第4話 マイコードデバイスの導入

政府の目標であるマイコードカードの普及率が、イシダ首相の懸案事項となっていた。普及率が80%を超えない限り、次の段階に進むことができないという壁が立ちはだかっていた。


カケルたちのチームは、この問題についてイシダ首相に助言するために集結した。


「マイコードカードなんてもらっても邪魔じゃまですよね。」キクヨが口火くちびを切った。


「キャッシュレス決済にも使えない。」レイナが続いた。


「リストバンドを持ち歩く方が鍛錬たんれんになるだけマシです。」ミツルが意見を述べた。


イシダ首相は首をかしげた。「しかし、高齢者にこそ、マイコードカードは必要です。社会福祉を配るためにも、彼らには必要なんですよ。」


カケルは提案した。「いっそのこと、マイコードデバイスを配布したら、いかがですか?」


イシダ首相は懸念を示した。「財源が無いです。」


カケルは続けた。「そんしてとくとれです。国で同じ機種を持たせたら、みんなが言った問題を解決できます。」


「しかし、ひとつのメーカーに頼むと軋轢あつれきが生じます。」イシダ首相は反対した。


「それでは、ひとつ2万円で打診して、先方に断らせればいいのでは?

 そして、海外の会社、たとえば、カセイダード社がおすすめです。」カケルが提案した。


イシダ首相は、カケルを信じて、カセイダード社に相談を持ち掛けた。

カセイダード社は「儲からない引き合いですね。」 とは言いながらも親身になって代案を出してくれた。


カセイダード社は1台あたりの単価を下げる方法として、大型化、重量アップを提案した。スマホのように小型化することにこだわらなければ、価格を下げられるとの考えだった。小さくて薄くするから高くなるのだというカセイダード社の提案により、デバイスの大型化が決定された。


その結果、厚み5cm、重さ300gで、腕に巻いて使う剣道の防具のようなデバイスが配布されることになった。


この新しいマイコードデバイスは、光るキーボードピアノのように分かりやすい操作性を持ち、高齢者にも使いやすかった。日常使用が義務付けられたことで、国内に居住していないのに、社会福祉をタダ取りする外国人を発見することができた。また、現金からキャッシュレス決済への移行が促進され、90%が脱現金化に成功した。さらに、収入も支出も記録できるようになり、貧困者ビジネスの介入を防ぐことができた。社会保険手続きと納税手続きが自動化され、事務処理費用が従来の1%にまで削減された。公務員たちの優れた才能が有意義な活動に充てられるようになり、国民の生活が改善された。


カセイダード社は国内の標準規格となり、イシダ首相の依頼を蹴った有名企業は後悔した。


すべては、カケルの影響力と情報収集力によって実現された。彼らの功績は国民栄誉賞を受賞し、イシダ首相の政策に反対していた野党は次の選挙で落選した。

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