第16話 そうだった報告するんだった

「あっ、そうだ、新しいエミリアの婚約者の話!」

 私は思い出してしまい、ハッとする。すると、アーサー殿下はふっと吹き出した。


「思い出したか」

「はい……普通に殿下のボーナスタイムを堪能しちゃってました」

「別に俺はそれでも構わんが……エミリアはお前の大切な親友だからな。その話も聞こうか」


「はい、今回の婚約者は、ベックマン伯爵のご子息のアラン・ベックマン様でした。騎士科の2年生のお方です」

「ほう、俺と同じ騎士科か。お前たちも何かと騎士科には縁があるのだな」


「そうみたいです。簡単に今の状況を説明すると、エミリアとアラン様はまだ面識はなく、両家の話し合いでのいわゆる政略結婚ですね」

「貴族にはよくある話だな」


「はい、そして本編の話をすると、アラン様は乗り気ではなく、貴族にはよくある愛のない結婚になってしまいます」

「なるほど……それではエミリアが幸せにはなれないと言う訳か」


「はい。結婚後もあまり良いエンディングではなく、少しだけ試しましたが彼の気を引くことはできずに私は諦めました」

「諦めなければ、愛のある展開も待っているのか?」


「多分……でも私はアーサー殿下推しだったので、もういいかなってすぐ諦めちゃいました」

 私はてへっと笑ってみる。すると、殿下は「全くお前は……」と言って顔を赤くしていた。


「しかも、アランルートはエンディングまでたどり着くのも難しくて、途中でハニートラップ用の人物が介入してくるんです」

「何だと……」


「その人物はこれまた騎士科の3年生のクラース・アンドレイ様で、アンドレイ伯爵のご子息です」

「また騎士科か……そのクラースは一体どんな介入の仕方をしてくるんだ?」


「はい、エミリアがアラン様からの愛がないと感じて寂しく思っているところに、クラース様の方から声をかけてきます。可愛らしいお顔のアラン様に対して、凛々しいお顔のクラース様にギャップを感じてキュンとしてしまう人も多いらしいです」


「お前はキュンとしたのか?」

「しませんよ……! 私はアーサー殿下一筋ですから」

 私が即答すると、彼はホッと安心していた。そのため私は続きを話す。


「クラース様はエミリアの相談に優しく乗ってくれて、彼の励ましたいからという提案に乗ってしまうと、エミリアは不貞をしてしまいバッドエンドになります」

「……それはまた難儀なルートに入ってしまったのだな」

「はい……」


「とにかく、このまま何もしなければどういう展開になるのかは見ておくべきだな。俺やディアナが今まで介入してきたことで、お前の知らない展開も訪れるかもしれんしな」

「そうですね、私もそう思っていました」


 ここでしばらく様子見をすることに決めた私たちは、しばらくイチャイチャしてから解散した。



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