水中メガネ

水中メガネ

薄暑光　ラジオ体操聞きながらベビーのいないベッドの皺は

朝食は豆乳で割るプロテイン朝ドラついにヒロインが死ぬ

お隣はベトナム人の二、三人床に直接炊飯器置く

曲がり角スポーツジムに行くためのメイクを嗤うチューリップども

受付のメガネは今日もおとめ座かO型っぽい素振りを見せる

やる気無い子らもプールに集まれば無限に平く青い漣（さざなみ）

メガネから水中メガネに変身し子ども沈めて連れ去るなんて

彼は言う｢僕ら(筋トレ馬鹿)は朝たまご鶏肉茄子ブロッコリー」

つやつやとぶ厚く張った君の胸　今朝の日差しのもとに鳥葬

一頻（ひとしき）り泳いだ後のコンビニは広く明るく売り切れている

千円で何でも買えるチョコミント駐車場にてデロデロになる

魂を三つに分ける哲学の気概一つが欠けている月

生まれつき人を見る目はあるけれど鼻が詰まって眠れない夜

明け方のシンガポールに暮らす夢マーライオンのマーになってた

トーストに塗ったケチャップ落っことしダスッて音に床が震える

関東にスイカどろぼう多発して五十三個も食べたくないよ

ひたひたのプール延々泳いでも求めるものに辿り着けない

シャワーから急に嗚咽が流れ出る　涙と同じ35℃の

受付の僕にそっぽを向かれても死なないように鍛えておいて

ドライブはラジオを消して波の音　最初の会話思い出せない