第9話 本当のボーナスタイム?

 ちょっと待って、このアーサー殿下……前回のループの記憶持ってる……!?


 そう思った瞬間、エミリアが教室へと入ってくる。


「ディアナ!? これ何、大丈夫!?」

「エミリア……! あ、ちょっと今は来ないほうが……」


 ダメアンはエミリアを見つけると、ハイヒールとムチを持って彼女の足にしがみついた。

「もうこの際エミリアでもいい! 俺をグリグリピシピシしてくれぇっ!」

「ひぃぃぃぃっ! 気持ち悪いっ! わ、私将来こんな人と結婚を……!? いやぁぁぁぁっ!」

「ぐほぁっ!」


 エミリアは絶叫しながらダメアンの股間を思いっ切り蹴り飛ばし、泣きながら走り去っていった。

 ダメアンは股間を押えてピクピクしていた。


「エミリア……!」

 私がエミリアを追いかけようとすると、アーサー殿下が私の腕を掴んできた。

「悪いが今回は離すつもりはない」


 ぎゃーっ! めっちゃキュンキュンする!

 でも……。


「親友が傷付いているんです。いかないと……!」

 私がそう言うと、彼は諦めたように静かな笑みを浮かべた。


「王族寮の入り口で待っている。必ず来てくれ」

「! は、はい! 必ず行きます!」


 私は猛ダッシュでエミリアを捕まえて、なんとか彼女を元気づける事に成功すると、今度は猛ダッシュで王族寮へと向かった。


「はぁ、はぁ……あれ、王族寮ってここだよね……」

「これ、君、これより先は王族のお方しかお通しすることはできないよ。帰った帰った」

 そう言って入り口の門番に門前払いを食らっているところを、中から出てきたアーサー殿下に回収された。


「彼女は俺が呼んだ。俺の客人だ。文句は言わせんぞ」

「はっ、これは大変失礼致しました! どうぞお通りくださいませ」

 門番の態度が一変する。


「悪いな、彼らも必死なんだ。許してやってくれ」

「全然、大丈夫です!」


 そして私はアーサー殿下の自室へと招かれた。


「うわぁぁ、めちゃくちゃ広い!」

 でも装飾は豪華すぎるという感じではなく、シックで落ち着いた雰囲気の部屋だった。

 センスあるわぁ……。


「好きなところでくつろいでくれ。今コーヒーをれよう」

「えっ!? 殿下にそんなことさせられません! 私が淹れます……!」


「何だ? 無理やり俺にくつろぐ場所を決められたいのか?」

「わぁっ!」

 私はアーサー殿下に軽々とお姫様抱っこをされると、ふかっふかのソファにそっと降ろされた。


 あれ、今何が起こった……?

 なんかめちゃくちゃ幸せなことが起こらなかった?


 私が顔を真っ赤にして放心状態でいると、アーサー殿下はサッサとコーヒーを淹れてソファテーブルへ置くと、私の隣へとドスッと腰掛けた。

 その隣から伝わる衝撃で軽くお尻が浮く私。何だろうこんなことですら幸せに感じる……。


 これって、本当のボーナスタイムなのかな?

 それともやっぱ、このあとバッドエンドフラグが立っちゃう感じ……?


「俺は、行きもしなかった中間考査の立食パーティでお前と知り合う記憶を持っている」

 アーサー殿下がそう話を切り出す。


「あの……今回だけですか……?」


「ということは、お前は何度もやり直しているのだな。俺がこの年の中間考査後の立食パーティに参加したのは1回だけだ。今回はお前が不参加という情報を掴んで、参加すらしていない」


「そう、なんですね……はい、私はこの年の入学式から何度もやり直しています……」


 私は、正直に彼に話すことにした。



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