第19話 SF 富士 第6戦

※この小説は「スーパーGTに女性ドライバー登場」「続スーパーGTに女性ドライバー登場」のつづきです。実は、パソコンのトラブルで編集中に保存できなくなり、また新しいページで再開した次第です。


 10月半ば、鬼門の富士にきた。今回は土日の2連戦である。しばらくぶりのSFだが、富士と朱里の相性はよくない。前回の富士のSFは19位だった。今回の目標はそれを上回ることである。

 ホテルでミックに会った。彼もSFでは本調子ではない。でも、富士はWECで走ったコースだ。今回は期待されているようだ。

「 Shuri , how are you ? 」

(朱里、調子はどうだい?)

「 You're the one who didn't get the time you expected . 」

(そっちこそ、思ったようなタイムでてないじゃない)

「 I'm not used to it yet . There are too few practice sessions . 」

(まだ慣れていないからな。練習回数が少なすぎるよ)

「 I think so too . 」

(私もそう思うけど・・)

「 Shuri's qualifying time was terrible . Although they held on in the finals . 」

(朱里の予選タイムはひどいもんだな。決勝ではねばっているけど・・)

「 I want to win against you . 」

(ミックには勝ちたいね)

「 Be fight ! 」

(がんばれよ)

 土曜日の午前の予選、気温19度、路面温度26度。天候は晴れ。ソフトタイヤでアタックだ。相棒の山木がQ1Aグループででて、グループ4位のタイムを出した。初のQ2進出である。やっとまともなタイムがだせるマシンができたと山木自身が喜んでいた。

 Bグループで朱里がでる。「走るシケイン」と言われないように、後ろででて、タイヤをあたためたら即アタック開始だ。山木が1分22秒472を出したので、その1秒落ちが目標タイムだ。だがセクター3のタイムがでない。低速コーナーで切り返しが遅いのかもしれない。かと言って、攻めるとスピンしかねない。このあたりが山木と朱里の違いかもしれない。タイムは1分24秒010だった。山木から1.5秒落ちだ。ピットにもどってきて、山木から

「まずまずだったぞ」

 と誉められた。目標には届かなかったが、以前は2秒以上の差をつけられていた。成長を認めてくれたのだ。Q2には入れず、結局最後尾からのスタートであったが・・。

 午後の決勝。山木は予選10位。WEC仲間の小田は12位、ミックは18位にいる。ところが、ウォームアップランを終えたところで、山木はピットイン。無線で聞くと

「エンジンがふけあがらない」

 ということであった。チームはガレージにマシンを入れて、緊急チェックだ。おそらくコンピュータのセッティングだ。

 それでもレースは始まった。とたん、前方のマシンの1台がエンジンストール。朱里はあやうく追突しそうになったが、なんとか避けることができた。そこからはアウトのラインをとって、巻き込まれないように走る。ストールしたマシンは復活して走り出した。山木もトップが最終コーナーに入ったところで、コースインできた。周回遅れにはならずに済んだ。

 朱里は最後尾なので、たんたんと周回数をこなす。20周目、ピットインをしてタイヤ交換義務を果たす。そこで、スタート時にエンジンストールをした坂田がせまっていることを知った。のんびり走っていると抜かれそうな勢いだ。そこでペースを上げる。

 30周目、坂田が10秒後ろにせまっていることをピットからのサインボードで知った。あと11周。1秒ずつ詰められるとファイナルで抜かれる。どこでペースをあげるかといえば、やはりセクター3の低速コーナーしかない。ブレーキングポイントを変えてみた。いつもより手前でブレーキをかけてコーナリングスピードを高め、脱出スピードをあげてみた。あやうく最終コーナーでオーバーランをしかけたが、タイムはあがっている感じがした。

 35周目、坂田は8秒後ろにいるとのこと。朱里はペースが上がっていることがわかった。あとはコースアウトしないことだけを考えて走ればいい。

 41周目、ファイナルラップ。坂田がペースをあげて追い上げてきた。ダンロップコーナーでは真後ろにいる。ヘアピンや低速コーナーでインをおさえる。坂田は完全にスリップについている。勝負は最終コーナーだ。

 最終コーナー入り口でチョコンとブレーキをかける。スリップに入っていた坂田もブレーキをかけざるを得ない。スピードが落ちた。そこからは立ち上がり勝負だ。思いっきりアクセルを踏む。朱里はアウト、坂田はインに入る。横を見ずにチェッカーだけを見る。後で17位を守ったことを知った。マシン半分の差だった。山木は19位で終えた。リタイアが2台あり、朱里はトラブルなしのマシンでは最下位だったが、レースをした実感はあった。

 小田は3位にはいり、5年ぶりにSFで表彰台にあがりご機嫌だった。ミックは11位。あとひとつでポイント圏内にきた。調子をあげている。

 朱里とその仲間も、これで翌日の第7戦への励みとなった。

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