青空、シャウト!
ハシバミの花
学区小学校
カンヂは小学校の五・六年生でシイナと同じクラスだった
ここでわざわざオンナになったと言うんだからじゃあその前はなんだったのかってと、オトコだった。
浅木シイナは中学二年生の夏に、手術でオンナになったのだ。
一つ断っておくと、浅木シイナはみずから望んでオンナになったんじゃない。
浅木シイナはオトコともオンナともつかぬ身体に生まれた。
それがオトコとして育てられ、十四年生きたのちにオンナにならないといけなくなった。
そして夏休み、浅木シイナは手術をした。
オンナになったんだ。
見た目はいたってマトモ。
でも口を開くと、ヘンなヤツ。
マジとかチョーとかムカツクとかクソとかキモいとか言わないし、ちょっとでも自分に理解できないことがあると、「それを、くわしくきいてもいいか?」とか、「それはつまり、こういうことなのか?」とかしつっこくきいてくるし、まあとにかくカタっくるしい。
なによりヘンなのは、自分がヘンって自覚がないとこだろ。
自覚がなけりゃヘンな所だってフツーにならない。
つまり実吉カンヂは筋金入りのヘンなヤツなのであった。
カンヂは小学校の五・六年生で、浅木シイナと同じクラスだった。
カンヂは教室や図書室で本なんかを読むのが好きだったんだけど、シイナはいつも校庭に出て活発に運動するタイプだったから、当初二人の接点はほとんどなかった。
そんな二人が言葉をかわすようになったのは六年生の一学期、二人がおなじ班割りになってから。
C組四班、男子四人に女子四人。
その頃シイナはまだオトコだったので、二人ともに男子あつかいだった。
班には滑川セラというかわいい女子がいて、話題にもよくあがった。
「ナッカってよー、マジかわいくね?」
昼休み、うら庭清掃で男子がガンクビそろえた中、ホウキを持ったネズミ顔のハセが切り出した。
「チョーヤバ。おれ、マジ目ぇ合わせらんね」
デカ顔クッシーがそれに合わせる。
「女子じゃブッチよな。一位ヨユー。ってかさーほかのオンナレベル低すぎ。ガチでブスばっか」
シイナが言うと笑いがおこる。
「おい。ちりとりをくれ」
ゴミを寄せ集めたカンヂが口を挟むと、三人がふんげ~とそり返った。
「あ~あ~カンジ~」
「おま、つまんねーチャチャ入れんなっつの」
「ねーだろー今の~」
三者三様のブーイング。
「さっさとすませればそれだけ話をする時間もふえるだろう。どこに文句があるんだ?」
「かってねーなあ、カンヂ、おまーんっとに分かってねーって」
シイナがつづけて言う。
言葉づかいはあらっぽいけどチビで顔も細っこい。
「何が分かっていないと言うんだ」
「ナッカのかわいさ」
カンヂが問いかけ、シイナが返す。
「ナッカってだれだ」
ああもお、っかじゃねコイツ。
ためいきがみっつ重なる。
オンナの話で盛りあがれないカンヂに
小学六年生っていや口を開けば悪口ってギャングエイジども、話題にのってこないヤツなんてサムいだけ。
「ナッカってったら
「何で滑川がナッカなんだ?」
「ナメリとカワで、ナッカだろ。トーゼン知っとけって。男子のジョーシキ」
「何でナッカなんて略してるんだ?」
はあ~、盛大なため息が裏庭に満ちる。
「おま、本人の前でミョージとか言ったら、誰の話してるかバレバレじゃんか。そーゆーのさけるために
「ふうむ、隠語ときたか」
カンヂは感心する。
「まったくわからん」
うら庭にひときわでっかいブーイングがコダマした。
「ゴミもらいにきたよー。なにあそんでんの。はやくすませて教室もどろうよ」
滑川セラがやってきて、三体一でチャンバラしてた男子にヨコヤリを入れた。
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