昭和40年 あの時の後悔を糧に

第2話 転生

響は目を覚ますと、見覚えのある天井が目に入った。体が軽く、若々しい感覚に包まれている。彼は自分が高校生の頃の自分の部屋に戻っていることに気づいた。心臓発作で倒れた直後の感覚がまだ残っており、この状況が信じられなかった。

「これは……夢か？」

ふと隣を見ると、朝刊の新聞が置いてあることに気づいた。「昭和40年4月1日…」その日付に彼は驚きと興奮を隠しきれなかった。目の前にあるすべてが鮮明であり、かつての日常に戻った感覚が強くよみがえってきた。そして、昭和40年、大学入学直前の日に転生したのだと確信した。

### 懐かしき日常

響は部屋を見回し、懐かしい家具や美術品に目をやる。ちょうどその時、ドアがノックされ、メイドの佐々木彩花が部屋に入ってきた。彼女は家族に長年仕えてきた忠実な存在であり、響の幼少期から彼を見守ってきた。

「坊ちゃま、お目覚めですか？」

「彩花さん……君は、何も変わらないね。」響は涙ぐみながら答えた。彼女の顔を見て、心が安らぐのを感じた。

彩花は不思議そうに首をかしげた。「どうされたのですか、坊ちゃま？昨夜はよく眠れませんでしたか？」

「いや、ただ……何もかもが懐かしくて。ありがとう、彩花さん。君の顔を見て、なんだか安心したよ。」

彩花は微笑みながら、ベッドの脇に座った。「それは良かったですわ。坊ちゃまもうそろそろ新しい生活が始まります。旦那様も期待しておられますし、何より自分自身を信じてくださいね。」

「そうだね……自分を信じて。彩花、ありがとう。本当にありがとう。」

### 新たな決意

彩花が部屋を出て行った後、響は鏡の前に立ち、自分の若々しい顔を見つめた。そこには、かつての自分が戻っていた。彼は深呼吸をして、心の中で決意を新たにした。

「今度こそ、正しい選択を、この國の為に尽くすんだ。」

過去の失敗を思い出し、その反省を糧にして前に進む決意を固めた。まずは、父の期待に応え、家族の名誉を守りつつ、自分自身の理想も追求する。そのために、次のステップとして、大学での学びを最大限に活かし、人脈を広げ、社会に貢献する具体的な計画を立てた。

### 朝食の時間

準備を整えた響はリビングに向かった。そこには厳格な父親が待っていた。父親は新聞を広げ、その手元には微かな震えが見えた。父親は静かに食卓に向かっていた。

「おはようございます、父上。」響は静かに挨拶した。

「おはよう、響。今日から新しい生活が始まるな。期待しているぞ。」父親は厳しい目で息子を見つめたが、その奥には不安と希望が込められていた。

響は深く頭を下げ、「はい、父上。期待に応えられるよう、全力を尽くします。」と力強く答えた。

父親は一瞬柔らかい表情を見せ、「お前ならできる。母上もそう信じていたからな」と小さく呟いた。響はその言葉に胸が詰まりながらも、毅然と答えた。

「母上の期待にも応えられるよう、頑張ります。」母親の笑顔がふと浮かび、響の決意はさらに強まった。

### 新しい道への第一歩

朝食を終えた響は、大学へ向かう準備を始めた。新しい生活、新しい挑戦が待っている。彼は三種の神器の力を胸に、新たな未来を切り開く決意を胸に秘めていた。

「これからは、全てをかけて、この国と人々のために尽くすんだ。」

彼は父親の期待と母親の愛情を胸に、未来への一歩を踏み出した。過去の失敗を乗り越え、今度こそ正しい選択をし、理想の未来を築くために。