第21話… 嫌がらせの犯人

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




 サトちんと あの先輩の出来事から数日…



 "大丈夫…

 サトちんを嫌いになんてならないもん!"

 …自分に言い聞かせる毎日が続いていた



 だけど心の中は

 いつまでもそのことを気にして…

 頭の中で あの場面が何度も再生される



 私は サトちんのことを

 本当に許せたのか…


 それとも

 "熱しやすくて冷めやすい"

 昔と変わらない恋愛体質が

 彼に対しての想いを


 冷まそうとしているのか…



 考えたくないのに…考えてしまう




 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆




 紗蘭さらん幼稚園では

 来週に控えた お誕生会の準備が進む



 いつものスタジオではなく

 実際に お遊戯ホールの舞台でダンスをして

 フォーメーションの見直しをした



「大丈夫そうだね!」


 のんからの太鼓判

 マサ先生と私は 胸を撫で下ろした



「そうだ!本番終えたら

 3人で打ち上げしませんか!」


 マサ先生が一言



「お!いいね!」


「男2人とアミ先生の3人ですからね!

 彼氏さんには

 しっかり許可得てくださいよ!」


「…アミ、大丈夫?」


「…っえ!…うん(*´꒳`*)」


「………」




 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




 → 残業中のさとし




「ねぇ、智くん…私の事 避けてるでしょ?」


「いえ、別に…」


 僕が先輩を

 "女性"として意識してなかったせいで

 あんなことになった


 言われてみれば

 仁兄さんが言うように

 僕を見る目つきも他の女性社員と

 違っていたような気がする


 僕は アミつんしか見てなかったから…



「・・・・・・」



 社内で先輩と

 会わないようにしているのに

 いつものように 僕を見つけては

 話しかけてくる




「カノジョ 怒ってた?

 ほ〜んと タイミング悪かったよね〜」


「彼女は 許してくれましたよ…」


「えー!スゴーイ!心が広いカノジョね〜!

 私なら別れちゃうけどなぁ〜」


「・・・・・もういいですか? 仕事に戻っても」


「あぁ…ごめんね!…手伝おうか?」


「大丈夫です…」




 

 パワハラ課長からも

 量は少なくなったけど

 押し付けは 続いていた

 なるべく自分で処理する



 来週のお誕生会が終わったら

 お迎えの再開だ!


 楽しみだなぁ(*´꒳`*)



羽玖井はくいくん、ちょっと…」


 部長が手招きをしていた



 会議室へ移動すると

 そこには支店長もいて…



 部長が口を開く

「まだ、仕事…回されてるのかな?」


「はい…あ、でも前よりは減りました」


「そうか…この件は支店長にも

 話は通してあるから

 今後は 頼まれることは無いと思うよ!」



 部長の隣に居た支店長が

 その言葉に頷くと


「今まで 我慢をさせて申し訳なかった」

 と言って 頭を下げた


「あ!いえ!あ、頭を上げてください…」



 良かった…これで残業は無くなる!!!!!

 心の中でガッツポーズ٩(>ω<*)و



 喜んでいたのに…



 支店長が発した言葉にフリーズする



「実は 前に出張で行ってもらった

 S市の支店長から

 羽玖井はくいくんの仕事ぶりを

 会う度に聞かされてねぇ…

 相当 気に入ったみたいで本社に出向いて

 羽玖井はくいくんを

 是非 S支店に欲しいって

 直談判したらしくて」


「・・・・・・」



 入社した後の面談で聞かれた

 "もし、転勤の打診があったら?"


 経験を積みたかったから

 迷いなく


 "僕で良ければ是非!"


 そう 返事をしていたから




 ── まさか このタイミングで…




「向こうも 再来月から始動する

 大きなプロジェクトを抱えていて

 そこに羽玖井はくいくんを

 参加させたいそうなんだ…

 キミは仕事が出来るから

 こっちとしても手離したくないのが

 正直なところなんだけどね」


「…ありがとうございます」


「返事は 2週間以内に もらえるかな…」


「わかりました…」




 2週間…あまり悩んでもいられない




 *・゚・*:.。.*.。.:*・゚・*:.。.*.。.:




 会議室での話が終わって

 休憩フロアで飲み物を買っていると



「智くん、部長に何か言われたの?」


 先輩が話しかけてきた



「いえ 別に…」


「なんか 言葉が冷た〜い(´^`*)ムー」


「…普通ですけど?」


「あ、そうだ!これ 見てよ!

 この前 見つけちゃったの!」




 スマホを見せてくる先輩…



 ・・・・・・



「…は?何ですか、それ…」




 #S幼稚園教員 #らぶほ

 #A先生 #二股



 SNSの投稿…




 見逃さなかった…


 アカウント名も

 ユマ先輩の名前のローマ字表記



「これ…いつの投稿ですか?」


「少し前かな〜」




 "ん?この後ろ姿って…"



 アミつんからは聞いている

 お誕生会のダンスは もう1人の先生と

 一緒に練習に行ってるって…


 付き合う前にも

 挨拶したことのある 柾國まさくに先生



「これって、智くんのカノジョだよね?」



 なぜ、ユマ先輩は

 写真の人物を アミつんだと 断定した?



 A先生、S幼稚園教員、二股 …



 僕とアミつんが付き合っていることを

 知ってる人物



 幼稚園の先生方が

 こんなことをするはずがない…





 ……付き合う前から

 僕が ユマ先輩に相談した


 アミつんの名前も…

 紗蘭さらん幼稚園の先生だってことも…



 わざわざ 写真撮りに…行ったのか?



 …嘘だろ?

 この人、ヤバ過ぎる…




「…あの」


「な〜に?智くん♡」


「……してください」


「え?聞こえな…っ」


「削除してくださいっ!!」



 少し声を張ると 先輩は

 身体を強張らせた



「先輩が投稿したんですよね?」


「…え、いや…」


「…見損ないました」


「あ、あの…」


「今すぐ、消せってッ!!!」


「わ、わかったからっ!」


 慌ててスマホを弄り 削除する先輩



 アミつんの前でキスされた上に

 こんな投稿まで…



 許せない…


 久々に 頭に血がのぼった



 先輩に背中を向け

 歩きながら アミつんにメッセージ



 "今日、家に行くね…"



 アミつんに迷惑かけちゃった


 …謝らなきゃ




 アミつんを…守らなきゃ…




 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




 → 職員室で帰り支度をしていたアミ



 スマホを覗くと

 サトちんからのメッセージ



「・・・・・・」


 どうしたんだろう



 "ダンスの練習は幼稚園でやったから

 もう帰れるよ!待ってます!"




 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




 先に 家に着いた私は

 有り合わせでおかずを作って

 サトちんを待っていた



 ピンポーン♬.*゚



 玄関を開けると

 神妙な面持ちで立っているサトちん



「サトちん、おかえり!」


「…ただいま(*´꒳`*)」


 笑顔に元気がない




 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜




「お腹空いたでしょ?簡単なもので…っ」


「アミつん…」


「ん?」


「最近、何か 変わったこと無かった?」


「…変わったこと?」


「例えば…SNSの投稿とか…」


「…あぁ〜」


「ごめんね…」


「どうしてサトちんが謝るの?」


「あれ、先輩の仕業だった…」


「えっ!」



 血の気が引いた…

 サトちんと一緒に居た

 あの先輩だったのか…



「投稿した写真は

 先輩のスマホに残してあったけど

 目の前で削除させたから」


「…うん」


 あの時の恐怖が蘇る


 誰かに見られてる

 それが あの先輩だったんだ…

 私のことを見ていたんだと思うと

 鳥肌が立った



 ギュッ…



 サトちんが優しく抱きしめてくれた



 その先輩には仕事以外の

 プライベートのことにも

 親身になって相談に乗ってくれたから

 調子に乗って私とのことを

 話してしまったと 経緯を話してくれた



「怖かったよね…ごめんね…

 幼稚園にも 迷惑かけちゃって…」


「あぁ…大丈夫だよ!

 問い合わせとかも 無かったから…」



 きっと その先輩は

 サトちんのことを

 好きだったんだろう


 だって サトちんは可愛いもん…



 心配かけないように

 サトちんの背中に腕を回して

 抱きしめ返す



 あのことがあってから

 会社では挨拶を交わすくらいで

 気配を感じても視野には入れず

 他の会話も避けてることも

 話してくれた



「大丈夫なの?

 仕事に支障きたすんじゃ…」


「アミつんは

 何も心配しなくていいよ!

 もう大丈夫だから…(*´꒳`*)」


「そうなの?」



 柔らかな笑顔を向けてくれた



「あと、もう一つだけ…」


「…?」


「……転勤が決まりそうなんだ、僕」


「て、転勤?…どこへ?!」


「S市だよ……遠いよね(´▽`*)アハハ」





 日帰りでは 遠すぎる場所…




「僕は、アミつんと離れたくない…」


「…えっ」




「… アミつんと一緒に S市に行きたい」

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