始まりの鐘は鳴り響く

岸亜里沙

始まりの鐘は鳴り響く

勇者ファイルズは、仲間パーティーを引き連れ、ダークマウンテンの頂上を目指す。

魔王ルガダゴ討伐の為、ダンジョンのように入り組んだ、険しい道程を急ぐ。


そんな中、ダークマウンテンの序盤で、ファイルズは頭を悩ませる。

強敵モンスターのタタナが、数体同時に出現したのだ。


あまりの防御力に、格闘家ベンと弓使いタオンの物理攻撃ではほぼ無傷。

そして仲間パーティー全員を一度に攻撃してくる、タタナのデステールの影響で、仲間パーティーは瀕死のダメージを負う。

魔法使いミンクの回復魔法と、道具アイテムの癒しのポーションでなんとか持ち堪えてはいるが、このままでは全滅は免れない。


ファイルズは考えた。

道具アイテムの中に、国王レッグスから譲り受けた最強攻撃魔法の呪文書がある。

それをミンクに唱えさせれば、必殺魔法のトワイライトバーストが使えるはずだ。

そうすればタタナの群れを殲滅出きるだろう。


だがこの必殺魔法を、この序盤で使ってしまって良いのか。

魔王ルガダゴを倒す為に、今使うべきではないのかもしれない。


しかし、迷っている時間は無かった。

ファイルズは道具アイテムの中から呪文書を取り出す。

そしてミンクにトワイライトバーストの魔法発動を指示する。


眩い閃光を放つストームがタタナの群れを包む。

それが一気に弾けると、大地の微振動と共に敵は全滅した。


ファイルズは敵を倒せた安堵感と、ルガダゴ戦を前に呪文書を使用してしまった不安感が同時に押し寄せる。


ダークマウンテンの中盤にも、強敵は存在しているはずだ。

仲間パーティー全体のレベルアップは不可避だろう。


ファイルズが空を眺めると、遠い村の教会の鐘の音が、鳴り響いていた。

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始まりの鐘は鳴り響く 岸亜里沙 @kishiarisa

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