラインができるのがふつうだが、気温が低いのでなかなか乾かない。スリックタイヤでは滑ってしまう状態だ。
9時、GT500の予選が始まった。朱里はピット待機。山木一人で予選を走ることにした。難しい路面状況ではベテランの山木の方が信頼できる。
ところがランキング4位のマシンはサクセスウェイトがきつい。80kgもしょっている。ポールをとったN社のマシンはわずか4kgしかない。中速コーナーが多いので激しいブレーキをかける箇所は少ないのだが、やはり立ち上がりが遅い。山木とてトップから1秒遅れのタイムをだすのがやっとで、予選13位に入るのが精一杯だった。
午後1時。路面は乾いているが気温は18度までしか上がっていない。夏の熱いレースとはまるで違う状況だ。ピットにはサードドライバーになった坪江もいるが、一度もGT500をドライヴをしたことがない彼女にハンドルを任せるわけにはいかない。山木が
「最初と最後はオレが行く。朱里は中間を頼む。ガスは80分もつはずだから70分をめやすにチェンジだ。おそらく厳しいレースになるからポジションキープで充分だぞ」
と念をおされた。無理もない作戦だが、おもいっきりアクセルをあけることはなくなったなと朱里は思った。1週間前の父の言葉が思い起こされた。
午後2時、決勝スタート。山木は絶好のスタートをきって第1コーナーを過ぎたところで2台抜いていた。30分経過時には8位にあがっている。さすがテクニシャンである。ところがレースは荒れた。40分経過時に19番がクラッシュ。FCYからSC導入となった。
午後3時、ドライバー交代だ。実質10位で朱里がドライヴする。
午後3時10分。またもやトラブル発生。庄野がドライブする14番がH社17番を8コーナーで押し出してしまった。先行する庄野にすればラインをとったということだろうが、1台分の隙間をあけていなかったのは確かだ。これは後でペナルティを受けることになる。17番はクラッシュしたので、これで2度目のSC。
午後3時55分。H社16番が単独スピン。コース上に停まる。すぐ後ろにいた朱里はコース外にでて追突を回避した。こういう回避能力はうまくなった。これで3度目のSC。
午後4時12分。SC解除でやっとピットに入ることができ、朱里は即ピットイン。この時、ペナルティを受けた庄野の前を朱里が走っていたのだが、ピット作業で14番に抜かれた。11位で山木にバトンタッチである。ポジションキープは果たせなかった。だが、朱里だけの問題ではなかったので、だれも責めなかった。
午後4時48分。GT300のマシンが最終コーナーで大クラッシュ。マシントラブルで大きくコースを脱し、ガードレールに激突していた。ドライバーが心配だったが、さほどのことはなかったようだ。4回目のSC導入である。今回は3時間のタイムレースなので、SC先導でレースは終わった。優勝はT社の39番。予選10位からの優勝。それも4年ぶりの優勝でドライバーよりも監督が涙を流して喜んでいた。ちなみにポールのN社24番は2位に入った。
結果は10位。サクセスウェイトがきいていて、思うようなレースはできなかった。ランキングも5位に下がってしまった。だが、後2戦ある。次戦のMOTEGIはWECのバーレーンと重なっているので坪江がドライヴする。最終戦は12月の鈴鹿。冬のレースでどうなることやら。
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